僕の元々いた場所に戻ろうと足を動かす度、鼓動が速くなり、息が荒くなる。
「はぁ…はぁっ…」
いつの間にか手も震えてきた。
「落ち着け僕…ここは僕のいた場所だろ?」
何とか心を保つのに必死だった。
「部屋に行って、ベッドに入って眠るだけなんだ。そんな簡単なことをするだけでいいんだ。怖がる必要なんてない。」
彼女に会いたい…。
「ダメだ!あの子のことは考えるな…」
僕は自分で自分の頬を叩いた。
痛みが広がるに連れ、自然と震えが収まった。
「よし。行こう。」
まっすぐ背筋を伸ばして、ステージを歩くように優雅に歩く。
月明かり(スポットライト)に当てられながら、とびきりの笑顔を見せて。
いつの間にか部屋の前まで来ていた。
「…あ」
また手が震えてきた。
「落ち着け…」
ここまで頑張ってきたんだ。
僕は最後の最後で諦めるような男じゃない。
ここで根性を見せてやれ。
「はぁ…」
一息ついて、部屋のドアレバーを押した。
ギィィと音がして、真っ暗な僕の部屋が視界に入る。
「何にも変わってないな…」
電気のスイッチを押して、ベッドに腰かけようと近づいたその時。
「トリスタ?」
今一番聞きたくない声が背後からした。
「ご…ゴスフェ…」
「トリスタ!!」
彼は僕に飛び付いてベッドに押し倒した。
「トリスタ…会いたかった…もう本当に、いつまで僕を弄んだら気が済むの?トリスタ」
「は、離して!」
「嫌だ!離すもんか!僕がどれだけ君の事を思ってたのか、トリスタには分かんないよね!?」
「分かるわけないだろ!?」
それに、分かっても知らないふりするかも…。
「僕は君を愛してるんだ!君もそうだろ?あの時僕を受け入れたじゃないか!」
「あ、あんな事されたのに…愛してるだって!?勘違いも程々にしてよ!受け入れてなんかない!君の一方的な愛を、僕に押し付けないで!!」
思っていたこと全てを言った。
もう懲り懲りだ、こんな事。
と、思った瞬間、彼に握りしめられていた腕の力が更に強くなった。
「痛っ」
「そっか…そうか…なるほどね。よぉく分かったよ。」
良かった…理解してくれたんだ。
「君はまだ誰のものかも理解してないって事をね。」
「え?」
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