テラーノベル
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信愛は突然、胸を押さえてその場に立ち止まった。
「はぁ!」
荒く息を吐き、肩で呼吸を繰り返す。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
膝から力が抜け、その場へ崩れ落ちた。
茜が慌てて駆け寄る。
「信愛? 大丈夫?」
さくらも心配そうに顔を覗き込む。
「信愛? 信愛?」
信愛は苦しそうに息を整えながら、小さく頷いた。
「だ、大丈夫・・・」
しかし、その表情は青ざめていた。
焔垂が静かに口を開く。
「もしかして、魂に刻まれた記憶か?」
信愛はゆっくりと顔を上げる。
「そう・・・だと思う」
住職が首を傾げた。
「魂に刻まれた記憶とは?」
茜が住職へ説明する。
「霊の魂に残っている生前の記憶です」
そして信愛を見つめながら続けた。
「それが信愛の中に流れ込んできたんです」
住職は目を見開いた。
「まさか・・・」
昔から耳にしたことはあった。
魂に刻まれた記憶という現象。
だが、それが本当に存在するとは思ってもみなかった。
「話には聞いた事がありますが・・実際にあるとは」
信愛は静かに目を閉じる。
「そうか・・・」
そして、ゆっくりと弟と妹へ視線を向けた。
「お爺さん君たちの事を奴隷として
扱わずに 家族として・・・」
弟は静かに頷く。
「そうだ・・・兄ちゃんは
僕たちを家族として扱ってくれた」
妹も目を潤ませながら言葉を続けた。
「だから許せなかった」
弟は俯く。
「僕たちが恨んでるなんて・・・そんな事ないのに」
その時だった。
これまで黙っていた勇が、小さく声を漏らす。
「お前ら・・・ぐすっ」
涙が次々と頬を伝う。
勇は地面に両手をつき、土下座をした。
「すまなかった!」
#普通
野々さくら
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ありあ
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弟も妹も言葉を失う。
勇は涙を拭いながら呟いた。
「そうだよな・・・お前らは俺に対して
恨みの言葉なんて口にした事無かったよな」
弟は優しく微笑む。
「ううん・・・良いんだ兄ちゃん
兄ちゃんなら絶対気づいてくれる
俺たちの気持ちに気づいてくれる
そう・・・信じてたから」
妹も嬉しそうに微笑んだ。
「兄ちゃんから貰った羊羹ときゃらめるの味
今でも覚えてるよ?美味しかったなぁ」
勇は涙を流しながら二人を見つめる。
「お前ら・・・」
やがて穏やかな笑みを浮かべた。
「なら今度持って来るよ・・羊羹ときゃらめる」
弟は目を輝かせる。
「本当!?」
妹も両手を合わせて飛び跳ねた。
「やったー♬」
勇は照れくさそうに笑う。
「今の羊羹ときゃらめるは昔とは
比べ物にならないほどに美味いからなぁ」
弟は身を乗り出した。
「うっそ!?本当に!?」
妹も期待に胸を膨らませる。
「うわぁ〜♬楽しみだなぁ〜♬」
弟が念を押すように尋ねる。
「絶対だよ?」
勇は涙を拭ながら力強く頷いた。
「ああ・・絶対だ・・約束する」
◇ ◇ ◇
それから弟は信愛へ深く頭を下げた。
「姉ちゃんもありがとうね・・・
姉ちゃんのおかげで、こうして兄ちゃんと話せた」
そして照れくさそうに笑う。
信愛は優しく微笑んだ。
「ううん・・・良いの」
妹も小さく会釈する。
「ありがとう」
信愛は首を横に振る。
「でも誤解が解けて、本当に良かった」
弟は少し遠慮がちに尋ねた。
「俺たち、また遊びに来ても良いのかな?」
信愛はすぐに頷く。
「もちろんだよ♬」
弟の顔がぱっと明るくなる。
「本当に!?」
妹は嬉しそうに飛び跳ねた。
「わ〜い♬やった〜♬これで
また兄ちゃんに会える〜♬」
その様子を見つめながら、信愛は少しだけ真剣な表情になる。
「でもこれだけは約束して?」
弟が首を傾げた。
「なに?」
「君たちが頻繁に遊びに来ちゃったら
鬼門っていう霊の通り道が開いちゃうの
そうなっちゃったら、悪い霊が
いっぱいこの天虎村に来ちゃうの
だからあまり来すぎちゃだめだよ?」
信愛は弟妹を優しい眼差しで見つめる。
「いい?」
弟は力強く頷く。
「うん♬約束する♬」
妹も元気よく手を挙げた。
「私も〜♬約束するぅ〜♬」
信愛は安心したように笑った。
「良い子だ♬」
弟は勇へ向き直る。
「じゃあ兄ちゃん♬また遊びに来るね♬」
勇は涙の跡を残したまま、穏やかに笑う。
「ああ・・・待ってるよ」
妹は満面の笑みで大きく手を振った。
「ばいば〜い♬」
弟と妹、そして笑顔で手を振るおじろくおばさの姿は、淡い光に包まれながらゆっくりと消えていった。
◇ ◇ ◇
それから勇は信愛へ向き直り、深々と頭を下げた。
「信愛ちゃん・・・本当にありがとう」
信愛は少し困ったように笑う。
「よしてくださいよ、お礼なんて・・・
私はただ、おじろくおばさを弔いたい
謝りたいっていう天虎村の人に
ちょっと力を貸しただけですから」
その言葉に、美羽がくすりと笑う。
「ふふふ、謙虚ね」
すると秋穂が、隣のさくらを見ながら意地悪そうに笑った。
「さくらも信愛ちゃんくらい謙虚で居てくれたらねぇ」
茜は吹き出す。
「きゃはは〜♬言われてやんの〜♬」
さくらは頬を膨らませた。
「あーもう! 一言余計なの!」
秋穂は肩をすくめる。
「あらら、ごめんなさぁい」
そのやり取りを見ていた信愛は、思わず小さく笑みを漏らした。
「ふふふ」
コメント
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×××さん、第118話読ませていただきました。 勇が土下座して「すまなかった」と謝るシーン、そして弟と妹が「信じてたから」と微笑むあたたかさに、胸が熱くなりました。羊羹とキャラメルの約束、おじろくおばさが笑顔で手を振るラスト…誤解が解けて本当に良かった。信愛さんの「あまり来すぎちゃだめだよ」という優しい気配りも、じんわり来ます。次回も楽しみにしています🌷