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星の女王さまが光とともに空へ帰っていったあと、広場はあたたかな拍手と歌声でいっぱいになった。
でも、わたしの心はしんとしていて、
ただ胸の中に残った言葉を何度もくり返していた。
──「あなたはもう魔法を持っているのですよ」
その夜、家に帰ると、お兄ちゃんが布団から上半身を起こしていた。
「ミナ、おかえり」
声はまだかすれていたけど、
頬には赤みがさしていて、
目もいつもよりずっと元気そうだった。
「ほら、見て」
わたしはかごの中に残ったひかりのキャンディをひとつ取り出して、
お兄ちゃんにわたした。
お兄ちゃんはゆっくり口に入れ、
ころころと転がしながら、にっこり笑った。
「すごくあったかい」
その笑顔を見て、わたしは胸がいっぱいになった。
涙がぽろぽろ出てきて、
でもそれは悲しい涙じゃなかった。
お母さんもそばで見ていて、
静かにわたしの肩を抱いてくれた。
外では、まだお祭りの太鼓と歌が聞こえていた。
窓の外に小さな星がひとつ流れ、
それがまるで女王さまからの最後の合図みたいだった。
「……ありがとう」
空に向かってそうつぶやいた。
その夜、わたしはぐっすり眠った。
夢の中でまた、女王さまの声が聞こえた気がする。
──「また、あしたも」
次の日も、その次の日も、
わたしは小さな手でできることをひとつずつ探しながら、
毎日を生きていくんだと思った。
そして、きっとまた、
星の国の誰かと出会える日が来る。