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豪という男性に会う前日、奈美は、通常業務を終えた後に残業した。
黙々と検査業務を続け、残業終了時刻十分前に終わり、ホッとしたところだ。
(そういえば、月曜日の午前中必着で、これを送るって谷岡さんが言ってたっけ……)
奈美はダンボールを取り出し、検査したカートリッジを十個単位にして、プチプチで包む。
輸送時に破損しないように、段ボールに緩衝材を詰めて梱包すると、送り状を貼って発送するだけの状態にしておき、作業場を出て事務所へ向かった。
事務所では、谷岡と男性社員がパソコンに向かい、キーボードを叩いている。
「谷岡さん」
「ああ、高村さん、今日はありがとう。で、検査は終わった?」
上司は、デスクから立ち上がりながら進捗状況を確認してきた。
検査は滞りなく終了し、梱包して発送するだけの状態にした、と報告すると、谷岡は安堵したように、目を細める。
「そこまでやってくれたんだ! いやぁ本当に助かりました。これで帰宅途中に配送センターに寄って、先方に発送できる。ありがとう」
「それでは、お先に失礼します」
「お疲れ様でした」
谷岡に一礼してロッカールームで着替えを済ませた後、奈美は、速攻で会社を後にした。
週末の駅周辺は、かなり混雑していた。
四方八方から襲ってくる人波を、かき分けるように駅へ足を運ぶ。
一週間の業務も無事に終わらせ、いよいよ明日、奈美は豪という男性と会い、セックスなしの淫らな事をするのだ。
気持ちがソワソワ、心臓がバクバクする。
会うのは明日だというのに、既に緊張している自分が滑稽だ。
せっかく男の人に会うのだから、下着を新調しようか、と考える。
思えば、可愛らしい下着を買ったのは、一体いつだったのか記憶にない。
奈美は、改札に入る直前に踵を返し、再び人のうねりに逆行する。
駅前のファッションビルに立ち寄り、ランジェリーショップへ直行した。