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「この世界は、間違っている」
目の前の彼はそう語る、不思議と引き込まれるような声だ。でも、そこに感情はなく、淡々と話してくる。
辺りはいつの間にか色彩をなくし、濃い霧が彼の黒い服を更に目立たせる。
「どういうこと?」
僕が聞くと彼は薄く微笑んで続ける
「キミもみたんでしょ?ドリーム、あの忌まわしいこの世界の真実を。」
彼は手を広げてまるでステージに立っているかのように話す。
「この世界は間違っている、この世界にはあんな酷い奴らがいるんだ。奴らはこの世界には不要な存在なんだ。」
一度静かになる。完璧な静寂、まるで世界の時が止まったようだ…
「ねぇ、ドリーム。不要物は捨てられるべきなんだ。この世界に不必要な存在は取り除かないと、大変なことになる。僕はどうなるか知っている。…だから…………殺してしまおうよ。みんな、キミの愛しい兄弟をいじめるような奴らを」
冷たい視線が刺さる、まるで呪われたかのように身体が動かない。彼は笑っているのに睨まれているようなきがする。
「でっ…でもっ…!!!」
勇気を出して声を振り絞る。
「もしかしたら……あれは何かの勘違いかもしれない…!あれはただの見間違えで!みんなはホントは優しくて!!あれはいじめじゃないいじめじゃないいじめじゃない!!!
………僕は彼らを信じたいんだ。これが僕の気持ち、だから僕は彼らを殺すなんてことしたくない。」
ディスピアは正面から否定されても笑顔を崩さずに話す。
「ドリーム。キミは優しいね。キミの考えは否定しないよ。」
穏やかな響きをもつその声は続ける
「でも、それは“逃げ”だ。都合のいい夢の中に逃げるのも1つの選択だけど、それで何か変わるわけではないことを覚えておいて。」
ボクは何も言えなかった。
彼はそう言って直ぐに霧と共に消えた。