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#サイコホラー
れい
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グラディウス中央区画。
崩れた石畳。
燃え上がる建物。
夜空に火の粉が舞っていた。
その中心。
ガルド・バルディウスとゼルヴァン・グリード。
怪物同士の激突が続いていた。
ドゴォンッ!!!
大剣と鉤爪が衝突する。
衝撃で周囲の壁が吹き飛ぶ。
ガルドが歯を剥き出しに笑う。
「ッラァ!!」
横薙ぎ。
暴風のような一撃。
ゼルヴァンは片腕で受け流す。
だが。
地面が砕ける。
常識外れの膂力。
それでも。
ゼルヴァンは笑っていた。
余裕の笑み。
まるでまだ“遊んでいる”ような顔。
「いいねぇ……!」
紫黒の魔力が噴き上がる。
「最高だよ、お前!!」
ガギィンッ!!
鉤爪が大剣を弾く。
火花。
ガルドが後ろへ滑る。
重い。
異常な腕力。
ガルドの額を汗が流れた。
(クソ重てぇ……!)
だが次の瞬間。
ゼルヴァンの一撃が、わずかに大振りになる。
反動。
隙。
ガルドの目が光った。
「もらったァ!!」
踏み込む。
ゼルヴァンも即座に反応。
鉤爪を構える。
カウンター。
完全に迎撃態勢。
だが――
ガルドが選んだのは、剣ではなかった。
「オラァァァッ!!」
タックル。
ゼルヴァンの瞳が、初めて見開かれる。
「な――」
ドゴォォォンッ!!!
二人まとめて建物へ突っ込む。
家屋一軒分が吹き飛んだ。
瓦礫が宙を舞う。
壁が崩落する。
煙。
土煙の中。
ゼルヴァンが立ち上がろうとする。
だが。
もう遅い。
「そこだァ!!」
ガルド。
既に間合いへ入っている。
大剣を捻る。
全身を回転させながら――
「スクリューブレイカーッ!!」
斬撃。
超重量の回転切り上げ。
ズガァァァンッ!!!
ゼルヴァンの身体が宙へ吹き飛ぶ。
空中へ。
高く。
高く。
数秒後。
ドシャァッ!!!
地面へ叩き落とされる。
石畳が陥没した。
ゼルヴァンが血を吐く。
「……ッ、は……」
ぜぇ……
ぜぇ……
肩が上下する。
一方。
ガルドも息を荒げていた。
「ハァ……ハァ……」
笑ってはいる。
だが疲労は隠せない。
「……よくやったな」
静かな声。
カイルだった。
長剣を肩へ下ろしながら歩いてくる。
その後ろ。
地面には、伸びた冒険者狩りの連中。
白銀騎士団が既に制圧していた。
「こっちも片付いた」
カイルが淡々と言う。
「全員拘束済みだ」
視線をゼルヴァンへ向ける。
「あとは大将――」
一拍。
「それと、別班の方だな」
ガルドが肩で息をしながら頷く。
「あぁ……」
その瞬間。
ヒュンッ!!
空気を裂く音。
一本の矢。
超高速。
真っ直ぐガルドの頭部へ。
だが。
ギィンッ!!
火花。
カイルが一瞬で切り落としていた。
ガルドが目を見開く。
「なっ……!?」
カイルの視線が鋭くなる。
「まだ生き残りがいたか……?」
だがすぐに。
その目が細まる。
「……いや」
遠距離。
屋根のさらに先。
崩れた家屋二つ分ほど離れた高所。
そこに。
弓を構えた影。
ロビンフット。
紫の瞳が、静かにこちらを見ていた。
風に髪が揺れる。
そして。
小さく呟く。
「別に仲間じゃないとはいえ」
矢をつがえる。
「信用くらいはしてるんだ」
口元が歪む。
「……まだ立てるでしょ?」
一拍。
「ケダモノ」
その言葉。
聞こえたのか。
ゼルヴァンの肩が、ぴくりと動いた。
ゆっくり。
立ち上がる。
その瞬間。
空気が変わった。
ドクン――
脈打つように、紫黒の魔力が膨れ上がる。
さっきまでとは比較にならない。
地面が軋む。
周囲の瓦礫が浮く。
ガルドの顔から笑みが消えた。
「……おいおい」
ゼルヴァンが、狂ったように笑う。
「ハハ……!」
口元から血を垂らしながら。
空を見上げて叫ぶ。
「いるんだろォ!! ロビンフット!!」
返事はない。
だが。
遠くの弓兵は、静かに次の矢を番えていた。
ゼルヴァンが腕を広げる。
「男と男の信念バトルは終わりだ!!」
瞳が狂気に染まる。
「こっからは――」
紫黒の魔力が爆発する。
「残虐で!!」
建物が揺れる。
「卑怯な!!」
殺気が街を覆う。
「殺戮パーティーの時間だぜェェェッ!!!!」
咆哮。
同時。
ロビンフットが静かに呟く。
「任務了解」
一方、地下の先へと進む副団長たち
地下アジト。
崩れかけた石造りの建物。
腐った木材の匂い。
薄暗いランタンの火が、壁に揺れていた。
地下組は、ようやく目的地へ辿り着いていた。
ユナが小型魔道具を起動する。
淡い光が空中へ広がった。
魔力探知。
円形の波紋が、建物全体へ広がっていく。
数秒。
ユナが眉を寄せた。
「……魔力反応、いくつか確認」
表情は険しい。
「かなり弱ってる」
リシアが目を細める。
「敵は?」
ユナは魔道具を見つめたまま首を振る。
「特に感知なし」
一拍。
「捕らえられたみんなしかいないみたい」
その言葉に、場の空気が少しだけ緩む。
だが。
リシアは警戒を解かなかった。
「では、すぐに中へ入る」
静かな声。
「……だが、今さっきの件もある」
ロビンフット。
あの異常な隠密。
あの転移。
リシアの目が鋭くなる。
「周囲の確認も絶対に怠るな」
騎士たちが頷く。
その瞬間――
リシアの脳裏に、数分前のやり取りが過る。
――回想。
崩落した地下通路。
まだ土煙が漂う中。
レインが静かに口を開いた。
「副団長」
リシアが振り向く。
レインは暗闇を見たまま言った。
「ここから、私は別行動を取ります」
「……理由は?」
短い問い。
レインの瞳が細まる。
「あの“ロビン”という男」
「素性が気になる」
静かな声。
だが確信があった。
「あれは普通じゃない」
リシアも否定しない。
レインは続ける。
「アルドも連れて行かれた」
「もし一緒にいた場合は、助けだします」
一拍。
「それと、一度団長の元へ向かうつもりです」
「こちらの状況を伝える必要がある」
数秒。
リシアは考え――頷いた。
「……分かった」
「こちらは捕虜を保護後、すぐ合流する」
レインが小さく頭を下げる。
「では、副団長」
次の瞬間。
レインの姿は、闇へ溶けるように消えていた。
――現在。
「副団長!」
騎士の声。
リシアが現実へ戻る。
「これで最後と思われます!」
建物の奥。
拘束されていた冒険者たち。
五番隊隊員たち。
皆、傷だらけだった。
だが。
幸いにも致命傷はいない。
(結局、ここにアルドはいなかったか)
副団長は、ここで隔離されていると予想は
踏んでいたが宛は外れた。
(こうなったらレインに託すしかないか)
ユナは安堵の息を漏らす。
「……よかった」
セラが最後の回復魔法を終える。
淡い光が消えた。
「応急処置は完了」
少し疲れたように肩を落とす。
「あとは数時間、安静ね」
ユナが頭を下げた。
「ありがとう、セラ」
セラは小さく微笑む。
その時。
リシアがユナへ手を伸ばした。
「ユナ、魔道具を借りるぞ」
「あ、うん!」
ユナは腰のポーチから小型魔具を取り出す。
丸い時計のような形。
起動すると、空中へ立体マップが浮かび上がった。
「この光の先に行けば最短ルートだよ」
光の線が高速で伸びる。
リシアが頷く。
「あぁ、分かった」
そして。
ユナを見る。
「ここは任せたぞ」
「隊員たちの近くにいてやれ」
一拍。
「……お前がいるだけで安心する」
ユナが少し目を丸くする。
だがすぐに笑った。
「うん、任せて」
リシアは短く頷き、セラへ視線を向ける。
「セラ」
「私の服を掴め」
セラが目を瞬かせる。
「……え?」
次の瞬間。
リシアが地面を踏み込んだ。
ドンッ!!!
石床が砕ける。
その一歩は、“踏み込み”というより発射だった。
ドンッ!!!
リシアの脚力に耐えきれず、地下アジトの石床が蜘蛛の巣状に砕け散る。
衝撃で土埃が舞い、周囲のランタンが激しく揺れた。
セラが思わず目を見開く。
「ちょっ――速っ!?」
返事はない。
次の瞬間には、景色が流れていた。
地下通路を一直線。
風圧で水たまりが弾け飛ぶ。
壁際の木箱が吹き飛ぶ。
リシアは迷わない。
ユナから渡された魔道具。
空中に浮かぶ淡い光の線。
それを最短距離でなぞるように駆け抜ける。
セラが服を掴みながら顔をしかめた。
「普通……こういう移動って……魔法でやるものじゃないの……!?」
「黙って。舌を噛むわよ」
即答。
その直後。
前方。
崩れた地下壁。
本来なら迂回が必要な瓦礫地帯。
だが。
リシアは速度を落とさない。
「伏せろ」
「え?」
ドゴォォォンッ!!!
蹴り。
瓦礫の山が真正面から吹き飛んだ。
爆散する石片。
セラが絶句する。
(この人、本当に剣士……?)
そのまま二人は地下水路を突破。
前方に、微かな月明かり。
出口。
リシアの目が細まる。
「掴まってろ」
次の瞬間。
ズガァンッ!!!
地面を突き破り、二人が地上へ飛び出した。
石畳が吹き飛ぶ。
夜風。
月光。
煙の向こうに広がるグラディウス。
そして――
遠くから響く轟音。
戦闘。
まだ終わっていない。
リシアの表情が険しくなる。
「間に合え……!」
再び踏み込む。
バギィッ!!
今度は地上の石畳が砕けた。
セラが半ば引きずられるように加速する。
街の景色が線になる。
燃える建物。
逃げ惑う住民。
吹き飛ぶ瓦礫。
その全てを置き去りにして。
リシアは真っ直ぐ駆ける。