テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#かごめかごめ
桜城優衣🌸
184
#恋愛
ばたっちゅ
3,576
#塩レモン
comi
2,410
804
グラディウス近郊。
夜の森林。
冷たい風が枝葉を揺らしていた。
そのすぐ隣――
遠くの街から、赤い光が空へ伸びている。
爆発音。
金属音。
誰かと誰かが、まだ戦っている。
煙が夜空へ立ち上っていた。
アルドは静かにそれを横目で見た後、視線を前へ戻す。
目の前。
ロビンフット。
木に背を預け、まるで散歩でもしているような顔をしている。
アルドは眉を寄せた。
「……どういうつもりだ」
低い声。
「こんな所に連れてきて」
杖を軽く肩へ乗せる。
「言っとくが、俺は変な趣味は持ってないぞ」
沈黙。
そして。
ロビンフットが吹き出した。
「ふふっ」
肩を震わせながら笑う。
「おや」
片目が細まる。
「私は少しくらいなら良いと思いましたが」
一拍。
「……少し残念です」
冗談めいた声。
だが。
瞳は全く笑っていない。
アルドも分かっている。
この男は、常に“探っている”。
会話。
仕草。
視線。
全部。
ロビンフットはゆっくり木から離れた。
「さて」
風が吹く。
長い紫髪が揺れる。
「本題に入りましょうか」
空気が変わる。
さっきまでの軽さが消える。
ロビンフットはアルドを真っ直ぐ見た。
「私の言葉を聞いて」
「あなたは攻撃をやめた」
一歩。
近づく。
「そのまま、私について来た」
紫の瞳が細まる。
「その理由は?」
数秒。
沈黙。
森の奥で、フクロウの声だけが響く。
アルドは小さく息を吐いた。
「……わざわざ、その答えがいるのか?」
ロビンフットは笑わない。
アルドの目も細まる。
そして。
静かに言った。
「お前、俺に言ったよな」
風が止む。
「“魔王の正体、知りたくないか”って」
その瞬間。
ロビンフットの口元が、ゆっくり歪んだ。
「……フフ」
小さく笑う。
まるで長い間探していた答えに、ようやく辿り着いたように。
「これで、“答え”が出ました」
紫の瞳が細められる。
そして。
わずかに頭を下げた。
「お初にお目にかかります」
一拍。
「――魔王様」
沈黙。
夜風だけが木々を揺らす。
だが。
アルドは無反応だった。
表情一つ変わらない。
「……魔王?」
怪訝そうに眉を寄せる。
「俺に言ってるのか?」
肩をすくめる。
「どう見ても人間だろ」
呆れたように続ける。
「お前、頭悪い――」
「おや?」
ロビンフットが言葉を重ねる。
アルドの言葉を切るように。
「魔王?」
わざとらしく首を傾げる。
「何のことでしょう」
口元が吊り上がる。
そして。
ロビンフットは、あの“壊れた言語”を口にした。
「■■■ ―― ◼︎◼︎▧▧」
空気が、わずかに軋む。
森の温度が一瞬だけ下がった。
ロビンフットは楽しそうに笑う。
「あぁ……なるほど」
「もしかして、“これ”が聞き取れたんですね?」
アルドの目が、わずかに細まる。
ロビンフットは続けた。
「普通の人間には聞こえません」
「正確には、“理解できない”」
一歩。
ゆっくり近づく。
「古代魔族語」
静かな声。
「今の時代でこれを認識できる存在なんて、ほぼ残っていない」
紫の瞳が、アルドを真っ直ぐ射抜く。
「だから私は、“試した”んです」
「そして、あなたは反応した」
笑みが深くなる。
「つまり」
風が止む。
「あなたは“あちら側”の存在だ」
アルドは数秒、黙ったままだった。
遠くで爆発音が響く。
グラディウス。
まだ戦いは続いている。
その瞬間。
ロビンフットが、突然笑い出した。
「……っ、ふふ……」
肩を震わせる。
抑えきれないように。
やがて。
「アハハハハッ!!」
夜の森へ笑い声が響いた。
アルドの眉がわずかに動く。
ロビン――いや、“それ”は笑いながら口を開く。
「やっぱり」
紫の瞳が歪む。
「あなたの困ってる顔、実に滑稽だわ」
声色が変わっていた。
さっきまでの男の声ではない。
もっと透き通った。
もっと高い。
聞き覚えのある声。
アルドの目が細まる。
「……お前」
すると。
ロビンフットがゆっくり両腕を広げた。
「もう、“茶番”はいいわね」
次の瞬間。
ブワッ――
背中から光が噴き出す。
純白。
巨大な翼。
夜空を覆うほどの神々しい羽。
風が吹き荒れる。
森の木々が揺れる。
ロビンフットの身体が、光に包まれていく。
輪郭が崩れる。
髪が伸びる。
服が変わる。
黒衣は消え去り、代わりに現れたのは神官にも似た純白の装束。
神秘的な光が周囲を照らす。
そして。
最後に。
片目を隠していた前髪が流れ落ち――
金色の瞳が現れた。
アルドが、完全に無言になる。
光の中。
その女は楽しそうに微笑んだ。
「何時間ぶりかしらね」
翼を広げる。
月光が反射する。
「――魔王」
女神セレスティア。
世界の均衡を司る存在。
そして。
アルドを“魔王役”へ叩き込んだ張本人だった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!