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#サイコホラー
れい
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グラディウス近郊。
夜の森林。
冷たい風が枝葉を揺らしていた。
そのすぐ隣――
遠くの街から、赤い光が空へ伸びている。
爆発音。
金属音。
誰かと誰かが、まだ戦っている。
煙が夜空へ立ち上っていた。
アルドは静かにそれを横目で見た後、視線を前へ戻す。
目の前。
ロビンフット。
木に背を預け、まるで散歩でもしているような顔をしている。
アルドは眉を寄せた。
「……どういうつもりだ」
低い声。
「こんな所に連れてきて」
杖を軽く肩へ乗せる。
「言っとくが、俺は変な趣味は持ってないぞ」
沈黙。
そして。
ロビンフットが吹き出した。
「ふふっ」
肩を震わせながら笑う。
「おや」
片目が細まる。
「私は少しくらいなら良いと思いましたが」
一拍。
「……少し残念です」
冗談めいた声。
だが。
瞳は全く笑っていない。
アルドも分かっている。
この男は、常に“探っている”。
会話。
仕草。
視線。
全部。
ロビンフットはゆっくり木から離れた。
「さて」
風が吹く。
長い紫髪が揺れる。
「本題に入りましょうか」
空気が変わる。
さっきまでの軽さが消える。
ロビンフットはアルドを真っ直ぐ見た。
「私の言葉を聞いて」
「あなたは攻撃をやめた」
一歩。
近づく。
「そのまま、私について来た」
紫の瞳が細まる。
「その理由は?」
数秒。
沈黙。
森の奥で、フクロウの声だけが響く。
アルドは小さく息を吐いた。
「……わざわざ、その答えがいるのか?」
ロビンフットは笑わない。
アルドの目も細まる。
そして。
静かに言った。
「お前、俺に言ったよな」
風が止む。
「“魔王の正体、知りたくないか”って」
その瞬間。
ロビンフットの口元が、ゆっくり歪んだ。
「……フフ」
小さく笑う。
まるで長い間探していた答えに、ようやく辿り着いたように。
「これで、“答え”が出ました」
紫の瞳が細められる。
そして。
わずかに頭を下げた。
「お初にお目にかかります」
一拍。
「――魔王様」
沈黙。
夜風だけが木々を揺らす。
だが。
アルドは無反応だった。
表情一つ変わらない。
「……魔王?」
怪訝そうに眉を寄せる。
「俺に言ってるのか?」
肩をすくめる。
「どう見ても人間だろ」
呆れたように続ける。
「お前、頭悪い――」
「おや?」
ロビンフットが言葉を重ねる。
アルドの言葉を切るように。
「魔王?」
わざとらしく首を傾げる。
「何のことでしょう」
口元が吊り上がる。
そして。
ロビンフットは、あの“壊れた言語”を口にした。
「■■■ ―― ◼︎◼︎▧▧」
空気が、わずかに軋む。
森の温度が一瞬だけ下がった。
ロビンフットは楽しそうに笑う。
「あぁ……なるほど」
「もしかして、“これ”が聞き取れたんですね?」
アルドの目が、わずかに細まる。
ロビンフットは続けた。
「普通の人間には聞こえません」
「正確には、“理解できない”」
一歩。
ゆっくり近づく。
「古代魔族語」
静かな声。
「今の時代でこれを認識できる存在なんて、ほぼ残っていない」
紫の瞳が、アルドを真っ直ぐ射抜く。
「だから私は、“試した”んです」
「そして、あなたは反応した」
笑みが深くなる。
「つまり」
風が止む。
「あなたは“あちら側”の存在だ」
アルドは数秒、黙ったままだった。
遠くで爆発音が響く。
グラディウス。
まだ戦いは続いている。
その瞬間。
ロビンフットが、突然笑い出した。
「……っ、ふふ……」
肩を震わせる。
抑えきれないように。
やがて。
「アハハハハッ!!」
夜の森へ笑い声が響いた。
アルドの眉がわずかに動く。
ロビン――いや、“それ”は笑いながら口を開く。
「やっぱり」
紫の瞳が歪む。
「あなたの困ってる顔、実に滑稽だわ」
声色が変わっていた。
さっきまでの男の声ではない。
もっと透き通った。
もっと高い。
聞き覚えのある声。
アルドの目が細まる。
「……お前」
すると。
ロビンフットがゆっくり両腕を広げた。
「もう、“茶番”はいいわね」
次の瞬間。
ブワッ――
背中から光が噴き出す。
純白。
巨大な翼。
夜空を覆うほどの神々しい羽。
風が吹き荒れる。
森の木々が揺れる。
ロビンフットの身体が、光に包まれていく。
輪郭が崩れる。
髪が伸びる。
服が変わる。
黒衣は消え去り、代わりに現れたのは神官にも似た純白の装束。
神秘的な光が周囲を照らす。
そして。
最後に。
片目を隠していた前髪が流れ落ち――
金色の瞳が現れた。
アルドが、完全に無言になる。
光の中。
その女は楽しそうに微笑んだ。
「何時間ぶりかしらね」
翼を広げる。
月光が反射する。
「――魔王」
女神セレスティア。
世界の均衡を司る存在。
そして。
アルドを“魔王役”へ叩き込んだ張本人だった。