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恵
「私も、侑さんと結婚したばかりだし、『二人らしい生き方』を、まだまだ手探りで模索してるところだよ」
「二人らしい……生き方……かぁ……」
瑠衣も自分に直面している事を受け止めつつ、夫の侑と寄り添いながら人生を歩んでいるのだろう。
「自分らしく生きていくって事は、ひょっとしたら、人生を掛けて探していく『終着点の見えない長旅』みたいなものかもしれない。旅をしているうちに、美花ちゃんの良き理解者が現れて、恋をして……。一緒に人生を歩んで初めて、『自分らしく』から『二人らしく生きていく』ために、次は二人で、まだ見ぬ終着点を探しながら、長旅を続けていくんじゃないかな……?」
瑠衣の言葉が、美花の心の奥底に、ずしりと重く響く。
アイスティに入っていた氷が溶け、グラスの中で、カランと小さく音を立てると、美花にはそれが、圭とさらに近付いていくための暗示に思えた。
圭の仕事が落ち着いたら、デートしよう、と彼のお誘いも受けている。
「…………美花ちゃんらしい恋…………私も陰ながら応援してしてるよ」
瑠衣が小首を傾げながら、笑みを覗かせ、美花はゆっくりと頷いた。
***
カフェを後にした美花と瑠衣は、井の頭公園に向かい、園内を散策した後、ベンチに腰を下ろす。
木々の緑の中に、黄色やオレンジが混ざり合い、重なり合う枝の隙間から溢れる陽光に、美花は目を細めると、抱え込んでいた過去の恋愛の傷跡が、少しだけ浄化されたような気がした。
隣にいる瑠衣をチラリと見やると、スマートフォンを片手に、微笑みながら指を滑らかに動かしている。
「そういえば、今日、旦那さんは?」
「侑さんは、今日は午前中から銀座のハヤマ旗艦店で、トランペットの選定会に行ってるんだけど、早く終わったみたいで、吉祥寺まで迎えに行くって、今さっき連絡が入ったんだ」
「おおぉ…………ラブラブだねぇ」
「私が大きな病気をしたせいか、侑さん、ちょっと過保護になってるかも。学生の頃なんか、それはもう目つきが鋭くて怖い先生だったし、レッスンも厳しくて、心が折れる事ばかり言われ続けてきたから、一緒にいてビックリする事ばかりだよ」
そう言いながらも、瑠衣の表情は幸せに溢れている。
「ルイルイ……大好きな人の奥さんになれて、良かったねっ」
「うん。色々な人たちに支えられて…………今の私と侑さんがいる。だから、私たちと関わってくれた人たちには…………すごく感謝してるの」
瑠衣の、どこか幼い顔立ちを眺めながら、美花も唇を緩めさせた。
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