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メイドA
「ねえ、聞いた? 昨夜、閣下がキッチンでエルナ様に……」
メイドB
「キャー! あの氷の閣下が!? 信じられない!」
エルナ
(……うう、居心地が悪い。やっぱり噂になってる……)
(そこへ、重厚なブーツの音が響く)
???
「お静かに。……朝から騒々しいですね」
エルナ
(あの人は……前世で『宮廷料理長』を勤めていた、伝説のシェフ・バルト!)
バルト
「公爵閣下が、どこの馬の骨とも知れぬ小娘の料理にうつつを抜かしていると聞き、王宮より参りました」
エルナ
「王宮から……? どうして……」
バルト
「公爵閣下は、我が国の魔力の要。その食事を任せる者が『毒殺未遂で追放された聖女』など、王家が許しません」
エルナ
「っ……! あれは冤罪です!」
バルト
「ならば、実力で証明していただきましょう。……今夜の晩餐、閣下の舌を満足させた方を『専属料理人』とする」
エルナ
(受けて立つしかないわ。ここで逃げたら、また前世みたいに、居場所を失ってしまう……!)
アルフレッド
「……。……。……。」
(不機嫌そうに、並べられた二つの皿を見つめる)
バルト
「さあ、閣下。王宮の粋を極めた『黄金の鴨のロースト』でございます」
エルナ
「私はこれです。……『山菜と魔力水の素朴なポトフ』」
バルト
「ハハハ! 公爵閣下にそんな庶民の料理を出すとは。……勝負は決まったな」
(アルフレッドが、まずバルトの料理を一口食べる)
アルフレッド
「……味はいい。だが、重すぎる」
(次に、エルナのポトフを一口運ぶ)
アルフレッド
「…………!!」
アルフレッド
「……体の隅々まで、優しさが染み渡るようだ。……バルト、お前の料理には『私を想う心』が欠けている」
バルト
「な、何だと……!?」
アルフレッド
「彼女の料理は、私の『呪いの痛み』を理解し、寄り添ってくれている。……勝負ありだ。下がれ」
バルト
「……くっ……! 覚えていろよ……!
仙崎ひとみ/九龍
#異世界
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