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明るいネイビーブルーの総レースのドレスに身を包み、ゴールドのストールとパーティバッグ、同系色のパーティシューズの瑠衣を見た瞬間、侑は思わず息を呑んだ。
夜にここで会う時の瑠衣とは違い、どこか清楚な雰囲気を醸し出している彼女が、可愛くも感じ、綺麗だとも感じたのだ。
「響野様、おはようございます。お待たせして申し訳ありません」
いつもの一礼をした後、彼女が顔を上げると、メイクも普段よりも華やかな雰囲気だった。
唇の右横にあるホクロは、変わらず色香を漂わせている。
「いや、大して待ってない。では行くぞ」
二人が出入り口へ向かおうとした時、オーナーの凛華が歩み寄り、侑に向かって深々とお辞儀をした。
「明日の昼間まで、ごゆっくりお過ごし下さい」
「く…………あ、いや、愛音は私がここまで送り届けるのでご安心を。では」
「響野様、行ってらっしゃいませ」
侑は、瑠衣の事を危うく『九條』と言いそうになり、慌てて源氏名で言い直したが、大丈夫だっただろうか? などと考えてしまう。
木製の両開きのドアを開け、侑と瑠衣はパーティが開催されるホテルへ向かった。
「まさか、車で来るとは思いませんでした」
ステアリングを握っている侑を見やりながら、瑠衣がポツリと呟いた。
「…………普段は車で移動する事が多いからな」
今日のパーティ会場は、西新宿にある電鉄系のホテル。
侑の自宅からだと、徒歩でも行けてしまう距離だ。
日曜日という事もあり、高層ビル群周辺は道が混雑しているが、ホテルの地下駐車場は、幸いにも空車の表示が出ている。
侑の運転する黒いSUV車は吸い込まれるように地下駐車場へ入っていき、空きスペースに車を停めた。
「パーティ会場はかなり広いようだ。迷子にならんように、俺から離れるな」
「はい」
侑が先導するように歩き、二人は会場へ足を向けた。