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校門を出ると、そこにはフェンスに寄りかかってスマホをいじっている遥がいた。
私を見つけると、彼は面倒くさそうにスマホをポケットに突っ込んで、黙って歩き出す。
「……待ってよ、遥」
「遅い。……あいつに、また何か言われたのか」
遥の歩幅はいつもより少しだけ狭くて、私が無理なく隣に並べるようになっている。それに気づくと、昨日の雨の中での出来事がフラッシュバックして、急に顔が熱くなった。
「……別に、何も。成瀬先輩が、先に帰りなさいって言ってくれただけだよ」
「……ふーん」
しばらくの間、住宅街に私たちの足音だけが響く。
ふと、遥が立ち止まった。そこは、私たちが子供の頃から何度も一緒に遊んだ、小さな公園の入り口だった。
「紗南。……お前、いつまであいつのこと引きずってんだよ」
「え……」
「昨日、俺が言ったこと……忘れたわけじゃねーだろ」
遥が私の腕を掴んで、自分の方へと引き寄せる。
彼の瞳は、幼なじみのそれではなく、一人の男の子としての熱を帯びていた。
「俺なら、お前のこと絶対泣かせないって言った。……今のあいつの優しさは、ただの逃げだ。そんなの見なくていいから、俺だけ見てろよ」
強引で、不器用。でも、凌先輩からは一度ももらえなかった「私だけを求めてくれる言葉」。それが、私の心の一番深いところに、真っ直ぐに突き刺さった。