テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
4
まただ。
また、僕は暗闇の中にいた。
あたりを見回し、僕は再び、あの気配のする方へ身体を向けた。
二日続けての同じ夢。
暗闇の回廊は、いまだどこまでも続いており、どこに繋がっているのか見当もつかない。
ただ、僕がここを訪れることに何らかの意味があるのだろうことは、はっきりと分かっていた。
呼ばれている、というよりは、感覚が共鳴し合っている、そんな感じだ。
僕は昨夜と同じように、その気配に向かって歩き出した。
道なんてものはもちろんない。
ただ延々と続く闇の中を、ひたすらに進むだけ。
迷う不安は、なぜか一切なかった。
迷うことなんて、たぶん、ない――そんな確信が、胸の奥に根を張っていた。
特に今日は、その思いが強かった。
空気の中に、ふんわりとバラの香りが混じり始めたからだ。
――これは、真帆ねえの夢に違いない。
なかなか辿り着けないのは、僕がまだこの道の歩き方をわかっていないからか。
それとも、真帆ねえがまだ、僕に手を伸ばしきれていないからか。
いや、そんなはずはない。
そもそも夢が繋がっている時点で、彼女は助けを求めているのだ。
少なくとも、僕はそう信じたかった。
バラの香りは、気配の方向から漂ってくる。
嫋やかで、軽やかで、真帆ねえそのもののような香り。
なのに、そこに混じるのは、どこか重たく澱んだ空気だった。
きっとそれが、今の彼女の状態を映している。
僕はとにかく歩き続けた。
暗闇の中を、ただひたすらに。
もし僕にできることがあるなら、力になりたかった。
それが、シモハライさんの不安さえも、いつか溶かしてくれると信じていたから。
前へ。前へ。前へ――
徐々に、バラの香りが濃くなっていく。
同時に、周囲を包む空気が重く、冷たく、肌にまとわりつくようになっていった。
鼓動が、少しずつ速くなるのが自分でも分かった。
真帆ねえの夢に、着実に近づいている。
そして。
「――あれは」
闇の先に、小さく揺れるを光を見たのだ。
けれど、それだけではなかった。
その光を包み込むように、強大な影が姿を現したのだ。
黒い、巨大な影。
その影に、僕は確かに見覚えがあった。
けれど、その名前も、正体も、まるで思い出すことができなかった。
どこか恐ろしく、けれど同時に、ひどく悲しげな気配をまとった影は、まるで光を守るように、そこに立っていて。
僕はその影に、静かに右手を伸ばし、囁くように、
「――君は」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!