コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
振り返った女を見た瞬間、本橋 豪は、一気に心を持っていかれたと同時に、鼓動が慌ただしく打ち始めた。
奈美という女の容姿は、期待できないと思っていた彼の予想を、見事に覆してくれた。
呼びかけた時に返された、透明感のある高めの声色。
清純な顔立ちに、形の綺麗な、少し吊り目気味のアーモンドアイ。
黒い瞳は、穢れを知らない美しさを湛えていた。
芸能人で例えるなら、以前、朝の情報番組にパーソナリティとして出演していた、鈴本杏奈に似ている。
こんな綺麗で可愛らしい女が、あのエロ系SNSでクンニだけの関係を求めている女なのか? と、豪の中で疑問がよぎった。
人は見かけによらない、というのは、こういう事なのかもしれない。
豪は午前中、急ぎの仕事で休日出勤していたが、奈美という女の容姿を見て、疲れが一気に吹き飛んでいく気がした。
「初めまして。豪です」
「はっ……初めまして。奈美……です……」
胸の奥を鷲掴みにされ、高鳴る鼓動を落ち着かせながら挨拶をすると、奈美も緊張しているのだろう。
彼に、ぎこちなく会釈してくれた。
初々しい雰囲気に、豪の頬が思わず緩む。
「もしかして……かなり緊張してる?」
「はっ…………は……い……」
奈美が辿々しく頷いている。
「実は俺も、かなり緊張してる。ほら」
無意識に彼女の手を取り、豪の胸元に手を当てさせると、更に丸みを帯びた、奈美の黒い瞳。
「じゃあ……さっそく、行こうか」
彼は、彼女の手を離さず、そのまま目的地へ向かって歩き出した。
豪が女にこんな事をするのは、初めてだった。
彼の中では既に、彼女にただ触れたい、と思っていたのかもしれない。
奈美は、豪に手を当てさせられて、かなり驚いた様子だったが、場所を移動する時も手を離さなかった。
彼女の小さな掌の温もりを、もっと感じたいと思っている豪がいる。
彼の人生で、初めての一目惚れ。
豪は、ホテル街を通り抜け、奈美と会う事が決まってから、すぐに予約したホテルへ足を向けると、彼女は不安気な表情を浮かべている。
金銭的な事を考えていたのだろうか。
「部屋を取ったのは、俺がそうしたいと思って取ったんだ。奈美さんが気にする事はないよ。その代わり……」
緊張しきりの奈美を揶揄いたくなり、豪は、敢えて低い声音で耳元に囁いた。
「今日は奈美さんを……じっくりと……堪能させてもらうからな?」
彼女の身体が、小さく震えたような気がして、ニヤリと笑う彼。
今日は、と言ったが、豪は、お泊まりで彼女と過ごす気満々だった。