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湘南へドライブ行って以降、恵菜は、純と少しずつメッセージを交換するようになった。
『恵菜さん、今日も忙しそうだったね。お疲れさま』
『谷岡さん、お疲れさまです。今日はいい天気でしたね』
他愛のないやり取りだけど、純との何気ないメッセージ交換は、彼女の渇いた心と生活に潤いを与えられている。
純がファクトリーズカフェで昼休みを過ごすのも、相変わらず続いていて、彼は注文したメニューが届くまでの間に、メッセージを恵菜に送っているようだった。
週末の昼時、珍しく純がスーツ姿でカフェに来店。
ダークネイビーのスーツに、グレーベースのストライプのネクタイを締めた純を見た時、恵菜は彼に気付かなかった。
「お……お疲れさま…………です」
聞き覚えのある声に、ハッと振り返ると、彼が、はにかみながら入口付近に立っている。
「お疲れ様です。今日はスーツなんですね」
「午前中に、向陽商会の本社と関連会社の会議に出席してたもので」
「そうだったんですね。では、お席にご案内しますね」
恵菜が先導して、純を窓際の席へ促した。
「今日は…………そうだな。オムライスのランチセットでお願いします」
「かしこまりました」
彼からオーダーを取った後、一礼して恵菜は厨房へ向かう。
(それにしても…………谷岡さん、背が高いから、スーツがすごく似合っててカッコいいな……)
彼女は、昨年のクリスマス以来の純のスーツ姿に、ドギマギしている。
広い店内を歩き回りながら、時折、テーブルで注文を待っている純をチラリと見やると、スマートフォンを取り出し、画面をタップしている。
(今日のメッセージは、何て書いてあるのかな……)
カフェ内では、あくまでも店員と客の間柄なので、恵菜も純も敬語で言葉を交わすが、メッセージのやり取りでは、彼は気軽な雰囲気で送ってくれる。
(さて、今日も頑張って仕事しなきゃ……!)
恵菜は終業時刻の十七時まで、笑顔を溢れさせて仕事を熟していった。