「巻いて、美洋さん。釣れていますよ」
先生も今は、1年生は名前呼びする。
そして美洋さんが巻き終わる前に。
「こっちも!」
彩香さんのウキも沈んで消えた。
僕のはそのまま。
「はい、美洋さん。そこで巻くの止めて。ゆっくり竿を立てていって」
先生の言う通り竿を立てると、仕掛けに小さい銀色の魚が1匹ついている。
先生は、手元に戻ってきた仕掛けのおもりを取ると、美洋さんの竿を掴んだ。
「こうやっておもりを持てば安全です。あとは適当に、竿をその辺で横にして」
仕掛けと竿を横に倒して。
「針は自分で外してみて下さいね。次は彩香さん」
美洋さんは、ビチビチ跳ねている魚に戸惑い気味ながらも。
何とかラジオペンチを使って針を外して、魚をバケツの中へ。
その間に先生は、彩香さんのを手伝っている。
こっちも同じような魚だ。
「今は美洋さんが作業しているから、こっちでと」
後の堤防が高い部分に沿って、竿を横に置く。
「どっちも鯖の小さいのですね。今がチャンスかもしれません」
先生はそう言って、コマセを長いスプーンみたいな物で掬い、3メートル位先の海面へ3回程投げるた。
「良し、今です。悠君、糸を巻いて。今、私が餌を投げた処にウキを近づけて」
僕は言われた通り、仕掛けをその付近に近づける。
確かに、ちょっと深いところに、黒っぽい魚が群れになっているのが見えた。
その付近へとウキが近づいたところで、 先生がさっとコマセをまく。
その瞬間、くっと竿が下向きに引かれた。
「はい、1丁上がり。美洋さん、彩香さん。餌は入れないで良いですから、仕掛けを海に入れて下さい。今、チャンスですから」
そんな感じだ。
釣れ始めると、1回に2匹以上かかることも珍しくない。
そんな感じで、釣っては外して、釣っては外してと。
3人のうち、常に1人は釣れているような状態が始まった。
なるほど。
これが異常に釣れるという状態か。
楽しいけれど、せわしない。
釣れるのは、ほとんどが同じ魚。
さっき先生が言っていた、鯖の小さいのだ。
時々、もっと細くて小さく見えるのもかかる。
こっちは鰯だそうだ。






