「で、お前、本当に祓えるのか?」
「当たり前でしょ、私は巫女様よ」
少女は、胸を張ってドヤ顔を披露する。
「名前は?」
「迦ノ峰 雪」
迦ノ峰雪。頭の中で復唱する。
「で、雲竜。あんた仕事辞めて」
「はあーー⁉︎⁉︎⁉︎」
こいつは俺のことを雲竜と呼ぶ。
「なんで辞めなきゃいけないんだよ!嫌だわ!」
「そう?無断欠席でクビにされるよりいいと思うけど」
?
「おい、どう言うことだよ。話が見えてこないんだが」
「雲竜。祓うまで結構時間かかるわよ。ここじゃないところに行かなきゃだし」
まじかよ
「ここじゃないところって?」
「私の本家」
頭は?マークでいっぱいだ。
「なぜに?」
「挨拶よ。私が後継になったら払いやすくなるわよ」
うーん、面倒臭いがいつ死ぬかもわからないことよりはいいか
「しっかり説明しろよ」
「仕方ないなあ」
そうして彼女は近くのファーストフード店へと手招きした。
「で、雲竜を払う方法だけどね」
「ああ」
「風雷山へいくのよ」
ふうらいざん?どこだそこ。ググってみても出てこない。
「おい、そんな場所ないって」
「ええ、ここにはないわ。奇界にあるのよ」
奇界?なんだそれ
「ああ、1から言わなきゃね。まあ、あんまり言いたくないけど。私、人間じゃないの」
「は、はあーー⁉︎⁉︎」
意味がわからん。
「えーと、私は奇界生まれ奇界育ちの『あやかし』なの」
あやかし。聞いたことぐらいはある。
「そんなの本当にいるのかよ、、、」
「雲竜様がいるんだからいるでしょ。現にここにいるし」
雲竜様は俺の背中についているやつだ
「まあ、いわれてみれば、、、」
「で、その奇界にある風雷山で払わなきゃいけないわけ」
ほえー
「じゃ、説明はもういいわね。明日またここにきて。仕事もやめといて。奇界に連れていくから」
「分かった、約束な」
次の日。退職届を提出し、あのファーストフード店へと足を運ぶ。
「遅いんですけどーあんま待たさないでくれる?」
「あーはいはいごめんなさいー」
こいつ、、、
「で、奇界へ行くのはどうするんだ?」
「妖楼神社の鳥居をくぐるだけ」
妖楼神社とは、ここの近所にある寂れた神社のことだ。
「あそこか?確かに行ったことはないが、、、」
「早く行くわよ」
「ここか、、、」
いかにも何か出そうな雰囲気に少しだけ圧倒される。
「これ、もっといて」
渡されたのはよくわからんお札。
「じゃ、くぐるわよ」
「ああ」
淡い期待を胸に抱いて、鳥居をくぐる。
「?!」
とたん、周りの景色がぐにゃりと歪み、場所が変わっていく。
「なんだこれ、、、」
「すごいでしょ、こんなの、体験できないわよ」
周りを見渡すと、かぶき屋根と田んぼしかない田舎の小道。おまけに、セミがうるさく泣いている
「さ、いくわよ」
雪は巫女服を翻し、歩き始めた。
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