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週明けの朝、朝陽は職場に着くなり上司で教育係の坂下 直人の元へ向かった。
「おはようございます。先輩、ちょっと話したいことがあるんですけど……」
いつになく真剣な表情の朝陽に声を掛けられた直人は顔を上げる。
「何だよ、改まって」
「あの……先輩の友人に田仲 響さんっていますよね? 以前、合コンに参加できなかったっていう……」
「ああ、うん。いるけど?」
名前を出された直人は頷いた。
「実は、その人のことで相談したいことがあるんです」
「……アイツが何かしたのか?」
ただならぬ朝陽の様子に直人の表情が変わる。
「……確証があるわけじゃないんですけど」
朝陽は一度言葉を切り、慎重に話し始めた。
「俺の彼女、今……つきまといの被害に遭っていて」
「……え?」
話を聞いた瞬間、直人の顔から笑みが消える。
「もしかして、響がやってるのか?」
「証拠は無いんですけど…………その可能性を疑ってるんです。先週、俺が出張で関西へ行った日、弟に彼女の迎えを頼んだんです」
「うん」
「それで、彼女が職場を出たところで田仲さんに声を掛けられたみたいで……」
そこまで聞いたところで直人は何かを考えるように黙り込み、すぐにスマートフォンを取り出して画面を操作しながら朝陽を見る。
「俺の方からもアイツに確認してみる」
「先輩……」
「少し時間をくれ」
「分かりました、よろしくお願いします」
「ああ」
そう言うと直人はその場を離れていった。
その背中を見送りながら朝陽は小さく息を吐く。
(先輩が協力的で良かった……けど、田仲さんは真実を話してくれるのかな)
直人が協力的なのは良かったけれど、果たして相手が問われたことにきちんと答えるのか、朝陽はそれが不安で仕方なかった。
その日の仕事を終えた頃、朝陽が帰り支度をしていると直人が声を掛けてきた。
「藍島、今朝の話なんだけど」
そう前置きした直人は申し訳なさそうに眉を下げる。
「悪い。やっぱり響の奴、木葉さんのことが諦められなくて声を掛けるタイミングを窺ってたって認めたよ」
「……そうですか」
直人は気まずそうにしながらも本人から聞いた話を伝えていく。
「今日、もう少し詳しく話を聞いてくるつもりなんだけど……その前に確認させてくれ。アイツは一体何をしたんだ?」
「えっと……」
朝陽はこれまでの出来事を一つずつ話した。
「彼女の自宅の最寄り駅に現れたり職場の近くにいたり……。それから、俺の住んでいるマンションまで把握していて嫌がらせみたいにインターホンを鳴らすこともありました」
「……は?」
直人の顔から一瞬で表情が曇り、
「アイツ、そんなことまでしてたのかよ……」
「はい」
「本当にすまねぇ! 藍島」
直人は深々と頭を下げた。
「必ず止めさせるから!」
「先輩……」
「それと……直接謝罪もさせようか?」
その問いに朝陽は少し考えたあと、首を横に振った。
「……いえ、謝罪は結構です」
そして、はっきりとした口調で続ける。
「出来れば今後一切、彼女には関わらないでほしいです。ただ……田仲さん、彼女の会社の取引先相手なんですよね」
「ああ、そうみたいだな」
「だったら業務中まで関わるなというのは難しいと思うので……せめて、業務時間外は彼女に関わらないように伝えてください」
朝陽の言葉に直人は真剣な顔で頷いた。
「分かった。ちゃんと伝えるよ」
「ありがとうございます」
「本当に悪かったな」
「いえ。こちらこそすみません。先輩に嫌な役を頼んでしまって」
「いやいや、元はと言えば俺が悪いんだよ」
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直人は苦笑しながら首を振った。
「合コンの写真なんか見せたからさ。まさか、こんなことになるとは思わなかった。木葉さんにも謝っておいてくれ」
「はい。分かりました」
こうしてひとまず付き纏いの件は無事に解決し、朝陽は亜佑美が安心して日常を取り戻せると思っていた。
けれど、朝陽まだ知らなかった。
この件がまだ終わっていないことを。
「そっか、それなら良かったな」
亜佑美を職場まで迎えに行って帰宅するとマンションには何故か陽向が訪ねて来ており、帰すわけにもいかない朝陽は中へ招き入れた。
そしてひと息吐いてから朝陽は二人にも直人との会話を共有した。
「うん、本当に」
陽向と朝陽が喜び合う中、一人浮かない顔をする亜佑美。
「亜佑美さん、どうかしましたか?」
「え!? あ、ううん、何でも……。ただ」
「ただ?」
「あんなに悪質なことをしたのに、そんなに簡単に認めるのかなって……」
「……うーん、そうですよね。それは俺も少し引っかかったんですけど……でも、問い詰められて隠しておけないと思ったから話したんじゃないかって、俺は思います」
「朝陽くん……」
「ま、何にしてもこれでこの件は解決だな」
そう陽向が口にしたその時、朝陽のスマートフォンの着信音が鳴り響き、相手は直人から?
「もしもし?」
急いで電話に出ると電話口の直人はどこか焦った声で、
『藍島、木葉さんに付き纏っていた犯人は別にいる』
そう言い出した。
コメント
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寺島あおいです🌷 読ませていただきました。 朝陽くんが直人さんに相談するところ、真剣な表情が目に浮かぶようでした。それにしても、田仲さんが認めたのに「犯人は別にいる」って……! しかも直人さんの焦った声。亜佑美さんの「簡単に認めるのかな」という違和感、当たってたんですね。次がすごく気になります。