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第5話 『秘密のクリスマスデート』
――秘密の恋人たちの、特別な夜
街はすっかりクリスマス一色だった。
イルミネーションが瞬き、吐く息は白く、どこを見ても楽しそうなカップルばかり。
学校帰り。
クラスメイトに囲まれながら歩くあすたは、いつも通り愛想よく笑っている。
その少し後ろを、じおるは静かについて歩いていた。
——周囲から見れば、ただの仲の良い友達。
でも、校門を離れて人通りの少ない道に入った瞬間。
「……じおる、こっち」
そう言って、自然な動作で手を取る。
「っ……あ、あすたくん……外です……」
そう言いながらも、じおるは手を離さない。
むしろ、そっと指を絡めてきた。
「クリスマスなんだから、ちょっとくらい許せ」
じおるの耳が、じわじわと赤く染まる。
イルミネーションの並ぶ大通り。
人の多さに、じおるは少し落ち着かない様子だった。
「……あすたくん、とても楽しそうでしたね……」
「どうした? 嫉妬?」
「ち、違います……
……ただ……あすたくんが、モテるので……」
小さく、本音がこぼれる。
あすたは立ち止まり、じおるを見下ろした。
「安心しろ。俺の彼女はじおるだけだ」
じおるは一瞬、完全に思考停止。
「……っ……そ、そういうことは……
……外で言わないでください……!」
「外じゃなかったらいいの?」
あすたは笑いながらからかう。
「そ、そういうことじゃ…!」
じおるは顔真っ赤。
少し休もうと入ったカフェ。
向かい合って座ると、じおるは落ち着かない様子でカップを両手で包む。
「寒い?」
「いえ……ただ……
……あすたくんが、近いので……」
「今さら?」
じおるの顔がさらに赤くなり、視線が泳ぐ。
外に出ると、大きなクリスマスツリーが輝いていた。
人混みに押されて、じおるがあすたの袖を掴む。
「……はぐれそうで……」
あすたは何も言わず、手を強く握り直す。
「離さねぇよ」
その一言で、じおるの心臓は限界を迎える。
人の少ない場所で、あすたが小さな袋を差し出した。
「ほら。クリスマスプレゼント」
中身は、シンプルな手袋。
「寒いの苦手だろ」
じおるはしばらく黙り込んでから、胸にぎゅっと抱きしめる。
「……ありがとうございます……
……一生、大切にします……!!」
じおるもプレゼントを差し出す。
剣道バッグにつけられる小さなお守り。
「……怪我……しませんように……」
「ほんと、彼女だな」
「……か、彼女です……」
小さく、でも確かに。
帰り道、公園の端。
冷たい空気の中で二人は立ち止まる。
「じおる」
呼ばれただけで、じおるの肩が跳ねる。
「今日、一日ずっと可愛かった」
「……っ……だ、だから……
……そういうことを……」
言い終わる前に、
あすたがそっと額にキスをした。
一瞬。
でも、確かに。
「メリークリスマス、じおる」
じおるは顔を真っ赤にして、震える声で答える。
「……メリークリスマスです……
……あすたくん……大好きです……」
秘密だけど、
誰よりも甘い——
二人だけのクリスマスだった。
第6話 12/28 投稿予定