テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
対イヌガミ戦、三日目。
開戦前。
疲れ果てた身体は、気を失うように眠りに落ちた。
まぶたの裏に、やさしい風が吹く。
雨の湿り気も、血の生臭さも、どこかへ消えていた。
ウジャは、夢を見た。
あっ………
お母さんだ!
ウジャ、元気に育っているね…
優しい、包まれるそのトーン。
ウジャ、大好きなお母さんだよ……
ウジャは、走って掛け寄り、
お母さんに抱きつく。
お母さん…………
母親は、ウジャの頭をそっと撫でる。
そして、ひとつの物を優しく手渡す。
白く、真白く、光る、
フワッとして、それでいて、力強い、
そう、信念の心。
ウジャ、今まで辛い事も多かったね。
でも、人間は生きるうえで辛い事はいくらでもあるの。
それでも、ウジャは、自分の正しい信念を、
持って生きてほしいの。
あなたは、私の大切な娘です。
あなたなら、それが出来る。
愛してますよ、ウジャ………
お母さん!!!!!!!!!!!!!!
ウジャは泣いた。
そして、もらった。
愛を。信念を。
それは声にはならず、涙だけが流れる不思議な夢の中。
けれどその涙は、確かに心の奥の何かを洗い流した。
母親のぬくもりは、花の香りのようだった。
触れた腕の柔らかさ、髪を撫でる手の形。
遠い記憶のはずなのに、まるで昨日のことのように鮮明だった。
母の手から託された“信念の心”は、光の珠のようだった。
胸の中にすっと入って、熱を持ち、じんわりと広がっていく。
──これは、自分だけの武器だ。
目を覚ましたとき、ウジャの手は、まるで何かを掴んでいるかのように、しっかりと握られていた。
ウジャは立ち上がり、空を見上げた。
じいちゃん、ばあちゃん、お父さん、お母さん。
ありがとう!!!!
ウジャは微笑んだ。
その日の昼、ウジャは山を降りる。
長老屋敷に向かい、長老に面会を申し込む。
イヌガミの事を、伝える為に。
イヌガミ イヌガミ かぜまとう
かぞえりゃ 足音 六つ七つ
しかし、長老は面会を拒否する。
あさにまぎれし ひるにゃ笑う
よるにゃ 首が 八つ飛ぶ
「居もしない怪物に会うたなんざ、誰が信じるものか。」
しのばっけた しのばっけた
おやまのさきの かぜむこう
「村人の一人も見てないんじゃ。嘘八百、ホラ八千じゃわい。」
ウジャは、そのまま山を登って家に帰った。
しのばっけた しのばっけた
ねむるおやまの そのさきで
夜の帳は
その役知って
静かに渡す
276
#みんな見てね
ももは
307
ももは
190
wadaken1
106
蓮華帳
開くは地獄
釜の底には
刹那が眠る
蓮華帳
ウジャは山道を登りながら、小さく呟いた。
「わたしは、ウジャ。ウジャシリ。
勇気を持つ者の名……お母さん、ちゃんと持ってるよ」
その声は風に乗って、遠く、静かに流れていった。