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親友、奈美の自宅を初めて訪れた恵菜。
リビングに通され、ぐるりと見回すと、ソファーに夫の豪と、男性が背中を向けて座っている。
こちらに顔を向けられた時、思いもよらない人がいて、瞠目したと同時に、彼女の心臓がギュッと鷲掴みにされた気がした。
「相沢さん、ようこそ。どうぞ座って下さい」
豪が恵菜に、男性の横に座るように勧めてくる。
「相沢さん、こっ……こんにちは」
照れている表情で挨拶してくれたのは、谷岡純。
「……奈美の旦那さん、こんにちは。お邪魔します」
親友の夫の事を、どう呼んでいいのか、ちょっと迷ったけど、無難に『奈美の旦那さん』と呼んでみた。
「谷岡さん、先日は楽しかったです。ありがとうございました」
純に向けて軽く会釈をした後、恵菜は、おずおずと彼の隣に腰を下ろす。
(谷岡さんが来ているって分かってたら、もう少し、まともな服装にしたのに……)
急な奈美の誘いだったというのもあり、白のショートダウンにブラックのハイネックニット、ワンウォッシュのスキニーデニムといったワンマイルコーデで訪れた事を、恵菜は少しばかり後悔した。
メイクも、ほとんどしていない、スッピンに近い状態。
『ご近所コーデ』で、純の隣に座っているのが恥ずかしくて、顔が赤面してしまった。
「恵菜からタルトを頂いたから、紅茶を淹れたよ」
彼女を案内した後、キッチンでお茶の準備をしていた奈美が、ローテーブルにアールグレイとフルーツタルトを、それぞれの席に置いていく。
「相沢さん、ご馳走さまです」
豪と純の声がシンクロして、恵菜は、二人がよほど仲がいいと感じたのか、思わずクスリと笑ってしまった。
「奈美の旦那さんと谷岡さん、すごく仲がいいんですね」
「コイツとは、中学生の時からの付き合いなんで、純の事なら、俺は何でも知ってますよ」
純を横目に見ながら、豪はニッコリと微笑む。
「そうだ! 恵菜は私たちの結婚式に出席できなかったし、アルバム持ってくるから見てよ」
奈美がサイドボードの一番下の引き出しを開け、恵菜にアルバムを手渡した。