『Our Happiness Wedding』と金箔で記された白いアルバムを、恵菜は、一頁ずつ丁寧に開いていく。
食事に行った時、純が話してくれた、本橋夫妻の挙式の写真。
引き締まった顔立ちの彼が、白いベール越しに緊張している表情の奈美をエスコートして、バージンロードを歩いている写真に、『素敵……』と呟く恵菜。
指輪の交換、豪が奈美のベールを上げ、誓いのキスシーンなど、挙式のメインイベントの中で切り取られている花嫁は、美しくて尊い。
披露宴で、パステルブルーのドレスにお召し替えをした奈美の写真は、すごく可愛かった。
余興でのワンショットなのか、友人と奈美がピアノの連弾をしている写真も、美女二人で絵になっている。
(私も……出席したかったな……)
恵菜は、どことなく寂しそうに笑みを覗かせてしまった。
気付くと、恵菜の周りに本橋夫妻と純が集まり、昨年十月の結婚式と披露宴の出来事を話していた。
「まぁアレだ。バージンロードを歩いている時の純は、ガチガチに緊張してたよな」
「そりゃそうだろ。キミたちから大役をお願いされたんだし。緊張しねぇ方がおかしいだろ」
豪が揶揄いながらププっと笑いを零すと、純は不貞腐れながら反論する。
「でも、谷岡さんと一緒にバージンロードを歩けたのは、一生物の記念になりました」
奈美は純をフォローするように話に混ざってきた。
アルバムから顔を上げ、恵菜は改めてリビングを見回すと、壁やサイドボードに所狭しと飾られている夫妻の写真の多さに、唖然とした表情を浮かべている。
恵菜が結婚祝いでプレゼントした、レトロなデザインのフォトフレームも、サイドボードの上に飾られてあり、胸がいっぱいになる彼女。
チャペルの前で撮影された夫婦の写真と、メインテーブルで友人たちに囲まれている写真、奈美と母のツーショット写真が、くすんだゴールドの写真立てに納められていた。
恵菜の、疎外感を抱いている表情に気付いた奈美は、何かを言いあぐねているのか、唇を微かに震わせている。
「ねぇ、恵菜。今から私が話す事、思い出したくないかもしれないけどさ……」
「ん? なぁに?」
躊躇う奈美に、恵菜は努めて微笑んだ。
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