コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第三話「完全犯罪の実践」
🔪ツグミの標的
「……アイツを殺したい。」
ツグミが言った瞬間、スケアリーの口元が弧を描いた。
それは笑顔――だが、純粋な笑顔ではなかった。
「いいねぇ……ツグミくん。”その食材”は、しっかり熟成させたら極上になりそうだ。」
標的の名は、宮迫 雄二郎(みやさこ ゆうじろう)。
ツグミの過去の知人。かつての職場の上司だった男だ。
「で、どんな味がするの?」
スケアリーは興味津々に尋ねる。
ツグミは、一瞬ためらったあと、呟くように言った。
「……ドロッとしてる。腐りかけの肉の匂いがする。」
その言葉に、スケアリーの目が輝いた。
「おぉ、ツグミくん、いい感覚してるねぇ!」
「腐敗と発酵は紙一重。……つまり、”どちらに転ぶか”が料理人の腕の見せ所ってわけだ。」
スケアリーは、紅茶をひと口すすり、恍惚とした表情を浮かべた。
「さぁ、ツグミ。次の”調理工程”に進もうか。」
🔪ターゲットの確認
宮迫は、目立つ男だった。
脂ぎった顔、野太い声、体はがっしりしているが、腹が出ている。
肌には汗が滲んでおり、歩くたびに何かが腐ったような臭いがほんのり漂う。
「なるほど……”下処理”が必要だな。」
スケアリーは腕を組んで唸る。
「このままじゃ、臭みが強すぎる。まずは、余計な”脂肪”を落とそうか?」
ツグミは、スケアリーの言葉の意味がすぐには分からなかった。
「……脂肪?」
「そう。”余計なもの”がつきすぎてるんだよ、アイツには。」
スケアリーは、ふっと楽しそうに笑う。
「”恐怖”を絞り出して、スリムな味に仕上げよう。」
🔪第一の調理:追い詰める
スケアリーの”レシピ”はシンプルだった。
「まずは……宮迫くんの”安心感”を削ぎ落とそう。」
ツグミが標的の職場をこっそり覗くと、宮迫はいつものようにふんぞり返っていた。
「俺がいなきゃ、この会社は回らねぇ!」
「お前ら、もっと働けよ!」
威張り散らしながら、汗まみれの手でハンバーガーを頬張る。
「ふぅん……”俺は安全だ”って顔してるねぇ。」
スケアリーが楽しげに呟いた。
「じゃあ、”不安”を与えてみようか。」
🔪ターゲットの精神を崩壊させるスケアリー流「恐怖の下ごしらえ」
第一手、「侵入の恐怖」。
宮迫のロッカーの中に、見覚えのないメモを忍ばせた。
メモには、こう書いてある。
「お前、見られてるぞ。」
「さてさて、どんな反応を見せてくれるかな?」
宮迫は、最初は気にしなかった。
だが、二日目。
「お前の秘密、知ってるぞ。」
三日目。
「お前が寝てる間に、俺はお前の顔を見ていた。」
四日目。
「お前、もう手遅れだぞ。」
宮迫の顔色が日に日に悪くなっていった。
「おお~! いいねぇ! ほらほら、もう顔の脂肪が落ちてきた!」
スケアリーは大げさに拍手しながら、実況を始めた。
「見て見て、ツグミくん!”余計な油”が抜けて、素晴らしい”恐怖のエキス”が染み込んできてるよ!」
「この顔の血の気の引き方、最高! 目の下のクマが”熟成のサイン”だねぇ!」
ツグミは、スケアリーの異常なテンションに若干引きながらも、宮迫の顔を見つめた。
確かに、最初の傲慢な雰囲気は消えていた。
目はぎらつき、落ち着きがなくなり、肌は乾燥してガサガサになっている。
(……本当に”別の人間”みたいだ。)
「さて、”仕上げ”に入ろうか。」
スケアリーは、不敵に笑う。
🔪第二の調理:「恐怖の完成」
ある夜、宮迫は自宅で酒をあおっていた。
「クソッ……! 誰なんだ、アイツは……!!」
恐怖と不安が彼を支配していた。
そこへ、窓ガラスがカタカタと鳴る。
「……!」
宮迫はビクッとして立ち上がる。
だが、そこには何もいない。
カタカタ……カタカタ……
また、音がする。
「……クソッ!!」
宮迫は窓を勢いよく開けた――
そこに、誰もいない。
「……気のせいか……?」
宮迫が安堵しようとしたその瞬間――
後ろから、冷たい声が響いた。
「”恐怖”の味、どう?」
宮迫は絶叫しようとした。
だが、ツグミの手がすでに彼の喉元を締め上げていた。
🔪スケアリーの食レポ「恐怖の完成」
「ああ~~!! いいねぇ!”この瞬間”が最高なんだよ!!」
スケアリーは恍惚とした声を上げた。
「まさにスケアリーイズムだね。」
「恐怖が一番”熟成”される瞬間、それは”死の直前”!」
「”食材”の最後の抵抗、”脂肪”が抜け切って”純粋な絶望”だけが残る、この瞬間!」
「うん、最高の味わいだねぇ……!!」
スケアリーは目を細め、満足げに頷いた。
「さあ、ツグミ。最後の”味見”をしてごらん。」
ツグミは、迷わず宮迫の首に力を込めた。
「――ッ!!」
宮迫の体がピクリとも動かなくなる。
ツグミは息を荒げながら、手を離した。
スケアリーは、優しく微笑んだ。
「おめでとう、ツグミ。”最高の料理人”になったね。」
次回 → 「恐怖の余韻」