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不倫女を綾子さんの立場の主人公にした方が本当の意味での復讐,報復な感じがする。自分の不倫の為に子供が犠牲者になり子供を亡くした母親がどれだけ辛くて悲しむかを実感させられるから。でもそこまでの気持ちに慣れたらだけど無理か?
あぁ〜❣️私も本当にチーム仁さん✨👍😆のドラマが見た〜い👀💓✨
それにしても仁さん案の同時進行やあやつの起用も斬新で驚きだけど、悦子さんの綾子さんに寄り添う心配りが半端なく優しくて涙腺崩壊しそう😭 あとは土曜日に初お目見えの綾子さんに、理人君へのおもちゃと綾子さんへのエンジェルネックレスをプレゼントして理人君の供養と2人の距離も一気に縮めて欲しいなぁ😘😊💞❣️🎶
翌日、都内の高級ホテルの一室に松崎隼人がいた。隼人はスマホで電話中だった。
「ヤバいぞ高畑、警察が嗅ぎまわってる。うん、そう、あの時の女が被害届を出したらしい。お前薬の量が足りてなかったんじゃないか? ちゃんと盛ったのか? とにかく俺は家に帰れなくて参ったよ。うん、そうだな、お前も気をつけろよ。とにかく警察が来ても絶対に喋るなよ、わかったか?」
隼人は電話を切るとスマホをベッドの上に放り投げた。
「ったくどーしたらいいんだっ、このままじゃ俺はもうおしまいだ。どーしてくれるんだクソがっ!」
隼人はベッドに腰かけると両手に顔を埋めた。
そこでまたスマホが鳴った。
隼人はビクビクしながらスマホに表示された名前を見る。名前を見てしばらく放置したが音が鳴りやまないので仕方なく電話に出る。
電話の相手は女優の白鳥ほのかだった。
「もしもし」
「隼人? あーやっと出た。ちょっとーどうなってんのよー、次の月9のドラマ断ったって本当?」
「ああ」
「なんでそんな事するのよー、次は私を主演にしてくれるって言ったじゃない」
「そんな約束した覚えはないなぁ」
「ちょっ、それはズルくない? ただでさえ最近チョイ役しかくれないくせに。もうそんな態度ばかり取ってると全部マスコミに言っちゃうわよ、二年前の事!」
「ハッハー、今さら言ったって売れないオバサン女優の売名行為としか思われないよ、残念だったな」
「最低っ! 本当に週刊誌に言ってやるからっ! それにあんた最近新人女優の星羅を狙ってるんですってね。いい加減にしなさいよ! あたしをバカにしたらただじゃおかないんだからね」
「星羅ちゃんは若くてかわいいからそりゃ追っかけたくなるさ」
「ハァッ? 何ソレ信じられない。もう本当に週刊誌に全部暴露してやるから! 結婚するするって口ばっかりだしあんたを信じて待ってたら30になっちゃったじゃないのよっ! 覚えてなさいよ! あんたなんて地獄へ落としてやるんだからっ」
ガチャン
「ヒステリーババアは相手にしないに限るな。あー早く星羅ちゃん来ないかなー、若さで癒してもらわないと気がおかしくなりそうだ」
その時ノックの音が響いた。
「お、来た来た」
隼人は玄関へ行きドアを開ける。そこにはサングラスをかけた今大人気の新人女優・星羅が立っていた。
星羅は身体にフィットした黒のニットワンピースを着ている。
「先生こんにちは」
「いらっしゃい、待ってたよ星羅ちゃん」
「今日はよろしくお願いしまーす」
「こちらこそよろしく! じゃーこっちに来て椅子に座って下さい」
「あの先生? 本当に私を今度の月9ドラマの主演にしていただけるのですか?」
「もちろん、だから呼んだんだよ」
「フフッ、やっぱりそうなんですね。嬉しいです。ありがとうございます」
「僕はね、いつも事務所に持ちかける前にまずは本人と話をしてからキャストを決めるようにしているんだ。やっぱり直接話してやる気があるかどうかを見極めないとね。まあでもまずはざっくばらんにリラックスしてワインでも飲みながら話をしましょう」
そこで隼人は星羅に赤ワインの入ったグラスを渡す。
「高そうなワインですねー」
置かれているワインの瓶を見て星羅が言った。
「ワインは最高級のものじゃないとね。じゃあ乾杯しようか?」
「何に乾杯ですか?」
「これから二人で作り上げていくドラマティックな出来事にだよ」
「フフッ、それってドラマの事ですよね?」
「もちろん」
「「乾杯ー!」」
星羅は美味しそうにワインを飲み干す。
「で、先生からのご質問はどんな事でしょうか?」
「うーん、まず最初に聞きたいのはこのドラマにはかなり激しいベッドシーンがあるけれど大丈夫?」
「自信はあまりありませんが精一杯頑張ります」
「あれ? 自信はないの?」
「はい、星羅はずっと女子高育ちでそういうのがあまり経験ないので……」
「星羅ちゃんまだ21歳だもんね。でもドラマの役柄は経験値が少ない女の子の設定だからそのまま演じれば大丈夫だと思うよ」
「それなら少し安心し……」
そこで星羅の目が突然虚ろになる。
「せ、先生……なんか急に凄く眠くて…それに身体が熱くて……う、うぅんっっ、どうしちゃったんだろう私」
「大丈夫かい? ちょっと横になった方がいいよ…こっちにおいで」
「あ、歩けない……あれ? 目がグルグル回って……」
「大丈夫、僕が支えて連れて行ってあげるから」
「スミマセン……せ…んせい……」
そこで隼人は星羅をベッドに寝かせると上に覆いかぶさり首筋に唇を這わせていく。
「せ、せんせい……あっ……あぁんっっ……なんか身体が火照って変…です……あっっ」
「大丈夫、我慢しないで。今僕が治してあげるからね」
「…………あっっ…あぁんっっ」
チュッ チュパッ チュッ
やがて星羅の声は静かになり室内には男の荒い息遣いと卑猥な音だけが響き渡っていた。
その頃仁はテレビ局にいた。会議室で悦子に原稿を読んでもらっている最中だった。
悦子が読んでいる間手持無沙汰だった仁はしばらくスマホをいじっていたがその後トイレに行って戻って来ると窓の傍へ行き外を眺める。
その時悦子が唸った。
「うーーーん仁ちゃん最高! バッチリだわ。やっぱりあんたは天才よー」
「おー、今回は一発OKか?」
「うんうん、お見事! この『同時進行』っていう発想は今までのドラマにはなくて凄くいい案だと思うわ」
「ハッハー、やっぱそうだろう? 最初は普通に書いてたんだけどよー途中で閃いたんだ」
「いい、いい、凄くいい! じゃー早速この原稿北山ちゃんに回して脚本起こしてもらうわ。でね、キャストの件なんだけどー」
「お、それなんだけれど一つ注文出していい?」
「あら、珍しい、あんたがキャストの口を挟むなんて」
「まぁ今回はちょっと特別でさ……」
そこで仁は悦子に手招きすると悦子にだけ聞こえるように耳打ちした。
それを聞いた悦子は目をまんまるに見開く。
「ハッ? それマジで言ってんの?」
「ああ、面白いだろう?」
「面白いって言うよりも逆に騒ぎになったらマズいんじゃないの?」
「ケッ、そんなの怖がってたら大賞は取れねーぞ」
「ほんとあんたって抜け目ないわねー」
「だってよー、それくらいしないと腹の虫がおさまらねーんだよ」
「気持ちはわかるけどー、まあいいわ、上にちょっと相談してみる」
「頼んだぞ」
「で、綾子さんからの許可は取れたの?」
「それはこれからだ。今度の土曜に軽井沢に行って来るよ」
「頼んだわよー、もし駄目ーなんて言われたらあたしの首が飛ぶかもしれないんだからねーよろしくー」
「おう、任せとけって! じゃあ俺そろそろ行くわ。何かあったら電話してって北山ちゃんに伝えておいて!」
「了解、あっ、ちょっと待って仁!」
悦子はドアに向かう仁を慌てて引き止める。まだ何か言いたい事があるようだ。
悦子は仁の目の前に来ると普段は見せない優しい表情をしてから言った。
「相手は可愛い盛りのお子さんを亡くして傷ついた女性よ、くれぐれも優しく接してね」
「お? おう……どうした急に?」
「うん、ちょっと色々考えちゃったのよ。ほら、うちって子供いないでしょう? 本当は欲しかったんだけど出来なかった。未婚ならまだしも結婚してるのに出来ないんだもの。だから女性に生まれて一番不幸なのはきっと自分みたいな女かなーってずっと思ってたんだ。でも綾子さんの話を聞いてそれは違うって思ったの。彼女は産んだ後に失ったのよ、それってもっと悲しいよなーってね。だってさ、愛する子供を一度腕に抱いたのよ。可愛くって小さくって愛おしい我が子の温もりを直に感じたのよ。これからの人生はその温もりと共に歩んで行くんだーって思った矢先に失っちゃったのよ? そう思ったらなんか急に泣けてきちゃってさ……他人の私が泣けるんだから本人はどんだけ悲しくて辛かっただろうって。だからね、仁には綾子さんの事をしっかり支えて欲しいなって思ったんだ」
仁は悦子の真剣な眼差しを見て安心させるように穏やかな笑みを浮かべた。
「大丈夫だ、わかってるよ。心配してくれてサンキューな。お前は本当にいい女だなー高太郎の嫁にしておくには勿体ないよ」
「フフッ、だからって仁の嫁はごめんですぅ」
「ケッ、誰が俺の嫁にするって言ったよ、こっちの方が願い下げだっ」
「あら―勿体ない、極上のイイ女なのにぃーっ」
「ハハハ」
「フフフッ」
二人は思わず声を出して笑った。
「じゃあ俺帰るわ」
「ご苦労様でしたー。また詳細が決まったら連絡するわ」
「おうっ」
テレビ局を出た仁は銀座へ移動するとおもちゃの専門店に入る。
そこで何かを探し始めた。
(理人君にするお供えするっていったらやっぱりおもちゃだよな?)
その時その店には似つかわしくない薄茶色のサングラスをかけた黒ずくめの客を見て慌ててスタッフが近付いて来た。
「何かお探しでしょうか?」
「あ、あのお供え……じゃなかった3~4歳の男の子が遊ぶような物ってどんなのですかね?」
「男のお子様でいらっしゃいますね? でしたらこちらなんかいかがでしょうか?」
スタッフは仁を木のおもちゃコーナーへ案内した。
そこには天然木で作られた車や電車のおもちゃが並んでいる。一つ一つ丁寧に作られた良品だ。
車は子供の手でも握りやすいよう丸みのあるフォルムで電車はマグネットで連結出来るようになっていた。
(お供えとして飾るにはシンプルでいいかもしれないな)
そこでスタッフがさらに言った。
「あとは、今後も長く使える物としてブロックや知育玩具なんかもオススメですよ」
(今後は長くは使えねーんだよなー)
「あ、じゃあこの木の車にします。これをプレゼント用でお願いします」
「ありがとうございます。では今お包みしますのでレジの方までどうぞ」
その後会計を終えてから仁は綺麗にラッピングされたおもちゃを受け取った。
おもちゃ専門店を出ると今度は老舗デパートへ向かう。
仁は綾子にも何かプレゼントを買おうと思っていた。
(女性と言えばジュエリーか? でもいきなり知らないおっさんからジュエリーをもらったら引くかなー?)
そう思いながら上の階の宝飾品売り場へ向かう。
平日の午後いい歳をした黒ずくめの男がひと気のない宝飾品売り場をうろついているので皆が注目している。
しかしその客が有名作家の『神楽坂仁』だとは誰も気づいていないようだ。
その時品の良いベテランスタッフが笑顔で仁に近づいてきた。
「いらっしゃいませ」
「どうも」
「お探しのものがあるようでしたらなんなりとお申し付け下さいませ」
「ハァ……いや友人へのちょっとしたプレゼントなんですが何にしていいか全くわからなくて」
「女性の方でしたらネックレスが無難かもしれませんね。ネックレスならサイズも関係ないですし」
「なるほど……どういったのがいいんでしょうかね?」
「その方の好きなモチーフはご存知ありませんか? 例えばハートとかフラワー、十字架なんかも人気ですが…」
そこで仁は悩む。道の駅で会った時綾子はアクセサリーを着けていなかったような気がする。だから何が好きなのかがわからない。
(色は確か白系が好きだったような? 白じゃ色だしな―、モチーフかー、なんかねーかな?)
その時仁はハッとする。
「エッ、エンジェル、天使! 天使の形の物なんてないですよねー?」
「エンジェルでしたらこちらにございます。ちょうど先週入荷したばかりで……」
(あるんかーい)
仁は思わず心の中で突っ込みを入れる。まさかあるとは思わなかったからだ。
(さすが老舗デパートだ。やるな……)
スタッフに案内され仁はショーケースの前に移動した。そこへスタッフが商品を出してくれる。
トレーの上に置かれたネックレスには小さなエンジェルの形をしたトップがついていた。とても丁寧な作りのエンジェルだ。エンジェルの胸には質の良いダイヤモンドが一粒光っている。
あまりにも上品で繊細なデザインなのでアンティークの銀細工のようにも見えるが素材はプラチナだった。
(似合いそうだな…)
一目見て仁は気に入った。
「これいいですね、じゃあこれをいただきます。プレゼント用でお願いします」
「ありがとうございます。そちらにおかけになってお待ち下さい。今お会計もお持ちしますので」
仁は言われた通りソファーに腰を下ろした。そしてそのネックレスを綾子が着けた時の姿を想像する。
その時仁の頭には白いフワフワのVネックのセーターを着た綾子がこのネックレスをつけて微笑んでいる姿が思い浮かんだ。
その時スマホが震える。仁が確認すると悦子からメッセージが届いていた。
【仁ちゃん♡早速獲物が引っかかったわよ。だからその方向で行くのでよろしくー♡】
(あいつ仕事早いな)
仁はニヤリと笑うと悦子に返事を送る。
【ありがとなー。色々と楽しみだぜぃっ】
その時スタッフが会計伝票を持って来たので仁はカードを渡した。