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偉猫伝~Shooting Star

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偉猫伝~Shooting Star

4 - 第4話 初めまして我が家?②

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2025年05月29日

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『ほら寒いだろ? 身体を暖めないとな』



閻魔な男が固まってるオレ達を、強制的にある場所へと移動させる。



途端に襲い掛かる灼熱の熱気。



その発生源は赤く、妖しげに揺らめいていた。



これぞ焦熱。正に煉獄の業火だ。



その篝火の中心部に触れるでもすると、オレ達の身体はおろか、魂までも未来永劫焼き尽くされる事になるだろう。



「わぁ……暖かいね」



「うん……ママが傍にいるみたい」



それは離れてるからそう感じるだけだ。



もっと危機感を持て。自分を見失うな。



『ほぉぉ、こまかくてむぞかのぉ』



突然鳴り響く掠れたダミ声に、兄弟達はおろかオレまで緊張で身体を震わせてしまった。



思いっきり訛ってんじゃねぇぇ!



祖父とは聞いてはいたが、見ると本当に棺桶に片足突っ込んでそうなしわくちゃだ。



末期の酒なのか、ワンカップ片手に笑みを浮かべる翁は、まるで冥府の渡し守カロンを彷彿とさせていた。



怯える兄弟達を尻目に、カロンは更に調子にのってきた。



『酒が好きそうな顔じゃのう。ほれ呑むかぁ?』



酒呑童子も裸足で逃げ出しかねない程の、身体中に幾星霜こびりついた酒気を漂わせながら、手に持ったワンカップをオレ達に近付けてくるカロン。



息が詰まる。



「恐いよぉ!」



「いやぁぁぁ!」



兄弟達はカロンの包囲網に、既に阿鼻叫喚だ。



オレだからこそ冷静に事態を把握してはいるが、これはちとマズイ。



絶体絶命の大ピンチに追い込まれたって訳だ。



そんなオレ達を狡猾な看守のように、老害なカロンは更に囃し立てるのだ。



『おぉ喜んどる喜んどる』



黙れ呆け。勘違いも甚だしい。



焦熱地獄の次は叫喚地獄が待ち受けていたとは……。



「きゃあぁあぁぁぁ!!」



「うわぁぁん! ママぁっ!!」



オレ達の悪夢は終わらない。



正に奈落の一歩手前、その時だった。



『ちょっとじいちゃん! 変なの飲ませようとしないでよ!』



直前でカロンを止めてくれたのは。



助かった?



まるで地獄に垂れてきた蜘蛛の糸。オレは不覚ながら、この女が救いの女神に見えてしまったのだ。



だが心奪われたのはほんの一瞬。まだまだ予断は許さない。



ここは地獄。まだ天国ではないのだ。



獄卒にも気まぐれはあろう。



『怖がってるからあっちいって』



女神の鶴の一声で、カロンは物悲しそうに引っ込む。



同情はしないが、老人とは何時の時代も哀しい存在だ。



『は~いもう大丈夫よ、怖かったねぇ』



女の暖かい掌がオレ達を包み込む。



「暖かい……」



「ママみたいだ!」



単純な兄弟達はすっかり懐柔された感があるが、オレはそうはいかない。



これは孔明の罠だ。



『ミルク温めてきたよぉ』



感傷に浸る間も無く、ミーノスが白い容器に並々注がれたミルクを持って躍り出てきた。



カロンの出番はもはや皆無。視界にすら映らない。サヨナラだ。



『さあ沢山飲めよ』



オレ等の眼前に置かれる容器は、正に真珠の湖畔。オレはゴクリと固唾を呑み込んでいた。



しかしこれに薬を盛られている可能性は否めない。



「わぁ~美味しそう……」



兄弟達は目を輝かせる。現金な奴等だ。



「いただきま~す!」



「ママのおっぱいに似てる……かな?」



そう、先ずは毒味役が必要。科学は常に尊い犠牲の上で成り立ってきたのだ。



オレのアカシックレコード並みの情報量が網羅されている大脳は、瞬時に最善の回答を導き出す。



“安心安全を確認してから頂く”



やはりオレは頭が良い。



「美味しい!」



ふん、どうやら薬は盛られてはいないようだな。



兄弟達のがっつく姿を目の当たりにし、オレは危険が無い事を確信。



そうと分かれば、兄弟達ばかりに甘い汁を吸わせる訳にはいかない。



お前の物はオレの物。オレの物もオレの物だ。



「ちょっと! 割り込んで来ないでよ」



夢中になってた兄弟達の間に割り込み、顔を突っ込むオレに不満の声が上がるが構う事はない。



思う存分、最後の一滴まで頂く事にする。



口中に拡がるハーモニーはヨーモニー。



旨い……。牛のミルクがこうまで絶品だったとは。



温め具合も申し分無い。



ミーノスを褒めてやってもいい位だ。



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