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「ああ、半年くらい前から働いてもらってるぞ」
「へえ、航平にコキ使われて半年も辞めないでいてくれてるの? 大学生かな? 可愛いね」
「……に、にじゅうご、です」
え? と、目の前の綺麗な顔面は不思議そうに顔を傾ける。
「優陽。天野さんは二十五歳だ」
(やっぱり、優陽って言ってる……)
「……ご、ごめんね天野さん! 凄く若くて可愛らしく見えたから」
「い、いえ」
正直そんなことは果てし無くどうでもいい。
いや、どうでもよくはない。自分でも女としての色気が乏しすぎる点はとても、とても気になってはいる。 の、だけれど。
「優陽、天野さんビビってんだろ、あんま近寄んな」
「え? ああ、もしかして俺のこと知ってくれてる?」
あまりにも軽く聞いてくるものだから。
「い、いや知ってるも何も知らない人ってあんまりいなくないですか!?」
柚はついつい、また大声を上げてしまったのだ。
そう、彼は森優陽(もり ゆうひ)
メディアの言葉を借りて今をときめくとでも言えばいいのか。
動画配信サイトから飛び出してきた彼は、とにかく大人気シンガーソングライター。
ハスキーだけれど、それでいて艶のある甘い歌声。
透き通るようなアッシュブラウンの髪色がトレードマークで。その髪色の抜け感に負けない存在を放つ、透明感抜群の陶器のような白い肌。
かと思いきや、逞しく目を引くいわゆる細マッチョな長身。
そして何より、その顔面だ。
目鼻立ち、全てが整っているって奇跡じゃない? なんて評判で、世の女性を虜にしている。
おまけに人当たりもよくて、和やかで紳士的だとかなんとか。
もうそんな男性が素敵な声でたまにはラブソングだって歌っちゃったりするんだから。
世の中やっぱり持ってる人は持ちまくってるのだ。