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歪 な 心

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歪 な 心

1 - 甘 い 、 苦 い 、 ほ ろ 苦 い

♥

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2024年02月14日

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「 大っ嫌いです、先輩 」


甘い


苦い


ほろ苦い


青春の一頁なんて破ってしまおう。


















「 華はやっぱ彼氏に渡すんでしょ? 」


「 当たり前じゃん 笑 」


教室の真ん中で頬を紅く染める少女に苛立ちを憶える。


羨ましい

憎らしい

恨めしい


彼女が作る甘いチョコレートを私の好きな人が貰って彼女にまた恋をする。


私だけが邪魔者の様に


ふたりの世界は甘く熔けてゆく。


昨日の夜、徹夜をしてまで不器用也に頑張って作ったチョコレート。


百円ショップで売っている様な包装袋で綺麗に包まれている。


友達になんてあげやしない。

他の男にもあげやしない。


貴方だけ、彼だけの為に、

作ったの。


放課後まで何と言って渡そうか、其ればかり考えていた。


義理チョコだなんて嘘は付けない。

本命チョコだなんて馬鹿げた事は言えない。

接点なんて0に等しい。


さて、どうしようか。


授業なんて聞いてないも同然で、あっという間に放課後を知らせるチャイムが校舎に響いていた。


何時もに増して雑音が多かった。


男子のソワソワした空気感

女子の紅く染まる頬

私の独り煩く騒めく心音


何れも私の思考を邪魔してくる。


彼女が彼にピンクのリボンで結われた袋を渡した。


嗚呼、見てしまった。

見なきゃ良かった。

逃げてしまえば良かった。


後悔ばかりが募りゆく。


彼女の身体は彼の腕の中にあって、艶やかな唇が重なった。


ひとつ上の先輩はどうにも大人びて見えた。


「 友達がチョコ渡すの応援しに行くので少し待ってて下さい! 」


あの子の友達も好きな人と結ばれて幸せハッピーエンドだろうな、なんて屑の様な思考。


馬鹿げている。


「 あの! 」


馬鹿だった。


声なんて掛けて、結末なんて最初から分かっている様なモノなのに。


「 何? 」


馬鹿でもいい。


貴方が好きなだけ。




私は、屹度、何も悪くないでしょう?




「 えっと 」


喉奥に張り付いて剥がれない言葉達。


口にしたのは頭に浮かんだ言葉とは正反対だった。








「 大っ嫌いです、先輩 」








其れだけ口にしてチョコレートの事なんて忘れて走った。


本当、馬鹿だ。


取り残された先輩の顔なんて見る事は出来なかった。


見られない。


見たくない。


貴方なんて、大嫌いだ。




誰も居ない暗い家で独り、黒光る包丁を取り出した。


夜通し胸を踊らせながら作った癖に肝心の彼には届かなかったチョコレートを睨んで、


突き刺した。


歪なチョコレートは私の心に酷く似ていた。


青春の一頁なんて有りやしないモノ、最初から破ってしまえば良かった。


否、今からでも遅くないなら、


破ってしまおうか。










貴方への恋心は

甘くて、苦くて、ほろ苦い。













𝐹𝑖𝑛.


歪 な ハート

甘 い 、 苦 い 、 ほ ろ 苦 い




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