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#ハッピーエンド
芙月みひろ
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天馬くんと別れてから、僕と葵は買い出しへと再度歩を進めた。
が、葵の機嫌の悪いこと悪いこと。でも、気持ちは分かる。あそこまで『ダサい』と言われたんだ。腹立つのも仕方がない。僕でさえそうなんだから。大切な葵のことを馬鹿にされて。
しかし、まさか二人があそこまで険悪な仲だったなんて。
それに、どうも気になるんだよな。天馬くんの捨て台詞が。
『覚えてろよ』
あれはどういう意味だったんだろう。悪いことが起きなければいいんだけど。
「――ごめんね、憂くん」
「なんで葵が謝るのさ。むしろ、僕こそごめん。加勢すべきだったのかもしれない。彼氏として」
「ううん。しないで良かったの。あの人、ちょっと危ないから」
「危ない? 何が? 性格が?」
「そんな感じだけど、今はあんまり言いたくない。だって――」
だって今日は憂くんと一緒にパーティーを開くんだから、と。いつもと変わらない笑顔を見せてくれた。
「――そうだね。よーし! じゃあ僕も頑張るよ荷物持ち! 葵じゃ持ちきれないくらい買おう! お菓子とか色んなやつを!」
「ありがとうね、憂くん。あー、やっと気分が回復してきた。もう二度と会いたくないわアイツなんかに!」
「そうそう。嫌なことは早く忘れるに限るからね」
「うん! 忘れる! 夏休みの宿題のことも全部!」
「いや、ダメ。それは忘れちゃダメ。しっかり計画的にこなしていこう。少しだったら手伝うから」
「えー! やっぱり手伝ってくれるんだあ! やっぱり持つべきものは幼馴染の恋人だねえー」
「そ、そうだね。あははっ」
なんだろう。元気になったらなったでまた別の問題が発生したような気がするんですが。
「しっかし、やっぱり暑いわねえ」
「ちょっ――!!? 葵! 待って!! すごく待って」
「え? 何が?」
先程と同じく体操服をパタパタさせた葵だったが、天馬くんがいなくなって気分が軽くなったのか。はたまた油断していたのかは分からない。
分からないけど、これだけは確かだ。さっきとは比べものにならないくらいTシャツを捲り上げてパタパタし始めたのだ。
しかも、横からでもハッキリと見えてしまったというのに、向こうから歩いてきたスーツ姿の男性は驚きのあまり目を丸くしていた。が、その後すぐに恍惚の表情を浮かべながらニヤニヤ。
あの人、葵の胸を全部見たな。それを見ていいのは僕だけなのに。くっそー!!
「……あ、あのさ、葵? 非常に言いづらいんだけど」
「何よ改まって。そんなことよりも早くお菓子とか色々買いに行こうよ! 赤点回避パーティーのために! それから鈍器ホーテにも行って、タスキも買うの! 『今日の主役』って書かれてるやつを!」
「そ、そうだね。あははっ……」
い、言えない。知らない男の人に大事な部分を全部見られただなんて言えない。
ただ、ひとつ言いたい。
今のお前が買うべきなのは『今日の主役』と書かれたタスキじゃなくて、『私は痴女です』と書かれたやつだと。
絶対に売ってないだろうけど。
「とりあえずさ。これからは外出する際には必ずブラを着けてくること。いいね?」
「えー、だってあれ、結構煩わしいんだよ? 締め付けられるっていうか。男子には分からないかもしれないけど」
「それでもダメ。絶対にダメ。ダメったらダメ」
「でも、面倒くさいんだけど。いいじゃん休みの間くらいは。せっかくの夏休みなんだから好きにさせ――」
「面倒だとか言わないの! 僕がダメージを受けるから! とにかく! その無防備な性格をなんとかしなさい!!」
「わ、分かった……」
僕のあまりの圧に気押されたのか、葵はしぶしぶながら約束してくれた。
また他の人に葵の胸を見られてたまるかっていうの! 見ていいのは僕だけなんだから!! 特権なんだから!
【続く】