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第二章:覇者の威圧感

(※本人無自覚)と黒騎士の降伏​ゴブリンを倒した(正確には、勝手に消滅させた)後も、悠真の混乱は収まらなかった。

​「ええと、もう一回確認だ。僕がパンチを空振りしたら、なんかゴブリンが塵になった。つまり、僕はとんでもない力を手に入れた……ってこと、だよね?」

​いじめられっ子として培ったネガティブな思考は、「きっとこれは夢だ」「気のせいだ」「たまたまゴブリンが病気だったんだ」と、あらゆる角度から自己否定を試みた。

​しかし、現実は続く。

​森を彷徨い歩くうち、彼はすぐに次の“強敵”に遭遇した。

​「グルルルルル……」

​それは、体長が人間の倍以上もある、巨大なウェアウルフだった。鋭い爪と、筋肉質の体躯。咆哮一つで周囲の木々が揺れる。

​(う、嘘だろ……。ゴブリンが雑魚だとしても、これは絶対ヤバいやつだ!逃げなきゃ!)

​悠真は、背を向けて逃げようとした。だが、足が石のように固まって動かない。極度の恐怖で、身体が制御不能に陥っていた。

​(動け!動けって!このままじゃ食い殺される!)

​恐怖、緊張、絶望。それらがごちゃ混ぜになり、彼の全身からドロドロとした黒いオーラとなって立ち昇る。それは、悠真自身には全く見えていない。

​ウェアウルフは、そのオーラを見た瞬間、全身の毛を逆立て、一歩後ずさった。

​「な……なんだ、この重圧は……!? 空気が、凝固している……」

​ウェアウルフから見ると、悠真はただ立っているだけではない。まるで、世界の法則そのものを掌握し、**「お前はここにいていい」と許可を与えているかのような、絶対的な存在に見えたのだ。悠真の顔には恐怖に歪んだ表情が浮かんでいるが、ウェアウルフにはそれが「慈悲深いが、逆らえば即死の王の微笑」**に見える。

​ウェアウルフ:「くっ、このお方こそ、伝説に謳われる**『覇者の威圧感』**を放つ存在……! こんな次元の違う存在と戦うなど、世界の摂理に反する!」

​ウェアウルフは、戦意を完全に喪失した。その場に跪き、前足を地面に叩きつけて、平伏した。

​「お、お許しください!偉大なるお方!どうか、この愚かな獣を、あなたの配下としてお使いください!」

​悠真:「え? はい?」

​状況が理解できない。僕がただ、恐怖でガチガチになって立ち尽くしていただけなのに、なぜ強そうな獣が勝手に降伏しているんだ?

​その後、ウェアウルフは丁寧に悠真を案内し、魔王族の支配する国境近くにある人里離れた廃墟へと導いた。

​そして、その廃墟で、悠真は最初の人間配下と出会うことになる。

​廃墟の広間。そこに、一人の大柄な騎士が立っていた。全身を黒い鎧で包み、威圧的な長剣を携えている。

​黒騎士アルフレッド。元は魔王族の精鋭部隊の副隊長だった男で、その実力は一国の軍隊に匹敵すると言われる超実力者だ。

​アルフレッドは、悠真の姿を一瞥するなり、警戒心を露わにした。

​アルフレッド:「貴様が、この一帯で不気味な気配を放っているという男か。私は魔王軍の……」

​悠真は、再び恐怖に襲われた。今度は騎士だ。絶対に逃げられない。

​(ま、魔王軍!? 僕はもう終わりだ。こんな強そうな人に逆らえるわけがない……!)

​悠真は、緊張のあまり、メガネを指で押し上げた。これは、彼が極度に緊張したり、困惑した時に無意識にする癖だった。

​その瞬間、悠真から発せられるオーラが、恐怖と困惑の波となってアルフレッドに直撃した。

​アルフレッド:「な、なんだ、この波動は……!? 怒りか? 悲しみか? いや、これは、『世界を背負う王の、深すぎる孤独』……!」

​アルフレッドの目に映る悠真は、メガネを押し上げ、まるで「この世界の全ては、私一人が処理するしかない」と孤独に耐えている、究極の覇王に見えていた。

​アルフレッド:「くっ……! 私は何たる不覚! このお方の孤独を理解できずに、ただの敵として対峙しようとしたとは!」

​悠真がただの恐怖でビクビクしているとは、微塵も思わない。アルフレッドは、長剣を地面に突き刺し、膝をついた。

​アルフレッド:「我が名はアルフレッド。愚かな私は、魔王族の圧政に疑問を抱きながらも、ただの犬として生きていました。しかし、今、真の王と出会った!どうか、この不肖の身を、あなたの剣としてお使いください!」

​悠真は、ポカンと口を開けたまま固まった。

​「え、あ、その……。あの、僕は、ただの……」

​「謙遜など、されなくとも結構です!」アルフレッドは感極まった声で続ける。「あなたのその**『全てを承知しているが故の静かな瞳』**、しかと拝見いたしました!この腐りきった世界を、どうかあなたの御力で浄化してください!」

​こうして、いじめられっ子の佐倉悠真は、何もしていないのに、ウェアウルフと、魔王族の精鋭である黒騎士アルフレッドを配下として手に入れてしまった。

​悠真:「(ええと、僕は何もしてないけど、とりあえず、この人たちめちゃくちゃ強いよね?……つまり、僕が最強ってことなのかな?)」

​悠真の自己肯定感はまだゼロのままだが、周りの人間や魔物があまりにも勝手に勘違いし、勝手に崇拝し、勝手に降伏していくという、彼の「ズレた最強」の物語は、ますます加速していくのだった。

​次章、天才魔導師セレスとの出会いと、不本意な「国作り」へ。

いじめられっ子の僕が転生したら敵が弱すぎたんだが!?

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