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『まぁそんなワケで、五千万、死んだ父ちゃんと母ちゃんの代わりに、姉ちゃんにキッチリ支払ってもらうからな?』
『…………』
五千万……途方もない金額だし、瑠衣にそんな支払い能力は当然ない。
俯き加減で唇を噛み締めていると、黒髪の男が瑠衣の肩をポンっと叩き、軽いノリで諭す。
『この家と車を売り飛ばして、姉ちゃんが風俗で働けば問題ねぇだろ?』
(風俗…………一生無縁だと思っていた仕事だし、男性に淫らな行為をするなんて、できるワケないし……!)
瑠衣が考え事をしているのをよそに、茶髪のツンツン男が、
『ああそうだ。この家に金目の物がないか調べさせてもらうぜ?』
と言いながら靴を脱いでズケズケと家の中に入り、男らはチェストやクローゼット、あらゆる収納場所を手当たり次第に漁り、時間を掛けて金品を探し始めた。
『お、何だこれ?』
茶髪のヒョロ男が恩師から頂いたトランペットを乱雑に扱っているのを見た瑠衣は、慌てて楽器ケースを奪い取る。
『これだけは絶対にダメっ!!』
『あ? お前ふざけた事言ってんじゃねぇぞ!?』
急に凄まれて怖気付く瑠衣だったが、楽器ケースをしっかり抱え込みながらキっと睨みつけ、負けじと抵抗した。
『ふざけてないです! これだけは絶対……絶対に…………手放さないんだからっ!!』
『んだと!? ゴルァ!!』
瑠衣の胸ぐらを掴み、今にも殴りかかりそうな様子を見た体格のいい男が、二人の間に割り入った。