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成瀬りん
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*木花咲耶姫とは、本神話に登場する桜と命の象徴の女神で、天孫ニニギノミコトの妻として皇統に関わる重要な存在の神である*
野々山美月 十七歳
何かの本で見た事がある木花咲耶姫が目の前に現れた事により、さっきまで結界の中に居たのに白い空間の中に移動させられたようだった。
花の姿も聖とオサムさんの姿も見えない、ここはどこなんだ?
「ふむ、ここがどこか気になってる顔をしてるな?少年」
「そ、そりゃあ、気になるだろ?だって、さっきまで結界の中に居たんだからさ?!ここはどこなんだよ?」
「ここはわっちの幻想の中じゃ、お前の魂の叫びを聞いて天から舞い降りたのじゃ」
「天からって事は、アンタは本物神様って事になるな…」
状況が状況じゃなきゃ、目の前に現れた木花咲耶姫を見て腰を抜かす所だけど。
いつの間にか木花咲耶姫は、俺の背後に移動していて、優しく傷口に触れると体の中が暖かくなり傷口が塞がって行くのが見て分かる。
「傷を治してくれて助かった、ありがとう。木花咲耶姫、俺を元居た場所に戻してくれ」
「化け物になった娘の所に戻る気か?」
「分かってるなら話が早くて助かる。そうだよ、花の事を助けに行くんだ」
「お前が戻った所で、あの娘を救えぬ。それはお前自身がよく分かっている事じゃないの?」
「俺が花を救える力を持ってない事も、やれる事がない事も分かってる。分かってるけどっ、花の事を助けたいんだっ」
木花咲耶姫に言われなくても、やれる事がないくらい分かってる。
「最後まで話を聞け、何でわっちが天から降りて来たと思ってるんだ。あの娘を助ける方法がある事をな…」
「方法って何なんだ!?教えてく…、ぐへ⁉」
俺は木花咲耶姫に近付いた瞬間、思いっきり木花咲耶姫に平手打ちを食らってしまった。
叩かれた頬に触れながら木花咲耶姫に視線を向けると、甘い砂糖菓子の匂いが鼻を通り、匂いの正体は木花咲耶姫の手のひらに咲いた水色の蓮の花。
「この中に、化け物になった娘を封じ込み眠らせる」
「眠らせる?どう言う事なんだ?」
「あの娘の呪いは、八岐大蛇が死なない限り解けない。このまま放置していれば呪いは進行してしまう」
「術師が死ねば呪いが解ける法則と同じで、八岐大蛇の事を滅せれば花は元に戻るって事か?」
木花咲耶姫に尋ねると、木花咲耶姫は黙って頷く。
「花を助ける方法が見つかったって事だよな?木花咲耶姫が俺の所に来てくれたから、見つかった方法なんだよな?」
「お前はもっと、わっちに感謝した方が良いぞ?その事は分かっておるな?」
「分かってる、本当に感謝してるんだ。改めて言わせてくれ、木花咲耶姫。俺に力を貸してくれ」
「仕方がないな、だがその為にわっちは来たのだから」
そう言いながら木花咲耶姫は、俺の前髪を掻き分けてから額に口付けをした。
ブオォォォッ!!!
木花咲耶姫が俺の額に口付けした瞬間、暖かい風と共に赤札が舞い落ち、目を開けると元いた場所に戻っていた。
薄紫色の結界の中に戻った俺は、目の前にいる花に手を広げる。
「花…、こっちに来い」
「グアアアアアアッ!!!」
ドンッ!!!
花は唸り声を上げながら力強く地面を踏みつけ、一気に俺に向かって走り出す。
「美月先輩…っ」
「美月さん!?危ないッス!!!」
地面に倒れていた聖は苦し気に俺の名前を呼び、オサムさんは花の事を止めようと走り出している。
オサムさんが間に合う訳もなく、花は俺の元まで辿りつき、口を大きく開けて鋭い牙で肩に思いっきり噛み付いた。
ガブッ!!!
ブシャアアアッ!!!
肩に激痛が走り、傷口から血が噴き出し、花の鋭い歯がグリグリ音を立てて肩に食い込んで行く。
化け物になった花の体を抱き締めながら、安心させる為に花の頭を撫でると動きが止まった。
「ゔっ、ゔぅ、ごめ、ごめ、んねっ…、みづぎ、みづぎ…」
「っ…。大丈夫、大丈夫だから」
「みづぎ、みづぎ、はなじでっ…」
「花、お前の事が好きだよ」
泣きながら謝る花の姿を見て胸が締め付けられ、愛おしさが溢れてしまい、花に俺の気持ちを伝えてしまった。
もう恥ずかしさとかどうでも良くて、花に思いを伝えたくて仕方がなかったんだ。
俺の言葉を聞いた花は、ポロポロと涙を流しながら俺の顔に触れて来る。
傷付ける触り方ではなく、愛おしい相手に触るような優しい触り方で、好きな男を見るような熱の籠った眼差しを向けてきた。
「みづぎ…」
「花がどんな姿でも気持ちは変わらないよ、出会ったあの日から花の事が好きだ。花、お前の事を守ってやれなくてごめんな」
花に噛まれた部分に手で触れ、血がべっとり付いた手で赤札を握り締めて「式神血晶”花箱“」と唱える。
すると結界内にある筈のない綺麗な花達が咲き誇り、一瞬で春の季節の空間化させた木花咲耶姫が花の体を優しく抱き締める。
「もう、お休み」
木花咲耶姫花は天女のような優しい笑みを浮かべると、花の体がどんどん小さくなり水色の箱の中に収まった。
「聖さん!?大丈夫ッスか⁉」
「オサムさんっ、あたしの側から離れてっ」
「そんな訳にはいかないッスよ!?自分だって戦えますかね⁉」
オサムさんが蹲っている聖に近寄って、庇うように立った後、ジャケットの懐から銃を取り出して構える。
雪女は右手を上げ、氷柱を形成させ、オサムさんに向かって氷柱達を放つ。
シュシュシュッ!!!
引き金を引いて次々と氷柱を撃ち落として行くが、撃ち損ねた氷柱はオサムさんの腕を掠り、思いっきり氷柱が太ももに刺さった。
グサッ、ブシャッ!!!
「ゔっ!」
「オサムさっ!チッ」
カチャッ、バンバンッ!!!
聖は蹲った体勢のまま妖銃を構え、オサムさんが撃ち損ねた氷柱を撃ち落とす。
「ゴホッ!!!」
「聖さん!?血っ、血がっ!!!」
手で口を押えて咳き込む聖の事をオサムさんが覗き込むと、聖の手のひらに血がべっとり付着していた。
「大、じょうぶです」
「全然大丈夫じゃないッスよ⁉聖さん、めちゃくちゃ辛そうですしっ」
「呪いが進行しているだけで、どうもないわよ」
聖の事を心配しているオサムさんを気に入らなさそうに雪女は見つめ、何げなく放った言葉に俺達の耳は疑ってしまう。
今、雪女は呪いが進行してるだけって言ったよな?
どう言う意味だ?聖は元々、何かの呪いに掛かっていたと言う事か?
聖がそんな呪いに掛かっているかは今考えても仕方がない、先輩として辛そうにしている後輩を助けないといけない。
頭がボーっとして鈍い痛みの頭痛がしてきた、花に噛まれた傷口から出血した量が多かったから所為か貧血を起こしたか?
「木花咲耶姫、雪女の動きを一時的で良いから止めてくれ」
「わっちに命令するのは其方だけだぞ?まぁ良い。その為にわっちはいるのだから」
木花咲耶姫が手を大きく振り上げると、暖かい風で雪女の周りに浮いていた氷柱を溶かし、聖の体を枝の付いた花が巻き、最後の力を振り絞って聖を抱き上げて距離を取る。
「み、つきせんぱい」
「体が辛い時に無理に話すなって、カッコつけたいけど…。俺の体力も限界に近いわ」
聖を落とさないように地面に座らせると、木花咲耶姫が赤札に戻っている事に気付く。
ガクッと膝が崩れ落ち、意識が朦朧とする中、聖とオサムさんの呼び声が聞こえてくる。
やばいコレは…、血を流し過ぎた…。
こんな所で倒れてる場合じゃないのに、聖達の事を守らないといけないのに…、体に力が入らない。
コツコツと下駄の鳴る音が聞こえ、雪女が聖に近付いて来てるのが分かるのに、何で体が動かないんだよ。
カランッ。
握っていた桃華が手から零れ落ち、俺の意識が切れた。
***
本城蓮 二十四歳
キィィンッ!!!
次々と形成される岩の武器達を防いでは、こちらが攻撃しての繰り返しが、永遠と続いて拉致があかない状況だ。
いつまでこの状況を繰り返せば良い、長期戦になると僕達の体力が失われていくだけ。
ブシュッ!!!
弾いた衝撃で岩が砕け、破片が頬を掠り小さな痛みが走り、頬から血が伝う。
「蓮兄⁉頬から血がっ」
「大した怪我じゃないよ、このぐらい。それよりも雛、だいだらボッチの動きを見ていて気付く事はないか」
「…、だいだらぼっちは本気を出してないね。本気で殺しに来ていないと言うか、時間を潰してる感じ?」
「僕達の事を足止めする事が目的なのかもな。向こうがどう言う狙いで来てるか知らないけどね」
だいだらぼっちに考えがどうであれ、お嬢の方にも壱級の妖怪が行ってる可能性は高い。
壱級の美月とお嬢の二人なら、壱級の妖怪を相手出来るが…。
二人のどちらかが負傷した場合、同行している山田花とオサムさんの事を守りながら戦わないといけなくなる。
だいだらぼっちが力強く地面を叩くと、地面の中から歪な形をした岩達が現れ、僕と雛に向かって岩達が飛ばされた。
「また岩を飛ばしてきたっ。蓮兄、ここでだいだらぼっちを片付け方が良いよ。私と蓮兄なら滅せれる」
「雛、出来るだけだいだらぼっちの気を引いてほしい」
「了解っ」
雛は飛ばされる岩達の隙間を通って接近を図り、だいだらぼっちが雛に気を取られている隙に背後から接近する。
「潰されロ、娘」
だいだらぼっちは雛に岩達を集めさせてから一斉に飛ばし、雛が避けられない状況を作るも、雛は腰に下げていたポーチの中から数枚の札を取り出す。
取り出した札達をだいだらぼっちに向かってばら撒き、指を素早く動かしながら「オンアラビアンキャン・シャラタク」を呪文を唱えた瞬間、飛んできていた岩達が弾き飛ばされた。
キィィンッ!!!
「ほう、退魔術カ」
「チッ、妖怪のくせに陰陽術に詳しいって顔してるわね」
「弾き飛ばすナラ、叩き潰せばイイ」
パンッとだいだらぼっちが両手を合わせて叩くと、岩達がだいだらぼっちの前で集まり、一際大きい岩せ作られた鎌が形成され、手にしただいだらぼっちは雛に向かって振り下ろされた。
ブンッ!!!
キィィンッ!!!
「っ、固っ⁉それれにっ、めちゃくちゃ重いんだけどっ」
だいだらぼっちは無表情のまま力を加え、雛の事を力でねじ伏せようとしているが、雛も必死でだいだらぼっちの攻撃に耐えている。
雛がだいだらぼっちの気を引いているうちに、攻撃用呪文が書かれた札を取り出し、人差し指と中指で挟んだ状態のまま呪文を唱えた。
この技は呪文が長い為、敵の注意を引いてもらわなければ使えない厄介な攻撃術だが威力は高い。
「まがいものよ、禍者よ、いざ立ち還れ、もとの住処、形なき弓よ、ちはやふる神の生弓、放つ生友よ、妖気を的を為せ」
両手印を切りながら呪文を唱え終えると、僕の周りに光の弓と矢達が形成され、だいだらぼっちの方向に向かって一瞬で放たれる。
シュシュシュッ!!!
「っ!!!」
グサグサグサッ!!!
だいだらぼっちが放たれた弓矢達に気が付くが、光の弓矢達はだいだらぼっちの体に突き刺さり血が噴き出す。
ブシャアアア!!!
「グッ…」
ドサッ。
傷口からぼたぼたと血が垂れ落ち、鎌を持ったままだいだらぼっちが地面に片膝を付く。
ジュウッと皮膚が焼ける音が聞こえ、だいだらぼっちの体に視線を向けると、光の弓や矢が刺さっている部分だ焼け始めていた。
この攻撃技は、妖怪達の体を内部から焼き尽くして行き死に追いやる技で、下級の妖怪ならものの数秒で死ぬが、だいだらばっちは何とか耐えている状態だ。
「雛、怪我はないか」
「う、うん!私は大丈夫だよ、蓮兄」
「この技を食らっても死なないか。お前等の目的は何なんだ、お嬢の所にも壱級の妖怪が行ってるのか」
「あぁ、お前達を足止めせよとの命令だからナ」
「何の目的で僕達の事を足止めする、お嬢を連れ去る事が目的か」
だいだらぼっちに尋ねながら首元に刀の刃を当て、目的を吐かせるように首元を軽く叩く。
最初は口を割らなかっただいだらぼっちだったが、何を思ったのか目的を話し出す。
「御子柴楓を殺す事、それが我等の目的ダ。フム、大蛇様の姫を相手するのガ、俺の仕事だったガ」
「坊ちゃんを殺す事が目的だと?」
八岐大蛇何故、狙いを坊ちゃんに変えた?
御子柴家が惨殺された日に坊ちゃんは御子柴家にいなかった、姿を見ていないのに坊ちゃんを今になって殺しに来たのは何でだ。
単に邪魔になったから殺すのか?いや、接点がない筈なのに坊ちゃん一人に絞る事は無い筈。
「蓮兄っ、下がって!!!」
「っ!!!」
雛の叫び声を聞いて我に帰り、言われた通りにだいだらぼっちから距離を取ると、だいだらぼっちの体を紫色の靄が纏われている事に気付く。
だいだらぼっちは体に刺さった弓矢たちを自力で引き抜き、鎌の持ち手を杖代わりにしながら立ち上がる。
ゾワゾワッと背中に寒気が走り、だいだらぼっちの体が更に大きくなり硬化しているようにも見え、紫色の煙を立たせながら傷口が塞がり始めていた。
「グアアアアアアッ!!!」
「「っ⁉」」
雄叫び声をあげただいだらぼっちは足を力強く踏み、一瞬で僕の元まで飛んで来て、雛がすぐに刀を構えて僕達の間に入る。
ブンッ!!!
キィィンッ!!!
「キャッ!」
「雛っ!!!」
雛はだいだらぼっちに向かって刀を振り下ろすも、だいだらぼっちは片手で鎌を振るって雛を弾き飛ばし、僕に向かって鎌を振り下ろしてきた時。
ピシピシッ。
何かヒビが入る音が聞こえると、だいだらぼっは動きを止めて天井に視線を向ける空間に歪みが出来ていた。
「ム、結界にヒビガ」
「ヒビ?」
だいだらぼっちと同じように天井に見てみると、確かに大きなヒビが入っているのが見え、何か黒い生き物達が結界を突いているのが見える。
あの黒い生き物達は何んだ?
ピシピシピシッ!!!
「まずい、結界ガ…」
パリーン!!!
シュシュシュッ!!!
だいだらぼっちが呟いた瞬間、天井が音を立てて破壊され、鴉の大群が結界内に一斉に侵入し、黒い羽根がだいだらぼっちの体に突き刺さった。
「ッ⁉な、何だコレは!!!鴉の羽カ?」
鴉の大群の中から、鴉天狗のお面をした軍団が地面に着地し、軍団を率いる頭と思われるお嬢と同じ歳くらいの少年が僕の方に顔を向る。
「こんな所で時間食ってんなよ、紫乃。この程度の妖も殺せないのか」
「紫乃…?僕の事か?」
「はぁ?お前以外にいねーだろ。自分の名前だろ」
「い、いや、僕の名前は本城蓮だ。けして、紫乃と言う名前じゃない」
僕の言葉を聞いたお面の少年は溜息を吐きながら、周りを見渡し始め「桜がいない」と呟いた。
桜?それに、僕の事を紫乃って呼んだのは何なんだ?
だけど…、何処か引っ掛かる名前だ。
「頭、女を連れてまいりました」
「ちょ、ちょっと何すんよ⁉下ろしなさいよ!!!」
少年の部下と思われるお面を着けた男、雛の事を片手で抱き上げながら少年の元に戻って来る。
「御苦労、その女を担いだままでいろ」
「分かりました頭」
「は⁉このままって、どう言う事⁉」
男に指示をした少年は雛の言葉を無視して、再び僕に視線を向けながら指をさす。
「お前が思い出していなくても、関係ない。今のうちに行くぞ、時間がない」
少年はそう言って錫杖を掲げると、地面に落ちていた黒い羽が集まり僕の体を浮かせ、雛の事を担いでいる男は羽を広げて宙に浮いた、
「えっえー⁉ちょっと、だいだらぼっちは⁉」
「後回しだ、それより桜の元に行くぞ」
「桜って誰よ!?」
雛は何度も少年に尋ねるが少年は答える事なく、僕達よりも先に天井に向かって羽ばたく。
桜?
どうして、その名前を愛おしく感じるのは何故だ?
初めて聞いた名前の筈なのに聞き覚えがあって、胸が暖かく泣きそうになってしまうのは何故だろう。
「いずれ思い出すだろう、お前達はそう言う運命と言うなの螺旋に立って居るのだからな。今は目の前に状況に集中しろ」
そうだ…、まずはお嬢を助けないと。
「待っていて下さい、お嬢。直ぐに行きます」
僕達は鴉天狗の集団と共に結界内を脱出し、お嬢達が閉じ込めれている結界に向かった。
コメント
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美月先輩の「花がどんな姿でも気持ちは変わらない」って告白シーン、もう胸がギュッてなったよ…!😭💕 木花咲耶姫からもらった力で花を箱に封じ込める展開も切なすぎる。蓮さん側も「紫乃」って呼ばれてて伏線っぽいし、鴉天狗の集団登場で物語が一気に加速した感じ!続きが気になりすぎる〜!!