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向こう側の入口から、テント内へとその光は入ってきた。
間違いない。
火の玉という奴だ。
でも熱は無さそうだ。
テントに異常が無さそうだから。
金縛りに遭ったように動けない。
本当の金縛りなのかどうかもわからない。
でも目だけは動く。
火の玉を観察し続けている。
火の玉はぐるっとテント内を廻って。
そして向こう側の入口の方を、またしばらくふらふらした後に。
ふっと姿を消した。
そしてテント外を去って行く気配。
人とか動物の気配ではない感じ。
僕は思わず叫びだしそうになる。
その時。
僕の横に寝ている人が、こっちを向いた。
言うまでも無く川俣先輩だ。
目が開いている。
今のを見ていたのだろうか。
「大丈夫、今のは害はない。心配して様子を見に来ただけだな、お姫様のさ」
ささやき声でそんな事を言う。
「何なんですか。今のを知っているんですか」
僕も出来るだけ小さい声で尋ねる。
「ああ。よくある狐火だ。基本的に害はない」
先輩はそうさらっと言って。
「だから安心しろ。詳細は後日」
そう言って、またくるっと向こうを向いてしまった。
何だったんだろう。
狐火?と先輩は言っていたけれど。
害がないって、何故わかるんだ。
夜中だが、目が馴れていればそれなりに見えない事もない。
少なくともテントの壁の様子は、はっきりとわかる。
今のが本物の火なら、テントの布地は焼けるか溶けるかしている筈。
でも何ともなっていない。
色々疑問を抱え込んだまま、僕はやっぱり眠れないままだった。