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思わず訂正したが、松吉も米吉も聞いていなかった、みや江が不意に声を詰まらせた
グスッ・・・
「あのさっちゃんが……ずっと女将と仲が悪かったから……私達本当に嬉しいの・・・」
「こんな立派なお婿様迎えられて、本当によかった!」
「ええ!ええ!・・・これで山田旅館も安泰だわ、本当によかった!」
着付け師の、みや江とすず江が目に涙を浮かべた、長年この島で桜の成長を見守ってきた人達だ、よその人間には測れない、長い時間がその涙の中にあった
「・・・」
ジンは何も言えなかった、メジャーを当てられたまま、ただ前を向いていた
「あ~!もうばぁさん達は歳をとると涙もろくていかん!あっちで茶でも飲んで来なさい」
クスクス・・・
「はぁ~い」
「はぁ~い」
二人が笑いながら隣の部屋へ消えていく、その笑い声が廊下に溶けて、部屋がまた静かになった
チャリ・・・
「カンさん・・・これを・・・」
米吉がうやうやしく木の箱をジンに差し出した、両手で胸の高さまで上げてまるで神前に供えるような仕草だった
「150年以上前から我が家に伝わる家宝じゃ!」
その箱を開けると赤いベルベットの布の真ん中に、真鍮製の懐中時計が入っていた・・・凝った細工で職人の一つ一つの手が入っていた・・・その凝り方は素晴らしく、時計の文字盤の一つ一つにダイヤモンドが埋め込まれている、小さな光の粒が、夕暮れの間接照明の中でひっそりと瞬いていた
ジンはあまりの美しさに目を見張った
「わぁ・・・とても・・・綺麗ですね・・・」
「ワシのひい爺さんのそのまた爺さんが、ひい婆さんのそのまた婆さんを嫁さんにする時にな、山を売って特別に作らせたんじゃと」
米吉は手の中の時計を優しく撫でた
「ワシの先祖はこれを嫁に送って、一緒に時を刻みましょうと言うたらしい・・・嫁さんは秋田出身の色白でなぁ~、結婚前に親族の許可が必要でな、町のモノは大騒ぎさ、当時は結婚相手はこの島で見つけるのが当たり前じゃったからの」
ジンはその話に感心して言った
「それで・・・結婚して・・・うまくいったんですか?」
「ご先祖の婆さんは強い女じゃったそうじゃ・・・意志を通しぬいたのさ、ご先祖の爺さんと幸せになるという意志をな」
米吉は遠くを見るような目をした、ほんの一瞬だけ、この部屋ではない場所にいる顔だった
「これをあんさんにやる」
「そっ!そんな!いけません・・・こんな大切な物・・・」
ジンは当惑の顔で小さく左右に首を振った、受け取れるはずがなかった、150年もこの家に伝わってきた時間の重さが、箱越しにずっしりと伝わってくる気がした
コメント
2件
米吉さんは、この大切な家宝を、ジンさんだからこそ受け継いでもらいたいって思ったんだね😊✨✨ もう腹を括ろう!カンさん🤣
代々引き継がれる素敵なストーリー✨️😊 拒む理由は色々あるだろうけど、ジンさんに受け取って欲しいなぁ💓 桜ちゃん以外の他の誰と幸せになれる?ね!カンさんや😂