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おばちゃんはニコやかに語り出しました
「それは偉いですな
お前さんの年頃では欲しいものは沢山あるでしょうに
うちの従業員で貯金をしてる人間なんか
いやしませんからね 」
実際目の前にあらわれた現金を
使わずにいるのは至難の業でした
スーパやショッピングモールに行くと
なぜか自分がお金を持っていると意識すると
あれもこれも欲しくなって
衝動買いの誘惑に勝つのに
キラリは大変な思いをしました
しかしキラリはおばちゃんとあのアパートで
掃除をして過ごした時間が忘れられなくて
あの真っ白いアパートが
一棟まるまるおばちゃんの持ち物であると
聞いた時の壮絶な気持ちや豊かさ・・・・
または充実感は
そこらのちょっとした洋服や
アクセサリーやCDを買う
優越感と訳が違いました
そして何より・・・・・
父と喧嘩した時など
一人でこもれる隠れ家的な家を
持てたらどんなに
素晴らしいか・・・・・
そんなことを考えると大事なお金を使うことが
できなくなるのでした
「全部を貯金しなくていいですよ
人間は振子の原理が働く生き物です
無理をしてると必ず反動が返ってきます
だから稼いだ報酬の一部を
「育てる」という観点で貯金すると
いいんですよ 」
「でも欲しい物を我慢して貯金したら
その分沢山貯まるやん」
おばちゃんはさも楽しそうに笑いました
「目標を持たない貯金は必ず
しょーもないことに消えるんですわ
実はお金は使われたがってるんです
一番自分の価値が上がる方法でね」
:*゚..:。:.
.:*゚:.。
キラリはじっと自分のタンスを見つめていました
空の茶封筒を握り締める手に力が入ります
憤りとやるせなさがキラリの体全身に走ります
このタンスの引き出しの一番奥に入れておいた
茶封筒の中身が空になっていました
雨の日も熱い日も
おばちゃんの自動販売機のジュースを
配給して貯めたアルバイト代
3万円がありません
キラリはズカズカと足音を立てて
父の部屋のフスマをパシンと勢い良く開けました
「・・・なんや・・・ 」
父はテレビを見てこちらを振り向きません
キラリは茶封筒をつきだして見せました
「ここに入れといたお金があらへん!
アンタやろ! 返して! 」
父はこちらを向かずに答えます
「・・・・・返すことはできへんな
だいたい お前なんであんな大金もっているんや 」
キラリは一気に怒りが湧いてきます
「黙って人から取っておいて
何が返すことができへんよ!
あれはあたしが働いて作ったお金や!
返してよ 」
「それや!
お前陽子の家でいったい何してるんや!
まさかお父さんに言われへんこと
してるんやないやろな 」
「言われへんことって何よ!
ちゃんとおばちゃんの
仕事手伝ってもらったんや!
返してよ! 」
「まさかお前
売春でもしてるんやないやろな・・・」
また始まった・・・・・