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コインパーキングを後にした一同は、酒を飲んで運転できない代わりに、つかさが運転する車に乗って、梓の自宅アパートの前までやって来ていた。
「梓・・本当にひとりでいいのか?無理しなくていいんだぞ?」
「そうよ!金森さん!私の家だってあるんだし!ね?」駿とつかさは、うつむく梓に優しく語りかける。
「ううん・・いいの・・1人になりたいから・・送ってくれてありがと・・」梓がドアノブ手をかける。
「何があったらすぐに連絡するんだぞ?」
車から降りようとする梓に駿が語りかける。
「うん・・わかってる・・・」梓はそういうと、車から降りて自分の部屋に向かう。
「いいの?梓をこのまま帰らせて」
聖奈が駿に尋ねる。
「1人になりたいって言われたら・・どうする事も出来ないだろ・・・」駿はうつむき、顔を両手で覆う。
「そりゃそうかもしんないけどさ・・心配じゃないの?」
「心配に決まってるだろ!!!」沙月の問いかけに駿は声を張り上げる。
「皆川先生?椎名さんに当たっても仕方ないでしょ?」つかさが駿をなだめる。
「あ、すいません・・そんなつもりじゃ・・ごめん椎名・・悪かった・・・」
「ううん・・私こそごめん・・心配じゃないなんて・・そんな訳ないよね」沙月が頭を下げる。
「俺・・梓の心の拠り所になってる気でいたんです・・・」うつむいた駿がおもむろに口を開く。
「皆川先生・・」つかさが駿を黙って見つめる。
「梓の支えになれてるつもりでした・・けど結局俺なんて他人なんですよね・・いち教師でしかないんですよ・・そんな奴が支えなんて・・あはは・・おかしい話ですよね」
「何言ってるんですか!?この前だって私言いましたよね?皆川先生は金森さんの支えになれてますって!」
「でも結局何も出来てないじゃないですか!俺なんて好きな子1人を護ってやる事も出来ない、ちっぽけな人間なんですよ・・」
「好きな子って・・皆川先生・・まさか金森さんの事を?」つかさは駿の意外な発言に目を見開いて驚く。
「え?駿くんって梓の事好きなの?」
聖奈が身を乗り出して駿を問いただす。
「あはは・・教師が教え子の事が好きなんて・・教師失格だよな・・・」
「だったら、それを梓に伝えてあげなよ!」
「ちょっと秋根さん?あなた何言ってるか分かってるの?」つかさは禁断の恋を成就させようとする聖奈を止める。
「だって今の梓を救ってあげれるのは駿くんだけなんだよ?今駿くんの想いを伝えてあげれば、梓は孤独なんかじゃない!1人じゃないって教えてあげれるじゃん!」
「それは・・・そうかもしれないけど」つかさの頭の中では葛藤が渦巻いていた。
教師と教え子の恋愛を黙って見過ごすわけには行かない。しかし駿の想いを伝えなかったら、梓は孤独の中でずっと1人きりになってしまう。
そんな葛藤の中でつかさは揺れ動いていた。
「携帯貸して?駿くん!梓に電話するなら!」
聖奈は手を差し出して、駿にスマホを出すように要求するが、駿は渋っているようで、中々スマホを出さない。
「出せって言ってんの!さっさとしてよ!」
聖奈がいくら言っても駿はスマホを出さない。
「ならいいんだ!梓がこのまま孤独に負けて自殺とかしちゃっても!」
聖奈の口から発せられた自殺というワードに駿の表情が変わる。「自殺・・・」
「ありえない話じゃないじゃん?でもそれを救えるのは駿くんだけなんだよ?駿くんが今!梓に好きだって伝えてあげれれば、梓は救われるんだよ?」
聖奈は言葉で駿は決意を固めて、スマホを取り出す。
「すいません雛形先生!やっぱり俺・・自分の気持ちに嘘はつきたくないんです!」
駿はつかさに頭を下げると、スマホを操作して梓に電話をかける。
しかし、何回コールがなろうとも、梓は中々電話に出ない。
「出ないな・・・」駿が不安そうに呟くと、ようやく梓が電話に出た。
「梓?大丈夫か?何もないか?」
駿は梓に優しく語りかける。
「駿・・ごめんね?色々やってくれて・・探偵費用まで出してくれたのに・・ごめんなさい」
「何謝ってんだよ!梓が謝る事なんて何ひとつ無いだろ?謝らなくていいって!」
「なんで駿はそんなに私なんかに優しくしてくれるの?」
梓の問いかけに駿は深呼吸をして「好きだからだよ!俺・・梓の事が好きなんだ!」と自分の想いを伝える。
「また冗談なんか言って・・もう騙されないからね?」
「本当だって!やっと気づいたんだよ!自分の気持ちに!」
「自分の・・気持ち?」梓は今にも泣き出しそうに駿に尋ねる。
「ずっと誤魔化してたんだよ・・俺は教師で梓は教え子だからって・・世間はそれを認めてくれないって・・でもそんな事どうでもいい!俺は梓が好きだ!愛してる!」
駿から想いを伝えられ、梓の目から大量の涙が溢れ出る。
「それ・・本当?嘘ついてない?」
「嘘なんかついてないよ!嘘偽り無い俺の素直な気持ちだよ!俺は梓を愛してる!ずっと一緒にいたいんだ!」
駿がそう口にした瞬間、梓の部屋のドアが勢いよく開き、梓が走ってくる。
それを確認した駿も車から降りる。
そして、梓は駿に勢いよく抱きつく。
「駿・・ぐすっ・・私・・嬉しい・・すっごく嬉しいよ・・・」
梓は駿の胸に顔を埋めて泣きじゃくる。
「ごめんな?梓・・こんな時に好きだなんて言うの・・卑怯だよな?でもやっぱり自分の気持ちに嘘をつくのは嫌だったんだ・・」
駿は梓の頭を優しく撫でる。
「ううん・・嬉しいよ・・駿・・私も大好き❤︎」
梓はすこし背伸びをして駿と口づけを交わす。
「わ❤︎」聖奈と沙月は両手で顔を覆い、人差し指と中指を少し開いて、その隙間から2人のキスを見守る。
「はい!はい!そこまで!そこまで!」
車から降りたつかさは、2人を無理矢理引き裂く。
「あー!いいトコだったのに〜!」
聖奈と沙月は水を差したつかさにブーイングをする。
「何言ってんの!道端で堂々とキスする教師と教え子を見過ごせないでしょ?」
つかさは呆れた様子で腕を組む。
「あ、すいません・・・あはは」
「また!笑って誤魔化す!!」つかさは笑って誤魔化す駿に喝を入れる。
「はい・・すいません・・・」
駿は縮こまったまま頭を下げる。
「あの・・雛形先生?ちょっとお願いがあるんだけど・・いいかな?」梓は恥ずかしそうにつかさを見る。
「なに?どうかした?」
「ちょっとの間だけ・・その・・駿と2人きりになりたいんだけど・・部屋行ってもいいかな?」
梓は顔を赤くしてつかさに懇願する。
「部屋で2人きりに?それはさすがにダメ!今は」
つかさの言葉を遮るように、聖奈と沙月が2人がかりでつかさの体を押さえる。
「駿くん!梓!今のうちだよ!さぁ!早く行って!ホラ!ホラ!」
「コラ!あなたたち!辞めなさい!離れなさいってば!コラ!」
つかさは聖奈と沙月を振り解くようにもがく。
「ごめん・・ありがとう!駿?行こ!」
梓は駿の腕を引っ張って部屋に走る。
「ちょ!梓!待てってば!」
駿は梓に引っ張られながら部屋に向かう。
「コラ!離れなさいって!怒るわよ?」
つかさは横目で駿と梓が部屋に入っていくのを確認すると「フンッ!」と唸って聖奈と沙月を力一杯振り解く。
「きゃぁ!」つかさの馬鹿力に圧倒された2人は、その場に倒れ込む。
「あ!ごめん!力強すぎた?ごめんごめん」
つかさは笑いながら2人に手を差し出す。
「ちょっと雛形先生!力強すぎ!」
「本当それ!やばすぎだってば!」
聖奈と沙月はつかさに文句を言いながら、つかさの手を掴んで立ち上がる。
「あれ?私言ってなかった?学生時代は空手部の主将で、選抜大会で優勝した事もあるのよ?」
「げっ!まじで?すごいじゃん!」
沙月はつかさの意外な経歴に驚く。
「ふん!まあね!」つかさらドヤ顔でほくそ笑む。
「でもさ?だったら何ですぐに私たちを振り解かなかったの?そんなに強いなら余裕だったでしょ?」聖奈が素朴な疑問をぶつける。
「まぁ・・あれよ・・なんとなくよ・・なんとなく」つかさは頬を赤く染めながら視線を逸らす。
「あっれれ〜?口ではああ言ってても、実は心の奥底では駿くんと梓の事応援してたりして?きゃー❤︎」聖奈と沙月はつかさを茶化す。
「私と勝負してみる?」つかさは不敵な笑みを浮かべながらファイティングポーズをする。
「申し訳ありませんでした!」聖奈と沙月はつかさに深々と頭を下げる。
「まぁ、冗談だけど・・今回は特別よ?けど!私たちはもしもの時の為にここで監視よ?」
「梓の喘ぎ声が聞こえて来たりして❤︎」
「駿・・そんなトコ・・だめ❤︎とか言っちゃって!きゃー❤︎」
聖奈と沙月が手を繋いで、ジャンプしながらはしゃいでいるとつかさが 「そうなったらドア蹴破って皆川先生をシバいて再起不能にするわ!」と真剣な眼差しで拳を握る。
「顔怖いって・・雛形先生・・」
梓の部屋で2人仲良く座り込む駿と梓。
しばらく沈黙が流れたのちに、梓がその静寂を切り裂くように口を開く。
「ねぇ?駿?ちょっと聞いてもいい?」
「なんだ?どうした?」
「私たちってさ・・その・・恋人同士になったって事で・・いいんだよね?」
梓が顔を赤くして駿の顔を見上げる。
「ま、まぁ・・そう・・だな・・恋人同士・・かな?あはは!」駿は照れ隠しなのか、笑ってその場を乗り切ろうとする。
「そうだよね!恋人同士なんだよね!なら問題ないよね?」
「え?問題ない?」
梓は駿をベッドに押し倒して、その上にまたがる。
「ちょ!何やってんだよ梓!外に雛形先生たちも居るんだぞ?それに・・こういう事は梓が高校卒業してからだろ?」
駿は顔を赤くしながら梓を説得する。
「だって恋人同士なんでしょ?だったらいいじゃん!愛があればそんなの関係ないでしょ?」
梓は駿の言葉を無視して、ブレザーを脱ぎ捨てて、ワイシャツのボタンをひとつひとつ、丁寧に開けていく。
「なぁ・・梓?やけになってないか?」
駿の言葉を聞いて、梓の手が止まる。
「確かに悲しいし辛いかもしれない・・だからって自分を大切にしないのは違うだろ? 」
自暴自棄になっている梓に駿が優しく語りかける。
「だって・・私にはもう・・駿しか居ないんだもん・・・」梓の目から涙が溢れ出る。
「駿まで居なくなっちゃったら・・私・・本当にひとりぼっちになっちゃうもん・・・」
「梓・・・」駿はそんな梓を真剣な眼差しで見つめる。
「だから・・駿が私から離れて行かないように・・ずっと私の側に居てくれるように・・体で繋ぎ止めるくらいしか・・・ぐすっ」
「バカを言うな!」駿は起き上がって梓を力強く抱きしめる。
「そんな事しなくたって・・俺は梓から離れていかない!絶対に!だから自分を大切にしてくれよ!な?体で繋ぎ止めるとか・・そんな事考えなくていい!」
「本当に?私から離れていかない?」
「ああ!約束するよ!俺はずっと梓の側にいる!何があったって離れていかない!」
「駿・・ぐすっ・・・」
駿は梓を力強く抱きしめる。