テラーノベル
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龍河は受話器を耳に当て、事務的な口調で応じた。
「はい、こちらMW編集部」
受話器の向こうから、若い女性の緊張した声が聞こえてくる。
「と、突然すいません・・そちらは
MW編集部で間違いないでしょうか?」
「ええ、間違いありませんが」
女性は少し息を整えてから続けた。
「なら、そちらに馬場龍河さんか
江波山忍さんはいらっしゃいませんか?」
龍河は眉をひそめる。
「ん?馬場は俺ですけど?」
その瞬間、受話器の向こうで安堵したような声が弾けた。
「馬場さんですか!?」
「ええ、そうですが?」
「私です!」
一拍置いて、その女性は名乗った。
「白縫信愛です!」
その名前を聞き、龍河はすぐに思い当たる。
「ああ、なんだ、白縫さんか」
声色を少し和らげながら問いかける。
「どうしたんだ?」
しかし返ってきたのは、震えを必死に押し殺した悲痛な叫びだった。
「助けてください!」
龍河の表情が一変する。
「助けてって・・・な、何があった!?」
電話の向こうでは、信愛が嗚咽を堪えていた。
「お、お母さんが・・」
言葉が続かない。
「お母さんが・・ぐすっ・・」
龍河は思わず受話器を握り締めた。
「お母さんに何かあったのか!?」
信愛は涙声のまま答える。
「家に教団の人が押しかけてきて──」
「はぁ!?」
龍河は思わず声を張り上げた。
脳裏に、先ほどまで話していた天縁教団の存在がよぎる。
「もしかして・・連れ去られたのか!?」
「は、はい・・・」
短い返事が、事態の深刻さを物語っていた。
龍河は即座に決断する。
「わかった!」
迷いはなかった。
「今からすぐに向かう!」
信愛はか細い声で答える。
「お、お願いします・・・」
「場所は君の家でいいんだよな?」
「は、はい・・・」
「わかった! すぐに行く!」
さらに龍河は念を押すように続けた。
「いいか?鍵は内側からキチンとかけとけよ?」
一呼吸置き、強い口調で言い聞かせる。
「それから俺らが来るまでに誰かが来た
としても絶対に鍵を開けるな!わかったな?」
「は、はい・・・」
「なら待っててくれ!すぐ行くから!
龍河は力強く言い切った。
電話を切ると同時に、忍が龍河の険しい表情を見て尋ねる。
「どうした?何かトラブルか?」
龍河は振り返り、息を切らしながら告げた。
「編集長!予定変更です!」
「どうしたんだ?」
「白縫銚子さんが、教団の人間に
連れ去られたみたいです!」
忍の顔から笑みが消える。
「なんだと!?」
龍河は頷いた。
「今、白縫さんから電話がありました!」
忍は苦々しく歯を食いしばる。
「くそ・・・奴らに先手を打たれたか!」
龍河はすぐにバッグを肩へ担ぎ直した。
「とりあえず向かいましょう」
龍河と忍は奥多摩行きを中断して白縫家に向かう。
◇ ◇ ◇
数十分後。
静まり返った白縫家に、突然インターホンの電子音が鳴り響く。
ビクッと肩を震わせた信愛は、恐る恐る玄関へ歩み寄った。
「は、はい・・・」
ドア越しに小さく応じる。
すると外から聞こえてきたのは、聞き慣れた力強い声だった。
「俺だ!馬場だ!」
その声を聞いた瞬間、信愛の顔に安堵の色が広がる。
「馬場さん♬」
龍河たちが白縫家へ駆けつけると、張り詰めていた緊張の糸が切れたのか、信愛の表情がほっと緩んだ。
「今開けます」
内側から鍵が外れる音が響く。
龍河は周囲を警戒しながら声をかけた。
「大丈夫だったか?」
信愛は静かに頷く。しかし、その瞳にはまだ恐怖の色が残っていた。
「私は無事だったんですけど──」
言葉が途切れる。
震える唇から、ようやく次の言葉がこぼれ落ちた。
「お父さんが・・・」
その一言に、玄関先の空気がさらに重く沈んだ。
龍河は周囲を一度見回してから言った。
「中に入るぞ?」
信愛は何度も頷きながら答えた。
「は、はい・・・」
リビングへと通ずるドアがゆっくりと回され、静かに扉が開き始めた。
コメント
1件
うわ、龍河さんの「鍵は内側からキチンとかけとけよ」ってとこ、めっちゃ胸に響きました……。ギリギリの状況で冷静に指示できるのが本当にカッコいい。信愛ちゃんの「お父さんが…」で止まる感じ、続きが気になって仕方ないです。×さん、今日も重くて熱い展開ありがとうございます。次も静かに待ってます🌙
#普通
野々さくら
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ありあ
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