テラーノベル
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龍河がリビングへ足を踏み入れた瞬間、思わず息をのんだ。
「大丈夫ですか!?」
そこには、額から流れる血をタオルで押さえながら座り込む多摩雄の姿があった。
青ざめた顔を向けた多摩雄は、力なく微笑む。
「馬場さん・・・ありがとうございます」
忍はすぐに多摩雄の前へ膝をつき、傷口を確認する。
「傷の具合を見せてください」
タオルをそっと外すと、額にはぱっくりと裂けた傷が走っていた。
多摩雄は悔しそうに目を伏せる。
「必死で抵抗したんですが
鈍器のような物で殴られてしまいまして」
傷口を見た忍は険しい表情になる。
「結構深い傷ですね」
少し黙り込んだあと、低い声で告げた。
「これは縫わなきゃ塞がらないだろうな」
しかし多摩雄は首を横に振る。
「私の事は構いません」
その声は震えていた。
「ですが・・・銚子が・・・」
娘の名を口にした瞬間、多摩雄は愛する妻を護る事が出来なかった、自分の無力さを噛み締めるように下唇を強く噛み、拳を握り締めた。
龍河は静かに問いかける。
「奴らの行き先に心当たりは?」
多摩雄は苦しげに首を振った。
「いいえ・・・分かりません」
だが、何かを思い出したように顔を上げる。
「ですが、万が一に備えて銚子のスマホに
GPSアプリを入れてあります」
そう言うと、震える手でスマホを差し出した。
「これです」
龍河は画面を覗き込む。
アプリには、赤い点が西南西へ向かって移動し続けていた。
「このままだと檜原村に着きそうですね」
忍は腕を組み、地図を見つめる。
「そうなれば向かう先は・・・」
龍河がその先を引き継ぐ。
「檜原村のさらに先、さっき話してた
新開村跡地って事にるんじゃないっスかね?」
忍はゆっくり頷いた。
「そう考えるなら、教団の保有する
村ってのは、新開村って可能性が高いか」
龍河も同意するように息を吐く。
「そう考えるのが妥当でしょうね」
忍は険しい表情のまま決断を口にした。
「下調べしてる余裕はないから、そのまま
ぶっつけ本番で向かう他なさそうだな」
「そうなるっスね・・・」
その時、不安そうな声が二人の会話を遮った。
「あの・・・馬場さん?」
龍河が振り返る。
「ん?どうした?」
信愛は小首をかしげる。
「ヒノハラ村とかシガイ村とか
さっきから何の話をしてるんですか?」
龍河は信愛の目を真っ直ぐ見つめながら答えた。
「実はな、色々調べてるうちに、霊貴冥孤が言ってた
教団が保有してる村らしき場所を見つけたんだ」
信愛は目を見開く。
「本当ですか!?それって、奥多摩
近辺にあるって言ってた村ですか?」
「ああ・・・」
龍河は静かに頷いた。
「お母さんのGPSもそこに向かってるみたいだ」
多摩雄は驚愕の表情で立ち上がりかける。
「なら銚子は教団の村に連れて
行かれた可能性が高いと?」
龍河は力強く頷いた。
「そういう事です」
そして険しい眼差しのまま、静かに結論を口にした。
「目的はおそらく修理固成についてでしょうね」
信愛は胸の前で手をぎゅっと握り締め、不安そうな表情で龍河を見つめた。
「術者かナワバリ様、どちらかにお母さんを
利用する為に村に連れて行ったって事ですか?」
龍河は腕を組み、慎重に言葉を選ぶように息をついた。
「断言はできないが、その可能性が高いと思う」
重苦しい空気の中、忍が静かに続ける。
「村に向かってるのか、真意は定かじゃ無いが」
一拍置き、鋭い眼差しを龍河へ向けた。
「GPSがあるんだ」
その一言で、部屋の空気がわずかに変わる。
忍は決意を込めた声で言った。
「それを頼って、俺たちも追いかけよう」
龍河は力強く頷く。
「そうっスね」
もはや迷っている時間はない。
彼らの視線は、GPSが示す赤い点、それは教団の持つ未知の村へと向けられていた。
◇ ◇ ◇
するとリビングの外から慌ただしい足音が近づいてきた。
勢いよく扉が開き、早退して駆けつけた茜たちが息を切らせながら部屋へ飛び込んでくる。
「信愛!?大丈夫!?」
信愛は驚いたように顔を上げた。
「みんな・・・」
震える声で呟き、目に涙を浮かべる。
「来てくれたの?」
焔垂は力強く頷き、迷いなく言い切った。
「当たり前だろ!友達の一大事だ!」
その言葉だけで、信愛の張り詰めていた心が少しだけほどける。
「ありがとう・・・」
すると、さくらが静かに歩み寄り、そっと信愛を抱きしめた。
優しく背中を撫でながら、さくらは穏やかな声で励ます。
「お母さんはきっと・・きっと大丈夫だから!」
信愛はさくらの肩に顔を埋め、小さく嗚咽を漏らした。
「だから気をしっかり持って?ね?」
「さくら・・・ぐすっ」
涙を拭いながら、信愛はもう一度微笑む。
「ありがとう・・・」
その様子を見ていた龍河は、どこか安心したように息をついた。
「みんなにも連絡してあったんだな」
信愛はこくりと頷く。
「はい・・馬場さんに連絡してからすぐ後に」
焔垂も続ける。
「早退させてもらって、すぐに駆けつけました」
「なるほどね・・・」
そこへ美月も姿を現した。
「白縫さん!」
「美月先生まで・・・」
信愛は慌てて頭を下げる。
「迷惑かけてすいません」
美月は優しく首を横に振った。
「何を謝ってんの!
そんな事良いわよ、気にしないで」
そんな美月に龍河が尋ねる。
「先生は白縫さんの事情に
ついてはご存じなんですか?」
美月は静かに頷く。
「ええ、つい先ほど八乙女くん達から聞きました」
表情を曇らせながら続ける。
「また、お母さんが教団の人間に連れ去られたと」
その言葉を受け、朝陽が身を乗り出した。
「何か進展はあったんですか?」
信愛が希望を込めた眼差しで答える。
「どうやら馬場さん達が必死に調べてくれて
教団の村場所が分かったらしいの」
「まぢでか!?」
焔垂が目を丸くし、思わず声を上げる。
「本当ですか!?」
龍河は力強く頷いた。
「ああ、おそらくだが目星はついてる」
そして、さらに続ける。
「お母さんもそこに連れて行かれてるみたいだ」
「お母さんが?何でわかるんですか?」
焔垂の問いに、龍河は落ち着いた口調で説明する。
「お母さんのスマホにGPSアプリを入れてあるの」
「なるほど・・・」
「そのGPSは奥多摩にある
檜原村って村に向かって動いてる」
龍河は全員を見回しながら言葉を続けた。
「その先にその村はある。俺たちはそう睨んでる」
部屋の空気が再び張り詰める。
龍河は決意を宿した瞳で静かに宣言した。
「だから俺と編集長は、今からその村に向かう」
#ボカロ
ありあ
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ありあ
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コメント
1件
めっちゃ熱い展開だわ…!龍河と忍、即決で動くのカッコよすぎる。多摩雄の無念さとか、信愛の不安とか、さくらが抱きしめるシーンで一気に涙腺緩んだ。GPS追って教団の村にぶっつけ本番って、緊張感半端ない。茜たちが駆けつける友情も好き。次どうなるか気になってしゃーない🔥