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2話 魔法薬草作り
ふっくらは
小さな鍋を
両手で支えていた
丸い体に比べて
鍋は少し大きく
持ち上げるたびに
腕が震える
顔には
集中しているつもりの
表情が浮かんでいた
次の瞬間
嫌な音がした
軽く
乾いた音
鍋は
割れた
ふっくらは
動かなかった
慌てもしない
叫びもしない
ただ
割れた鍋を
見つめて
黙った
後ろにいた琶が
一歩前に出る
大きな体
硬そうな鱗
畳まれた翼
その場に立つだけで
圧があるはずなのに
動きは
静かだった
琶は
何も言わず
爪を
少し持ち上げる
空気が
わずかに歪む
音も光もないまま
割れた鍋が
引き寄せられ
無理やり
形を取り戻す
完全ではない
ひびは
残っている
それでも
鍋としては
成立していた
中では
薬草が
煮えていた
色も
匂いも
あまり良くない
方向に
まとまっている
ふっくらが
鍋をのぞき込む
口を
開きかけて
やめる
琶も
同じように
中を見る
表情は
変わらないが
目だけが
少し細くなる
完成した薬草は
確かに
薬草だった
効き目が
あるかどうかは
誰にも
わからない
少なくとも
飲みたいとは
思えない
ふっくらは
何も言わず
鍋を
端に寄せた
琶も
それ以上
手を出さない
こうして
魔法薬草作りは
終わった
成功とも
失敗とも
呼ばれず
ただ
形になっただけの
結果を
残して
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