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3話 イシーを討伐
討伐対象は
そこにあった
丸い石
角もなく
色も地味
どう見ても
ただの石だ
ふっくらが
前に立つ
丸い体
短い腕
指は
むっちりしている
目を細めても
石は石のまま
ふっくらは
一歩近づく
攻撃しない
のか
攻撃できない
のか
自分でも
よくわからない
後ろで
琶が腕を組む
大きな体
重なった鱗
畳まれた翼
尾は地面に
ゆっくり伸びる
顔は落ち着いているが
半分だけ
楽しんでいるようにも見える
ふっくらは
石をじっと見る
石も
ふっくらも
動かない
風が吹く
石は
微動だにしない
琶が
一歩前へ出る
巨大な影が
石の上に落ちる
「……やっぱ石だよな」
ふっくらは
小声でつぶやく
琶は返事をせず
紙を取り出し
爪でさらさらと書きはじめる
字はやけに整っている
【討伐対象:イシー】
【状況:とんでもないオーラを出しています】
【脅威度:たぶん強いと思われる】
【性質:周りには誰も寄せ付けないだろう】
ふっくらが
のぞき込むと
琶は
口元だけで
少し笑う
報告書は完成したらしい
ふっくらは
石に向かって
軽く会釈する
石は
何も返さない
帰り道
ふっくらは
振り返らない
琶は
ゆっくり歩く
討伐は
完了扱いになる
石は
変わらず
そこにあるまま
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