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「二人が合コンで出会って、アイツが高村さんに一目惚れしたって言ってたけど、それっきりになってしまって、先月の工場見学で来社した時に高村さんがいて驚いたって言ってたんだ」
豪が谷岡に、奈美の話をしていた事を知り、気恥ずかしくなってしまう。
彼は女性関係を友人には一切話さない、秘密主義に見えたから。
「アイツも以前から気になっていた高村さんに、仕事場ではあるけど、再会できて嬉しかったみたいだよ」
「そっ……そうだったんですね……」
(豪さんは谷岡さんに、私と知り合ったのは、合コンって言ってたんだ……)
先日、奈美が母に話した時と同じく、彼も言っていた事に、フッと唇が緩んだ。
「まぁ……アレだ。アイツ、俺から見てもイケメンだし、遊んでそうな雰囲気だけど…………高村さんの事、本気だよ」
谷岡は、口元を微かに弧を描くと、奈美の瞳の奥が、少しずつ熱を帯びていく。
「恐らくだけど、アイツがプライベートの携帯番号と携帯のメルアドを女性に教える事は、滅多にないと思う。それくらい、高村さんの事が本気で好きなんだよ」
上司の前で、不覚にも泣きそうになっている自分がいた。
まさかこんな繋がりがあるなんて、誰が予想しただろう?
「本橋、高村さんの電話を待っているから、暇な時にでも連絡してやってくれないかな? 俺がお節介な上司で、高村さんは引いたかもしれないけどね」
谷岡が、普段職場では見せないような、お茶目な表情を見せる。
「ああ、アイツには、もし知らない携帯番号から電話が掛かってきても、高村さんかもしれないから無視するな、って言ってあるから、そこは安心していいよ」
谷岡は立ち上がり、お疲れ様、と手をヒラヒラと振りながら、職場の中へ入っていく。
(これって、お母さんが言ってた運命ってヤツなのかな……)
奈美は、メモを見つめたまま、しばらくの間、ベンチから腰を上げられずにいたのだった。
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