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第4話『影に揺れる忠誠』
🚶 シーン1:密林の夜、影の気配
熱帯夜のような湿度がまとわりつく星峰特区のジャングル地帯。
ナヴィスは灰色の装甲ジャケットの裾を押さえ、枝葉を静かにかき分けながら進んでいた。淡く光る碧素のナノラインが、彼の青銀の髪と瞳を照らしている。
その後ろを、ギアがやや不満げに歩く。黒いハーフゴーグルにぼさぼさの茶髪、整備服のポケットには数本の工具が乱雑に突き刺さっていた。
「敵が少ないと思って油断すると、空から来るぞ。これが中華式”歓迎”ってやつだ」
「その時は、空もぶっ壊すだけだよ」
ギアの皮肉を受け流すように、ナヴィスは笑った。すぐそばにいたゼインは、無言で前方を警戒している。黒のジャケットに身を包み、赤いフードを深くかぶっていた。彼の瞳は、以前よりも鋭さを増していた。
その時、耳元に“声”が響いた。
「敵性反応。前方二時方向、五体。フラクタル起動中——警戒を」
機械音の中に女性的な柔らかさを含んだ声。すずかAIの声だった。
「ありがと、すずか。やっぱりいるか」
ナヴィスが言うと同時に、ゼインがフラクタルを展開した。
《ディフレクト・シェル》
青白い光の盾がゼインの前腕に収束し、射出された弾丸を弾く。
🌠 シーン2:赫共産部隊の待ち伏せ
木々の隙間から現れたのは、赫共産部隊の小隊兵。全身を赤黒い装甲で固め、顔には表情のないマスクをつけている。手にはフラクタル銃が装備され、赤い光が蠢いていた。
「……やっぱり追ってきたか」
ナヴィスが小さく舌打ちすると、ギアが手の甲に埋め込まれたパネルを展開。
「フラクタル妨害装置、起動。今だけ、俺らの方が上だ」
《ジャミング・フィールド》
辺りの空気がわずかに波打ち、赫兵の銃口の光が鈍る。
「今だ!」
ゼインが走り出した。動きはしなやかで、鋭い。彼は兵士の懐に入り込み、逆手に構えたナイフで斬り上げる。赤い火花とともに、赫兵が吹き飛ばされた。
「チッ、1体目!」
ナヴィスも背中からスティレット型の碧素ブレードを抜き、手首のスナップだけで2体目を翻弄した。
「フラクタル無しでやるとか、まるで演舞だな」
ギアが感心している隙に、残りの兵士が背後から奇襲をかける。が、直後——
《サンクチュアリ・コード》
ナヴィスの足元に展開された六角陣から、ドーム状のバリアが瞬時に発動。銃弾をすべて吸収した。
「こっちのバリアは回復もついてる。さて、反撃といこうか」
🌌 シーン3:沈黙の終わり
最後の赫兵が倒れたのは、それから数秒後だった。ゼインの《オーバーライド》で銃が暴走し、自滅したのだ。
すずかAIの声が再び静かに響く。
「戦闘終了。敵のフラクタル信号、完全沈黙。次の行動ルートを提案しますか?」
「そうだな……少しだけ静かな場所が欲しい」
ナヴィスの瞳に映るのは、闇に沈んだ山の稜線。
その先に、希望があると信じて。