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第5話「赫の影、碧の光」
🚨 シーン1:星峰特区・山中の廃工場跡
夜の霧が立ちこめる星峰特区の山間部。朽ちた工場のコンクリ壁には、赤く塗られた「赫」の印が残っていた。
ナヴィスはスコープ付きゴーグルを調整しながら、廃墟の陰から辺りをうかがった。フード付きのジャケットに、碧色のラインが浮かぶ戦闘服を着ている。
「……ここが例の補給拠点か。通信、遮断されてるな」
背後から、すずかAIの落ち着いた声が響く。
「ナヴィス、東側倉庫に反応。4名、赫共産部隊兵士。武装はフラクタル兵器を含む」
「こっちも、少しは持ち合わせがあるさ」
ナヴィスは腰のホルスターから円形の装置を取り出すと、ギアが組んだ潜入フラクタルを起動した。
《サイレント・フォール》——足音と気配を完全に遮断する潜入用フラクタル。
「こっちは、風の中の気配にもならない」
薄く笑いながら、ナヴィスは音もなく夜の闇へ溶け込んでいった。
📷 シーン2:赫兵との交戦
廃墟の中、赤い装甲服を着た赫共産部隊の兵士たちが巡回している。顔の見えないフルフェイスヘルメット、そして腕に刻まれた赫の紋章。機械的な動きで周囲を警戒する。
「何かいたような……」
その瞬間、ナヴィスが天井から滑り降り、兵士の背後を取る。
「《リバースバリア》」
赫兵の発砲したフラクタル弾がバリアに反射し、壁に直撃。爆煙の中、ナヴィスの姿がブレて動く。
「——こっちの番だ」
《フォールトシフト》——位置を一瞬で切り替える。
ナヴィスが瞬時に兵士の側面へ。掌から閃光とともに伸びる碧色の槍。
《エアリアル・スパイン》——空気を断裂して射出される突撃型フラクタル。
赫兵の胸部に命中し、装甲ごと吹き飛ばされた。
「強化型とはいえ、反応は鈍いな……」
すずかAIが警告する。
「右斜め後方、追加反応。狙撃タイプの赫兵接近中」
「知ってるさ」
ナヴィスは飛び上がり、梁の上へ移動。すかさず手をかざし、両手で印を組む。
《ヴァニッシュ・シェルター》——気配を霧状の光に溶かすステルス型防御。
狙撃手の銃口が閃くが、弾丸はナヴィスの残像を貫くだけだった。
「すずか、座標指定、補正して」
「了解。反射率12%、風圧調整完了。敵スコープをジャミング中」
「ありがとよ」
ナヴィスは、ヘルメットの裏側を正確に射抜いた。
📷 シーン3:赫兵の最後の足掻き
残った一人が叫ぶようにフラクタルを展開する。
《ブラッド・スパーク》——自分の碧素を暴走させ、近距離の敵を巻き込む自爆型。
「……っ! こいつ……!」
すずかAIがすぐに反応。
「ナヴィス、範囲外へ退避!爆心地形成まで残り3秒!」
ナヴィスは瞬時に地を蹴った。
《リープ・エスケープ》——高速跳躍フラクタルで天井裏へ逃れる。
次の瞬間、爆音と共に赤黒い光が空間を切り裂く。
ナヴィスは鉄骨の上で体勢を整え、汗をぬぐった。
「自爆で巻き添え狙いか……こいつら、命なんて道具かよ」
📷 シーン4:ジャムツァの影
廃墟を抜けた先、ナヴィスは微かな気配を察知した。
「……誰だ」
「情報が欲しいなら、次は“風の谷”へ向かえ」
現れたのは、長身で黒と金のローブをまとった男。長く束ねた黒髪に、深い碧色の瞳が揺れる。
ジャムツァ・チョジュン・ジャムツァ・ブレルトン。
「“赫を潰す”覚悟があるなら、導いてやる」
言葉を残し、彼は霧の中に消えた。
ナヴィスは一瞬その背中を見送り、つぶやいた。
「……やっぱり、来てくれたか。あんたもまた、何かを信じてるんだな」
空には月が滲むように浮かび、赫の闇に光が差し込み始めていた。
——次回、星峰特区の奥地で、真実が揺れ始める。