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「おう!先生よぅ……」
親分の登場だ
金田鉄男あだ名は、親分
土建屋のせがれで、義理人情が大事と言っている
面倒見がよく、さかもとさんがしんどそうな時とか、背負って移動したりしてたな
「先生にゃ、お世話になったが……こういうのは有りなのか?」
先生は、変わらぬ笑顔で親分を見つめている
先生に、近寄る親分
親分の方が背が高く、圧倒的な圧力がある
その親分が、先生の胸ぐらをつかんだ
小声で親分が先生の耳元に話しかける
「おい、毒入りおにぎりを教えろ。俺が食うから」
先生は微動だにしない
「みんなの中で、誰か死んだら……てめぇぶち殺すからな」
一瞬……
先生の顔から笑みが……消えた
でもすぐまた、元の顔に戻る
お盆に残った三個のおにぎりからひとつ、親分は取る
バクッッ
三時間以内……か
みんなを見渡す親分
ルートとポッポ以外のみんながおにぎりを食べた
親分は後ろに戻る時、僕にだけ聞こえるように耳打ちをした
お盆の上には、二個のおにぎり
僕はゆっくりと前に出た
先生の顔……
違う生き物に見える
この絶望しかない閉鎖された分校の、その中で起きた事件……もうそんな事はどうでもいい
残された道は、
食うか、食わないか
僕は、先生に近づき耳打ちをする
先生は……震え始めた
僕はおにぎりをひとつ取って
ガブリッッ
元の場所に戻る
親分がゆっくりと眼を閉じて合図してきた
先生の目から涙が、おにぎりに落ちる
先生は最後のおにぎりを手にして、
食べた
食べ終わると先生は、隣の部屋に行った
隣の部屋から、静かにショパンのノクターンが聞こえてきた
まるで呪いのように
雨はやんで、外の音はほとんど無い
静かに、ピアノの音だけが
分校を包んでいる
みんな、静かだ
僕たちは明日をまた、無事に迎えられるのだろうか
しばらく時間が経った時
曲の途中で
ピアノの音が
消えた。
完