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#現代ファンタジー
江藤ルミエール
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wadaken1
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成瀬りん
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桜茶御子柴聖達の前に現れた八岐大蛇に体を乗っ取られた本城総司達が去った後、箱庭快楽は解かれ、車を止めていた駐車場に戻って来た。
彼等の心の中に残された喪失感は大きく、御子柴聖はその場で地面にへたり込んでしまう。
十年前のあの日、御子柴家に訪れて八岐大蛇の封印を解いたのは、自分達が気を許していた本城総司であり、彼の体の中には八岐大蛇が乗っ取っている状態にある。
御子柴聖の頭の中は混乱と困惑、目の前で起きた事が現実なのかが実感できていなかった。
バタンッと御子柴聖の背後から倒れる音が聞こえ、視線を向けると倒れた本城蓮の事を鬼頭楓が体を揺すっている姿が視界に入る。
「おいっ、蓮!!!しっかりしろ!!!」
「蓮っ、蓮っ!!!」
慌てて腰を上げて、御子柴聖は本城蓮の元に向かい顔を覗くと、顔色がかなり悪く左眼からの出血が多い事が分かり、残り少ない霊力を使って医療術を施す。
医療術用の札を左眼に貼り、指を素早く動かした後に九字を切ると、札が貼られた部分が光り輝く。
「どうしよう…。蓮が、蓮が…っ、このままだと死んじゃうっ」
「姉ちゃん…、蓮は大丈夫だよっ!アイツが自分の命よりも大事な姉ちゃんの事を置いて、死んだりできないって!」
「あたしに所為だ、あたしの所為でっ、蓮の左眼がっ…」
鬼頭楓の声が聞こえていないのか、御子柴聖は今にも泣き出しそうな表情を浮かべていると、鴉天狗に肩を優しく叩かれた。
「桜、場所を移そう。ここにても、紫乃の目の治療も出来ない」
「でもっ…」
「大丈夫だ、俺の家には医療班が待機してる。桜自身も怪我をしてるだろ?」
鴉天狗の優しい言葉を聞いた御子柴聖は体から力が抜け、倒れそうになった所を鬼頭楓に支えられる。
「お前等、人間達を運ぶのを手伝え」
「分かりやした、頭」
鴉天狗の指示を受けた部下達は本城蓮や、佐和進、ジュリエッタ・A等を優しく抱きかかえる中、ぬらりひょんは長い髭を触りながら口を開く。
「なら、出発するかのー」
ズシャッとぬらりひょんが刀で空間を斬ると、斬られた部分からそ歪みができ、中を潜って移動できうようになった。
「この中に入って移動するぞ。鴉天狗の住処へと繋がっておる、安心せい」
「マジかよ、そんなの事できんのか?あの爺さん。てか、妖怪なんだよな?」
「わしはれっきとした妖じゃ、妖気で分からんか?赤髪の小僧」
「こ、小僧!?初めて言われたんだけど…」
早乙女隼人とぬらりひょんにの二人が会話を聞きながら、御子柴聖は立ち上がろうとするが足に力が入らず、鬼頭楓の体に寄りかかってしまう。
その様子を見た鴉天狗と早乙女隼人、ぬらりひょんの三人は、驚いた顔をして御子柴聖に駆け寄る。
「桜、大丈夫か!?どこか痛むか?」
「落ち着け、鴉天狗。桜は血を流し過ぎておる、貧血で眩暈がしたんじゃろ。ピンピンしとる赤髪の小僧や、桜の事を抱きかかえてやれ」
「いい、俺が姉ちゃんの事をだきかかえ…っ、ゔっ」
早乙女隼人の代わりに御子柴聖の事抱きかかえようとしたが、刺された部分に激痛が走り、ワイシャツの上から血が滲む。
見かねた早乙女隼人は腰を落として、鬼頭楓の胸の中に居る御子柴聖の手を引いて軽々と抱き上げた。
「ごめん…、ありがとう。隼人も怪我してるのに…」
「謝るなよ、こんなの大した事ないから。それよりも聖達の方もヤバかったみたいだな…」
「おいっ、早乙女隼人っ。姉ちゃんは俺が…っ」
鬼頭楓は腹を押さえながら立ち上がり、早乙女隼人の事を睨みつけるが、ふらふらな鬼頭楓の言葉に説得力はない。
「俺よりも、お前の方が傷が深いだろ。今だって、立つので精一杯だろうし」
「はっ、はぁ?んなわけ…」
「こんな時に意地張ってどうすんだよ、そんな場合じゃないじゃないだろ」
「チッ」
早乙女隼人の言葉に言い返せない鬼頭楓は、視線を逸らしながら舌打ちをする。
御子柴聖は鬼頭楓に声をかけようとするが、重たくなってきている瞼を開けようとしていると、早乙女隼人が優しく声をかけた。
「少し寝とけよ、着いたら起こす」
「ごめ…ん」
早乙女隼人に返事をしてから数秒で、御子柴聖は自身の意識を手放した。
***
御子柴聖 十七歳
懐かしい夢を見た。
あたしが七歳の時、八岐大蛇に右脚を食われて、義足を履いてリハビリをしていた時の夢。
「聖様、慌てなくて良いですからね。時間は沢山ありますから」
総司さんは優しい言葉をくれながらリハビリに付き合ってくれて、手厚いサポートも優しさも嘘で、蓮と過ごしていた総司さんも嘘で…。
総司さんはあたしの事が好きだったから蓮を恨み、八岐大蛇の封印を解いたのは阿多曽我理由だった。
蓮とあたしが出会わなかったらこ、んな事にはなっていなかったんじゃないのか。
総司さんが、八岐大蛇の封印を解く原因を作ったのもあたしが原因じゃ…。
蓮を悲しませてしまった。
あたしがいなかったら、蓮は悲しむ事も左眼も失う事はなかったんじゃないか。
脳裏に焼き付けられたあの光景が胸を締め付け、蓮の事を助けられなかった自分に腹が立って仕方がない。
ツンツンッと頬を突かれた感触がし、目を開けると隼人があたしの頬を触っていた。
「着いたぞ、聖、うなされてたけど大丈夫か?」
「あ…、うん。大丈夫、ここは鴉天狗の家?」
そう言いながら周りに視線を向けると、沢山の紅葉の木々に囲まれた大きな神社の鳥居が見え、烏達が木に止まっている。
あたし達は鴉天狗の後を追いながら鳥居を潜ると、立派な日本庭園がある昭和レトロな住宅が現れ、玄関の前には白衣を着た鴉天狗達が待っていた。
「お待ちしておりました、頭。治療の準備は出来ております」
「重傷の者を先に治療しろ。それから、桜の治療は丁寧に行え」
「かしこまりました、頭」
佐和先生やジュリエッタ先生の事を担いでいる鴉天狗達は、医療班の鴉天狗達と共に家の中に入って行く。
蓮に声をかけられないまま、あたしは蓮の事を黙って見送る事しか出来なかった。
一時間か二時間が経った頃、治療を終えた佐和先生にジュリエッタ先生、蓮と美月先輩を布団に寝かせされ、あたしは血の気の引いた蓮の顔を見つめいた。
痛々しく巻かれた顔の包帯、左眼の部分が血で滲み、ソッと蓮の頬に触れる。
「聖ちゃんも手当てした方が良いよ、鴉天狗達が心配そうに見てる」
背後から声をかけられ、振り返ると手当てを終えた雛先輩が廊下に立っていた。
「雛先輩、怪我は大丈夫ですか?あたしに構わず休んでください」
「蓮兄を守れなかったのは、私の力不足だった。影武者でありながら、なにも出来なかったっ。本当にごめんなさいっ…」
「雛先輩はあたしが、御子柴の人間だって知ってるって事ですか?」
あたしがそう言うと雛先輩は頷き、視線を目を伏せながら言葉を続ける。
「御子柴家が有名で、本城家が支えていたのは陰陽師が家系な家なら誰でも知ってたの。蓮兄がね、うちの道場に修行に来てた時に、肌身離さず持っていた写真を見た事があったの」
「写真?」
「蓮兄が野々山家に三週間だけ滞在してた時があって…。その時に、聖ちゃんが写ってる写真を見せて貰ったの」
「蓮が…」
あたしの写真をずっと持っていたの?
どうしてっ、蓮はあたしの事を写真を持ち歩くまで、大事に思ってくれるの?
でも、総司さんの事があったから、今も同じ気持ちでいてくれてるかなんか分からない。
「確信はなかったから、貴方に話しかけなかったの。でも、私達は蓮兄に付いて行くって決めた。蓮兄の守るモノ私も守る」
そう言って、雛先輩があたしの前に跪いた。
「オサムさんから聞いた、花の事も守れなかった。八岐大蛇は私と美月の敵でもある。だから、私達も闘いたい。私達の力も使って下さい、聖様」
雛先輩が覚悟を持って言ってくれてるのに、あたしが弱気になってどうするの?
こんなにも頼もしい味方が、あたしに支えてくれているのに…。
そう思いながら、あたしは両頬を思いっ切り叩いた。
パシンッ!!!
その光景を楓と隼人が見ていたらしく、二人が慌てて駆け寄って来る。
「姉ちゃん!?」
「聖!?何やってんだ!!!」
「ごめん!!!あたし弱気になってた。あたしが居なかったら、総司さんはあんな風にならなかったとか、蓮にこんな傷を負わせる事もなかったって。だけど、弱気になってる暇はないよね」
「聖…、アイツに大怪我をさせたのは俺の責任でもある。悪い!!!」
あたしの言葉を聞いていた隼人は、畳の上に座ってから深く頭を下げた。
「ちょっ、隼人の所為じゃないじゃんっ。頭上げてよ」
「だからこそ、俺はもう誰にも負けねぇ!!!聖にも手を出させねぇ!!!」
「ふんっ、早乙女隼人にしては言い心掛けじゃねぇの?」
「あ?テメェは何様なんだよ!?」
あたしとの会話に入って来た楓と隼人と言い合いをしていたが、楓は真剣な顔をしてあたしに声を掛ける。
「俺も負ける気はない、八岐大蛇の今回の狙いは俺だった」
「何でお前が狙われたんだよ?」
「それは俺にも分かんねぇ。だけど、先生達をあんな風にさせちまったのも俺の所為だ」
楓は隼人の質問に答えた後、辛そうな顔で寝ている先生達を見ていた。
「先生達にも、俺達が御子柴の人間だってバレた。大嶽丸の野郎が話した所為で」
「大嶽丸?先輩達は八岐大蛇の仲間だったね。八岐大蛇の背後から二人が現れたし」
「玉ちゃん達が妖怪だったって、気付かなかった…。妖怪は学院には近付けなかった筈なのに」
雛先輩があたし達の会話に入り、隼人も会話に参加してくる。
医療班の鴉天狗はあたしが話を聞いている間に、手慣れた手付きで手当てを始めて行く。
「破って入って来てたんだよ、それしかないだろ」
「でも、破ったら結果が解けちゃうじゃん。そしたら、理事長がすぐに気付くわ」
「いや、奴等は八岐大蛇の血を飲んでるだろ?もしかしたら、八岐大蛇の技も使えんじゃねーかなって」
「じゃあ八岐大蛇の技も使えたら、アイツ等めちゃ強じゃん!!!ふざけんなよ、マジで」
隼人と雛先輩の推理を聞きながら、思考を巡らせる。
八岐大蛇の結果術を使えたなら、結果を破り結果を元通りにして学院に入っていた事になるな。
総司さんだったら学園に何回か足を運んだことあるだろうし、そのタイミングに結界内に入れた可能性も…。
「桜よ、ちょっと良いかのう。」
髭を触りながらぬらりひょんが、あたし達の方に歩いて来るのが見えた。
「えっと確か…、ぬらりひょん?だっけ?あたしに用事?」
「ホッホー!!桜に名前を呼ばれるのも百年振りじゃなぁ、嬉しいぞ桜」
ぬらりひょんは嬉しそうな顔をして、優し気な眼差しをあたしに向ける。
鴉天狗と同じように、あたしの事を桜って呼ぶんだよなぁ…。
「桜を借りるぞー、良いか?」
「え、聖様だけ?どこかに連れてく気?」
「いやいや、怪我をしてる桜を外に連れ出さんよ。お茶を飲むだけじゃ」
ぬらりひょんの言葉を聞いても、雛先輩は信じてない様子だったが、あたしはぬらりひょうんに聞きたい事があったから誘いに乗る事に。
楓達に許可を取ってから、ぬらりひょんはあたしを部屋から連れ出した。
「あの…、聞きたい事があるんだけど。どうして、ぬらりひょん達はあたしの事を桜って呼ぶの?」
「お前が桜だからだよ」
「答えになってない…」
「おーい、連れて来たぞい」
ぬらりひょんはあたしの言葉を聞かずに、一室の襖を開けると部屋の中でお茶を淹れている鴉天狗の姿が視界に入る。
部屋の中は抹茶の匂いと甘い花の香りが漂い、ぬらりひょうんは湯呑の中に注がれるお茶を見て声をあげた。
「ホー!桜茶か、懐かしいのう」
「座れよ」
「あ、う、うん、お邪魔します…」
鴉天狗に言われて部屋の中に入り、畳の上におかれてあった座布団に腰を下ろした。
「桜に会えたから、取って置いた茶葉を出した。この茶は、桜と飲まないと美味くないからな」
差し出されたお茶を見てみると、綺麗な緑茶の中に桜が咲き、暖かい湯気が心を落ち着かせていく。
初めて見た筈なのに、どこか懐かしい。
「綺麗…」
「桜はそのお茶好きだったろ?」
そう言って。鴉天狗はあたしに優しく微笑み掛けた。
二人はあたしと初めて出会った筈なのに、大事な女のように扱ってくれるのには理由がある。
「教えて、二人はあたしを桜と呼ぶのか。その名前は、あたしの夢に出て来る女の子の名前なの」
「夢?なんの夢じゃ?」
「あたしと同じ顔をした金髪の女の子の夢、その子はいつもあたしに語り掛けてくるの。もしかして、二人が呼んでる桜なのかなって」
あたしがそう言うと、ぬらりひょんはお茶を飲み口を開いた。
「その夢に出て来る女の子がお前の前世の姿じゃよ、桜」
「あ、あれがあたしの前世の姿?」
どう言う事?
あの女の子があたしって事?
「御子柴桜、御子柴家の最初の党首の名前だ。お前は桜の生まれ変わりなんだよ」
「!?」
鴉天狗の言葉を聞いて、心臓がドクンッと高鳴り、どこか納得している自分がいる。
そうだった、お婆様が良く言っていた…。
『御子柴桜のようになりなさい。御子柴家の初代党首の素質がお前にはある。強くおなりなさい』
ぬらりひょんと鴉天狗の言葉を聞いて、夢の中の御子柴桜とあたしは繋がっていたんだ。
お婆様は、御子柴家の子供達を初代党首である御子柴桜を作り出したかのかと、今になって厳しい修行の意味が分かるとは思ってもみなかった。
「桜は百年前に月下美人の器に選ばれ、そして紫乃と共に死んだ。八岐大蛇と出会わなければ、桜は早くに死なずに済んだんだっ」
そう言って、鴉天狗は畳を睨み付けながら冷たく言葉を放った。
月下美人の器に選ばれて死んだ?
紫乃と共に…って?
「紫乃って…?」
「桜に支えていた従者でもあり、お前の愛した男の名前だ」
「え…?」
「本城紫乃、本城家初代党首の名前だ。そして、今は蓮だったか?アイツは桜と同じで、本城蓮は紫乃の生まれ変わりだ」
鴉天狗の話を聞いていくうちに、心臓の動きが速くなり唇が震え出す
この話が本当で事実なら、あたしと蓮は前世から繋がりがあって、今世で再び巡り合えた事になる。
あたしと蓮は出会う運命だったの?
蓮との繋がり、八岐大蛇との関係、月下美人の器、前世でも関係していたとは思ってもいなかった事だ。
「じゃ、じゃあ…。あたしと蓮は前世からの繋がりがあ、あるの?」
「その話をしよう、前世の記憶の話だ。何があったのか、全て話すよ。月下美人の呪いの始まりは、お前が八岐大蛇を救った事で全てが動き出した」
鴉天狗は火鉢の様子を見ながら語り出す、御子柴桜と八岐大蛇の悲しい因果の話が語られた。
コメント
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いやあ、第35話、めちゃくちゃ重かったですね…。特に、聖が自分を責めるシーンは胸が締め付けられました。蓮の怪我もそうだけど、総司さんの裏切りが「自分が原因かも」って思っちゃうところ、すごくリアルで苦しかった。 でも、雛先輩の「蓮兄の守るモノ私も守る」って覚悟とか、鴉天狗とぬらりひょんが明かした前世の話で一気に畳みかけられて、鳥肌立ちました!聖と蓮が「桜」と「紫乃」の生まれ変わりって…運命すぎるだろ🔥 この因果がどう転ぶのか、続きが気になって仕方ないです!