第2話:旋風の記憶
🌪️ シーン1:風の痕跡
朝。処理後チームは、昨日反応を示した瓦礫の中心部へと足を踏み入れていた。
風は強く、まるで何かが唸るように地を這っていた。
「ギョウ、感情波の残滓はまだ残っとるかっぺ?」
ゴウが周囲を警戒しながら問うと、 ギョウはスキャナーに目を落とし、眼鏡の奥の瞳を細めた。
「……残ってる。“怒り”じゃない。“悲しみ”だ」
細身の彼が、瓦礫の一部にフラクタル端末をかざす。 そこに、かつて暴走した旋風フラクタルの“感情ログ”が揺らぎのように浮かび上がった。
「映像再生、許可を。記録信号を感情波レベルで可視化します」
すずかAIの声が静かに響き、空中に青い幻影が揺れる。
🌀 シーン2:記憶の再生
空中に映し出されたのは、かつて存在した碧族の街だった。 だが、街は崩れ、杭は折れ、空を裂くように暴走するフラクタルが吹き荒れていた。
その中に、ひとつの杭が映る。杭には、文字のようなものが刻まれていた。
『この街を護るはずだった。けれど、それは……』
映像は歪み、杭が崩れ、そこから“風”が漏れ出す。 それはまるで、怒りを秘めた魂が暴れだす瞬間のようだった。
「……旋風フラクタル。発端は“護る意志”だったんだっぺ」
ギョウが低く呟く。スキャナーに現れる波形は、どこか哀しげに震えていた。
⚠️ シーン3:杭の誤りと、その代償
キョウが静かに杭を持ち上げる。 瓦礫の下から見つかったその杭は、通常のものとは異なる複雑なコードが刻まれていた。
「護りすぎた杭だ。強すぎた設計は、都市を逆に壊す」 アセイの言葉がどこかで重なるように、ギョウが頷いた。
ゴウは拳を握る。
「街を護りたくて杭を打った。その杭が、街を壊す……そんな皮肉、あるかっぺ」
「この感情波は“未解決”です。杭の意志が残存しており、再暴走の危険があります」 すずかAIの声が警告を鳴らす。
キョウが封鎖杭を無言で打ち込む。その動作は静かで、まるで杭に語りかけるようだった。
💬 シーン4:杭は、語る
ギョウが回収した杭を見つめながら、呟いた。
「杭は、街を護る。だけどそれは、間違った想いなら……呪いにもなる」
ゴウが背中を預けるように笑う。
「なら、うちらの杭は“正しい想い”で打ってくっぺよ」
すずかAIの声がそっと締めくくる。
「杭とは、意志の記録です。
それが歪んだとき、記録は災いに転じる。
それでも、杭は語ろうとしています――“ここに何があったのか”を」
暴走の記憶は、護りたいという願いの裏返し。
処理後は、杭の記憶を掘り起こし、再び正しく刻もうとする。
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