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101 - 第3話:キョウ、杭を打つ

2025年04月10日

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第3話:キョウ、杭を打つ



🔩 シーン1:沈黙の処理者


午前の光が差し込む中、処理後チームは旧市街の崩落エリアへ足を踏み入れていた。


「ここ、昨日の暴走で一番揺れたとこだっぺな」 ゴウが瓦礫を見上げながら言う。


ギョウはスキャナーを構えながら眉をひそめる。 「感情密度、Aランク。近づきすぎるとこっちまで飲まれる……」


その中心に、ひとり足を踏み出したのは――キョウだった。


中肉中背。マスクとキャップで素顔を隠し、ボディカメラと警報装置を常に身に付けている。 言葉少なな彼が、今、黙々と杭を背負って歩いていく。


「キョウ、ひとりで行く気かっぺ?」


返事はなかった。彼はただ、瓦礫の中心にゆっくりと杭を下ろした。




🌫️ シーン2:重なる記憶


静かに杭の座標を確かめ、土を手で押さえる。


「ここ、誰かの“痛み”が沈んでる……」 ギョウの声が遠く聞こえる。


だがキョウはそれを聞かず、一本の封鎖杭を構える。 その目は、かつて見た光景を追っていた。


――燃え落ちる街。杭が間に合わなかった“あの時”。 ――守れなかった人影。


彼は、“守る”という命令ではなく、“願い”として杭を打つことを選んだ。


「感情波、警戒レベル上昇」


すずかAIの声が静かに流れる。


「対象エリア、キョウによる直接対応を検出。

作業データの感情共鳴率:89%。

……この杭は、“彼自身の意志”です」




⚒️ シーン3:杭が語るもの


杭を構え、地面に叩き込む。


ドゴン……ッ。


その瞬間、瓦礫の下から淡く揺れる青白い粒子が舞い上がる。 風が止まり、音が消えた。


杭は、暴れる感情の根を貫き、静かに地に鎮める“柱”となった。


キョウは、そっとその杭に手を添える。


すずかAIが囁くように言った。


「共鳴完了。杭の記録、安定。

……“ありがとう”という感情が、わずかに検出されました」


ギョウとゴウが、やや遅れて到着する。


「キョウ……お前、杭の声、聞こえてるんか?」


キョウは無言のまま、ゆっくりとうなずいた。




杭は語らない。だが、そこに託された意志は、静かに街を支えている。

キョウの杭は、沈黙の祈りとなって、都市の礎を打ち固めた。



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