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【今年の《モルノスクール》美少女コンテスト!優勝は――アドベンチャー科一年!アオイさんです!】
「「「「おおおおおおおっ!!!」」」」
【それでは優勝したアオイさん、ステージへどうぞ!】
俺は、コスプレみたいなウェディングドレスをまといながら、体育館中央に設けられた階段を一段ずつ登っていく。
暗がりに包まれた広い体育館。
唯一、俺の姿を照らすスポットライトが眩しすぎて、足元さえ見えない。
全方向から、熱気と視線が突き刺さってくる――。
【ではアオイさん、皆さんに一言お願いします!】
アリスト科の生徒が進行役を務めている。
俺の声は、魔法によってマイクなしでも体育館中に響き渡る仕組みだ。
(あ、あー……)
思わずマイクテストのように言葉を漏らすと、それさえも体育館全体に響いた。
「……う、嬉しいです。みんな、ありがとう」
その瞬間、館内に響き渡る拍手と歓声。
男達の叫び。どこからか聞こえる「結婚してくれー!」の声。
……どうして、こんなことになったのか。
――遡ること、一時間前。
「美少女コンテストに?……なんで僕が?」
教室では、俺が考案した《リアルこんがり肉作っちゃおう計画》が実行中。
アドベンチャー科一年の教室は、ワイルドな肉と煙の香りで賑わっていて、そこそこ人も集まってきている。
そんな中、すひまるさんが俺に話しかけてきた。
「アオイさん、実は……その……美少女コンテストに出ていただけませんか?」
……え?美少女?俺、男だよ?
「は、はは……冗談が上手いなぁ」
「じょ、冗談じゃありません!」
――マジかよ!?
しかも、俺の手を両手で包んで見上げてくるすひまるさん。目が真剣すぎる。
「い、いやでも僕、店番もあるしね?」
「む? 店なら大丈夫じゃ、足りてるのじゃ」
ルカ、お前ってやつは……!
「だ、だめですか……?」
うっ……ションボリしてる、すひまるさん。
このままじゃせっかく築いてきた友好関係が消し飛ぶ……!
「わ、わかったよ。きっと予選で落ちちゃうかもだけど……(落ちる気満々)出てみるよ」
「ほ、ほんとですか!? ありがとうございます!」
うぅ……すひまるさんの笑顔が痛い……。
それより、俺が美少女コンテストに出るなんて、頭痛が痛い……。
「ル、ルカさんは……どうですか?」
「ワシは興味ないからいいのじゃ」
うおおおい!はっきり断りやがったぞこの野郎!
「それにこの場所は誰にも譲らないのじゃ!」
お前の仕事、ボタン押すだけだろぉぉぉおお!!
「で、では、アオイさん、今から体育館へお願いします」
「い、今から!?」
「はい、あちらで準備があるかと。お店と連絡は私たちに任せてください」
「わ、わかった……じゃあ行ってくるよ」
「はい!」
……気が重い。足も重い。
だけどそれ以上に、俺の心は地の底。深海の底。
体育館へ向かう道中、誰も見てないのをいいことに、俺は小声でこう叫んだ――
「僕は美少女コンテストは出ないよ!…………って、ハッキリ言えたらなぁ……」
頼む……どうか予選落ちしてくれ俺ぇぇえええ!!!