_________________
甲斐田「……」
星川「……」
肩で息を切らしながら星川さんの待っているベンチまで走った
目の前で立ち止まる僕に一切目もくれず、俯いている星川さん
甲斐田「___じゃん…ッ!」
星川「ぇ…?」
聞こえなかったのか
涙でクシャクシャになった顔を上げる
甲斐田「言ってくれてもよかったじゃんッ!」
甲斐田「確かに僕らはただの友達だしッ…特別じゃないよ……」
甲斐田「だけどッ…!」
甲斐田「僕は星川さんの力になりたい…!」
_________________
星川「ッ…」
“特別じゃない”なんて言わないでよ
特別だよ、星川にとっては
でも
星川「ごめんッ……」
甲斐田「…僕も、言いすぎた」
そう言って星川の隣に座る
普段なら絶対しないけど、頼っていいよね
星川「…、」
甲斐田「っわ…」
甲斐田の肩にもたれかかり
ゆっくりと目を閉じる
別に眠たい訳じゃ無いけど
甲斐田「ちょっ、星川さん…?」
星川「もうちょっとだけこうさせて…」
安心する
あったかい
甲斐田「……わかった、」
その状態で時が過ぎて行った
もう、夕暮れも見えなくなって来た
だけど、変わらず体は蒸し暑い
好きな人にこんな事したら、そりゃ体も暑くなるだろうけど
星川「…」
そろそろ
言わなきゃな
星川「星川ね、」
星川「夏休み終わったら海外に引っ越すんだ」
甲斐田「ぇ、」
彼は驚きを隠せない様な表情でこちらを見ていた
星川だって最初聞いた時はビックリした
仕事の都合って言われても
気持ちの整理にだいぶかかった
星川「今年が、最後の夏祭りなんだよ?星川」
星川「最近行けてなかったんだ…1年の頃病んでて……笑」
今思うと、吹っ切れてでも外に行くべきだったと思う
こんなにすぐに終わりが来てしまうのだったら
星川「去年だったら…最後まで笑って過ごせただろうにッ……笑」
笑ったつもりなのに
心が痛い
制服に、雫が染みを作っていく
甲斐田「ッ………ぇ、っと……」
星川「ごめん、急にこんな事言って」
だからさ、お前への未練無くしたいんだよ
だけどさ、
「特別じゃない」
なんて言われたら
星川「ッ〜…ぅぅ……ッ…」
諦めついちゃうよ
バカ
甲斐田「……じゃあ、楽しもうよ」
星川「ぇ…」
甲斐田「夏祭りは一緒に行けないけどさ…夏休み、遊べるでしょ?」
甲斐田「僕が最高の思い出作ってあげるよ!」
星川「っ〜〜…っ!」
そんな事、満面の笑みで言わないでよ
純粋に言わないでよ
星川「ありがとぉっ…!」
期待しちゃうじゃん
本当にバカ
星川「っあー…!なんかスッキリした!ありがと!」
甲斐田「いえ、元気になったならよかったですよ…ホントに」
星川「帰ろっか」
甲斐田「うん」
2人でベンチから立ち上がり
横断歩道の前に立つ
星川「…」
甲斐田「…」
この道を渡ってしまったら
星川達は離れ離れになる
星川「甲斐田」
甲斐田「星川さん」
2人の言葉が重なり
青になっても2人の足が動くことは無い
星川「…なに?」
甲斐田「………帰ったら」
甲斐田「電話、下さいね」
星川「…!」
星川「星川も同じ事言おうと思ってたっ!」
甲斐田「なにそれ笑」
そんな事を喋ってる間に
また青が赤に変わっていく
そんないつも通りの風景に
今だけは感謝をしたい
_________________
コメント
1件
神ですね! 海外行くなんて…星川〜…!!