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信号を右に曲がり
星川さんと別の道をゆく
甲斐田「…」
家に帰りたく無い
でも、
甲斐田「電話頂戴って…言っちゃったしな……」
あんな顔を見ておいて
放って置けるほどタチは悪く無い
最後の夏くらい、笑っててほしい
甲斐田「…」
家が近くなる度に、歩幅が狭くなる
怖い
甲斐田「っ…」
ガチャッ
甲斐田「た、ただい…ま………」
お母さん
怒ってるだろうなぁ
怖いなぁ
母「…おかえり」
甲斐田「ぇ」
怒ってない?
やっぱ、分かってくれたんだ
僕の夢を応援してくれ__
母「ねぇ、晴…ちゃんと話をしよう」
甲斐田「え、」
なんだかその一言で地獄に堕とされたみたいだ
ねぇ、やめて。そんな目で僕を見ないで
母「…」
僕が間違ってるなんて言わないで
甲斐田「…」
母と僕で机を跨いで椅子に座る
どちらかと言うと座らせられてる
母「晴、お母さんはね?ちゃんとした仕事について欲しいの…」
母「研究者なんて…子供っぽい事言わないでくれる?」
甲斐田「ッ…!」
甲斐田「別にッ…夢じゃ無いっ!目指してる!ちゃんとッ…!」
母「そう言う事じゃなくて…」
甲斐田「そう言う事だよッ!!」
ガタッ
甲斐田「ッ…」
我を忘れて椅子から立ち上がる
お母さんは驚いているのか言葉を発していない
お母さんの顔は見れなかった
僕の顔を見せたくなかった
甲斐田「馬鹿にしないでよ…………」
僕が出来る反抗は、これくらいだった
プルルルルッ…プルルルルッ……
甲斐田「あっ…」
電話の音が静寂を切り裂く
きっと星川さんだ
ダメだな、僕
笑わせたいって思ったのに…僕が笑えてないや
甲斐田「でてくる」
母「あっ…ちょっと!」
お母さんを無視して電話を持って
玄関の方へ走っていった
後ろから僕を呼ぶ声は、聞こえてしまった
甲斐田「ッ…」
早足で靴に履き替え
玄関の外に出る
バタンッ!!
甲斐田「はぁッ…はぁッ……」
急いで電話のボタンを押す
星川『もしもーし、聞こえる 』
甲斐田「ッ…」
聞こえるけど
口が動かなかった
妙に息が上がっていて
喋る余裕もなかった
星川『え、甲斐田?』
甲斐田「ッ……はい…」
星川『なに聞こえてんのかよ…どした?』
甲斐田「ぁっ…いや……」
声が震えてしまいそうで怖かった
家から離れたくて、公園の方に小走りしていたからそれもあるが
甲斐田「ッ……星川さんッ…」
泣いてしまいそうで怖かった
甲斐田「次…僕の話聞いてもらっていいですか……ッ?」
この時点で声は震えていたし
涙が浮かんできた
星川さんはなんの迷いもなく
星川『いいよ』
と言ってくれた
甲斐田「ッ……ありがとうッ………」
そう言うのが 精一杯だった
いつもは敬語を使わなきゃ怒るけど
怒らなかった
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