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#恋愛
ばたっちゅ
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モブD
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冒険者上がりの屈強なギルドメンバーたちが、入り口に積まれた木箱に取り掛かる。
「ぬおおおおっ! お、重いぞこれ……!」
「くそっ。手が滑る! しっかり持て!」
「ダメだ、腕の筋肉が持っていかれちまう……!」
彼らは全員素手だった。長年放置された木箱は埃や正体不明の油でヌルヌルと滑りやすくなっていたのだ。
大きな木箱を二人がかりで持ち上げようとするが、ズルッと滑って落としそうになる。数分もたたないうちにギルドメンバーの男たちは肩で息をし始め、へたり込んでしまった。
「はぁ、はぁ……ユウト殿。これは無理だ。一つ一つが重すぎる」
「ヌルヌルにて持ちにくいしな、魔法で浮かべることはできないのか」
男たちは倉庫の外で座り込んでいるティアレの方を向く。しかしティアレは先程の出来事で動けないようだった。アルダーも腕組みをして険しい顔をしている。
(うぅむ……、重い木箱を運ぶのにギルドメンバーの人たちは頼りになると思ったっすけど……何かいい方法はないだろうか)
再度木箱とギルドメンバーたちの手を見る。木箱にはヌルヌルとした正体不明の油がついており、男たちの手のひらも油でギトギトだった。
(あれだ、引越し作業を素手でやろうとしていたからか……!)
俺は男たちの前に立ちはだかった。
「俺がプロの装備を貸すんで、ちょっと集まってください」
俺は念じて新しい道具を呼び出す。
――家事スキル:滑り止め付きゴム軍手&キャスター付き平台車
光と共に現れたのは、手のひら部分に青いゴムのイボイボがびっしりとついた軍手の束。イボイボは滑り止めだ。これで油で滑ることもない。
そして黒いプラスチック製の平らな板に四つの車輪がついた平台車だ。前世では引っ越しや倉庫作業では必須のアイテムだ。
「まずはこの手袋をはめてください。それと重いものは持ち上げて運ぶ必要はないっす。この荷台に乗せて押すだけでいいんすよ」
「なんだこの手袋……? 革の手袋とも違う」
「これがプロの装備なのか?」
ギルドメンバーたちが半信半疑のまま、俺から渡された手袋をはめた。そして先程滑って持ち上がらなかった木箱に手をかけた瞬間。
「な、何だ、これはぁぁっ!?」
男の一人が叫んだ。
「吸い付く! 手に吸い付くぞ! これなら滑らない!」
「本当だ! 嘘みたいに力がこもる! 一体どんな身体強化の魔法が込められているんだ!?」
「うおおおおっ! これなら一人でも持ち上げられる!」
(ただのゴムの摩擦力っすよ)
大騒ぎする男たちを見て、俺は冷静に内心でツッコミを入れた。
横で見ていたサフランも、興味津々で軍手をはめてみた。近くにあった鉄の塊を掴んで持ち上げる。
「凄い! 握力が全然逃げない!」
サフランはゴムのグリップ力に感動して目をキラキラと輝かせている。
「ねぇ、ユウト。剣使う時もこの手袋をしたらもっと戦えるかな?」
「え……」
俺は思わず軍手をしながら剣を握るサフランを想像してしまう。軍手があまりにも場違いで、苦笑いをした。確かに彼女の言う通り、軍手のグリップは武器のすっぽ抜け防止にはかなり実用的なのかもしれない。
彼女は純粋な喜びでぴょんぴょん飛び跳ねていた。
「よし、じゃあ次はそのまま、その荷台に木箱を乗せて押してみてくれっす」
俺が指示をすると、男たちは重い木箱を台車にどすんと乗せた。
「これを押すのか? こんな小さな車輪で、この重量の荷物を……えっ!?」
男が軽く押した瞬間、台車はスゥーっと滑るように動き出した。静音タイプのキャスターだからかガラガラという音も一切ない。
「なんて滑らかな動きなんだ……!」
アルダーが驚愕の声を上げた。
「これほどの重量物が指一本で動かせるなんて。魔法具か?」
「信じられん……我々がこの荷物の量に絶望していた日々はなんだったんだ。ユウト殿、貴方は一体どれほどの魔法具を隠し持っているのですか」
バオバブも興奮気味に話しかけてくる。
(ホームセンターに行けばどこにでもある軍手と台車だっての……まぁこの世界にはホームセンターはないっすけど)
俺は苦笑いをしながら、ギルドメンバーたちに軍手と台車を次々と支給していった。
「台車は連結できるんで、でかい荷物の時は二つ、三つ繋げるといいっすよ。入り口からどんどん外に運び出すから休んでる暇はないっすよー!」
「おおおおおおぉっ!!!」
「俺たちに任せておけ!!」
「この魔法の手袋と台車があれば、百人力だぜ!!」
ギルドメンバーたちはすっかり意気揚々となり、ものすごいスピードで木箱や武器の入った箱を外へと運び出した。
軍手の摩擦力と台車の機動力。この二つが組み合わさって先程まで全く進まなかった作業が嘘のようにスムーズに回転していく。
「凄い、みるみるうちに道ができていくね」
落ち着きを取り戻したティアレが感心している。
「あぁ、これなら予定通り……いや予定より早く奥まで進めそうっす」
俺は腕組みをして順調に確保されていく動線を見つめた。埃と悪臭はサーキュレーターで排出され、木箱は台車で次々と外へ出されていく。俺たちの前に倉庫の奥へと続くまっすぐな道が姿を現し始めていた。
安心していると、突然叫び声が上がる。
「ぎゃああああああああっ!!」
「なんだ!?」
高く積まれた木箱の山をどかそうとしたのだろう。ギルドメンバーの男が尻餅をついている。俺は男の視線の先に目を向けた。
コメント
1件
いやほんとこの回、ツボすぎた!!笑 異世界で軍手と台車に「魔法具!?」って本気で感動するギルドメンバーたち、尊すぎる😂✨ ユウトの「ただのゴムの摩擦力っすよ」っていう心の中のツッコミも好き。サフランが軍手で剣握る想像しただけでかわいすぎて悶えた😭💕 日常品で世界を変えていく感じ、毎回ワクワクするよ〜!続きも楽しみにしてるね!!