爆風が去った後、街は炎と煙に包まれていた。
こはるは全身に熱さと痛みを感じながら、意識を保とうと必死だった。
腕や顔には大きな火傷の痕が刻まれ、皮膚が焼けただれていた。
「拓也兄ちゃん…!」
涙と汗で視界はぼやけていたが、こはるは倒れそうになる身体を震わせながら立ち上がった。
燃え盛る瓦礫の中、叫び声が響く。
「兄ちゃんを探さなきゃ!」
周囲の煙は視界を奪い、息をするのも苦しい。
それでも、こはるは弟の健太を探すよりも先に、兄の名前を叫びながら炎の中へ足を踏み入れた。
「兄ちゃん、どこにいるの?お願い、返事して…!」
崩れた家屋の間を這うように進み、焼け焦げた木の匂いが鼻をつく。
足元は不安定で、何度も倒れそうになりながらも、こはるは必死に進んだ。
その時、遠くで微かに聞こえた声。
「こはる…」
その声に、こはるは力を振り絞って駆け寄った。
黒煙の向こうに、ぼろぼろの服を着た拓也が倒れていた。
「兄ちゃん!」
こはるは泣きながら兄の腕を掴み、必死に励ました。
「絶対に、絶対に死なないで!」
拓也もかすかに目を開け、こはるの手を握り返した。
「こはる…ありがとう。家族を頼む」
二人は焼け跡の中で、互いの温もりを確かめ合った。
どんなに絶望の中でも、絆は消えないと信じて。
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